ロッテグループの広告会社Daehong Communications(大弘企画)は2023年、Chainlinkとの協業を発表した。NFTの抽選や外部情報に応じた更新に技術を活用する取り組みで、後続の報道では「L.PASS」というNFTも紹介された。ここで重要なのは、乱数を検証できる仕組みの導入と、特典の履行や企画全体の公平性を分けることだ。2023年の発表と制作事例をたどり、2026年9月に確認できる範囲を整理する。
協業は2023年4月の大弘企画公式発表にさかのぼる
大弘企画の公式ニュースには、2023年4月20日付でChainlinkとのパートナーシップ締結が掲載されている。ロッテグループに関連するNFT事業の技術を強化する目的で、外部条件によって内容が変わるダイナミックNFTや、検証可能な乱数を使うVRFの導入方針を示したものだ。
その後、5月22日にはChainlink Labsとの協業として英語圏でも紹介され、当サイトの旧記事は5月30日に掲載された。この順序から、5月30日を契約締結日やL.PASSの配布開始日とみなすことはできない。資料の日付は、それぞれの発表・掲載の時点として扱う必要がある。
大弘企画は広告やマーケティングを担う会社で、Chainlink LabsはChainlinkの開発・導入を支える企業である。Chainlinkという技術基盤とLabsという会社、NFTの企画運営者を同一視すると、誰が特典や利用条件を決めるのかが曖昧になる。協業のニュースから、ロッテの全事業が同じNFTサービスを導入したと読み広げるのも適切ではない。
L.PASSは後続企画への参加枠として構想された
2023年5月の報道で紹介されたL.PASSは、将来のNFT企画への優先アクセスを想定したランダムボックス型NFTだった。まずBellygom NFTの保有者を対象とし、大弘企画のWeb3パートナーへ広げる計画と説明されている。旧記事にある「Big Red」はこの文脈では別企業として確認できず、原報道のDaehongに合わせて大弘企画と表記する。
さらに、制作会社MovingStonesが2023年10月に公開したBellygomシーズン2の制作事例は、L Passをホワイトリスト用のチケットと説明している。Bellygom NFTの移行を完了した保有者への報酬として登場し、ロッテ関連のNFT企画に使う構想だったという。同社はパスのデザインや結果を見せる演出を制作したと記載しており、企画の具体化を示す資料になる。
ただし、デザインの納品・公開と、全対象者への配布や全特典の利用完了は別である。優先枠という説明も、将来の全作品を無料でもらえることや、どの販売にも無条件で参加できることまでは意味しない。対象となる回、必要な保有条件、申請期限、販売価格などは、個別企画の規則によって確かめる必要がある。
VRFが検証するのは乱数の生成結果
VRFはVerifiable Random Functionの略で、日本語では検証可能なランダム関数などと呼ばれる。Chainlinkの公式資料によれば、乱数の要求に対して数値と暗号学的な証明を生成し、利用側のアプリケーションが使う前にブロックチェーン上で証明を検証する。運営者が画面で「無作為です」と説明するだけの抽選とは、確認できる情報が異なる。
例えば、事前に決めた候補へ乱数を対応させる仕組みであれば、その結果を選ぶために使った数値の検証が役立つ。一方、候補一覧に誰を含めるか、当たりの数をどう設定するか、重みを付けるかは、乱数生成とは別の設計である。乱数が適切でも、応募資格や賞品の説明まで自動的に正しくなるわけではない。
L.PASSについても、VRFを活用するという説明から、参加者全員の当選確率が同じだったと断定することはできない。本記事では実際の抽選コントラクト、確率の設定、対象一覧を再現検証していない。まして顧客満足度、NFTの市場価格、運営会社による特典の履行を保証する技術ではなく、旧記事の「公平性と顧客満足度も確保」という表現は範囲が広すぎる。
導入側の実装と運用にも確認すべき条件がある
2026年9月に閲覧したChainlinkの開発者資料はVRF v2.5を中心に案内し、以前のv2を非推奨として表示している。ただし、現在の資料が更新されているからといって、2023年のL.PASSが同じ版へ移行した証拠にはならない。協業の発表年、導入した版、現在の運用版は分けて調べるべき情報だ。
公式のセキュリティ上の注意事項では、複数の乱数要求への応答が必ずしも要求順に到着しないため、要求IDで対応付けるよう求めている。また、不利な結果を捨てられるような再要求や取り消しを許さないこと、乱数要求後に結果へ影響する入力を追加しないことも挙げている。
これは、検証できる乱数を受け取るだけでアプリケーション全体が安全になるわけではないことを示す。ボックスの開封で使うなら、どの要求がどのボックスに対応するか、対象がいつ確定するかが重要になる。公式資料は処理に必要な資金残高にも注意を促しており、資金不足などによる遅延への備えも運用側の仕事だ。これらは一般的な実装条件の説明で、L.PASSに具体的な欠陥があったという指摘ではない。
ロッテオープンでは別のNFT活用実績も公表
大弘企画は2023年6月8日、同月1日から4日まで開催されたロッテオープンでNFTスペシャルチケットを提供したと発表した。購入時に応援する選手を選び、大会終了時にその選手の結果をNFTへ反映させる仕組みで、ダイナミックNFTの具体例として紹介している。
同社発表では、専用の入場動線や景品抽選への応募といった特典を組み合わせ、オンラインの事前販売に加えて大会中の現地販売も行った。販売分が完売したという記述もあるが、これは同社の実績発表として読むべきもので、本記事で販売台帳を照合した数字ではない。
この事例は、2023年に大弘企画がNFTを使った顧客向け施策を実施したことを示す。ただし、選手の成績を反映する処理と、ランダムな結果を出す処理は目的が異なる。公式のチケット発表だけでは、すべての機能にChainlinkやVRFが使われたとは確認できない。L.PASSの配布実績の代わりに、この別企画の成功を当てはめることも避けたい。
キャラクター展開の継続とNFTの現況は別に見る
Bellygomというキャラクター自体には、その後の公式発表がある。ロッテホールディングスの2026年6月17日発表は、2024年3月に日本でのマスターライセンス契約を締結した経緯と、2026年6月22日からのSNSショートドラマ配信予定を紹介している。日本でのキャラクター事業の展開を確認できる一方、その資料は旧NFT保有者の権利継続を説明するものではない。
今回、Bellygom NFTの旧公式サイトbellygom.worldは調査ツールで内容を取得できなかった。アクセスできなかったことだけで終了とは断定しないが、L.PASSの現在の配布、交換、優先枠の受付、日本在住者の利用条件も確認できていない。Chainlink関連の紹介ページに協業の記録が残っていることも、個別サービスの稼働確認とは異なる。
今後この事例を参照する際は、企画名だけでなく、対象NFTのチェーンやコントラクト、配布対象の判定日、特典の受付期限、抽選結果を照合できる資料を確認したい。2023年のニュースから学べるのは、ブランドの会員施策に検証可能な仕組みを組み込もうとした設計である。現在の購入や参加を判断するには、当時の協業発表とは別に、最新の提供条件が必要になる。
よくある質問
Q. L.PASSを持っていればロッテの全NFTをもらえますか?
A. 当時は後続企画への優先アクセスを想定したパスと説明されていました。すべてのNFTを無料で受け取れるという内容ではなく、現在の対象企画や条件も未確認です。
Q. Chainlink VRFなら抽選全体が公平だと証明できますか?
A. VRFは生成された乱数とその証明を検証する仕組みです。候補者の選定、当選枠、確率への対応付け、特典の履行は別途確認が必要です。
Q. 日本でのBellygom展開はNFT特典の継続を意味しますか?
A. 日本のキャラクター事業に関する公式発表は確認できますが、それは2023年のNFT特典やL.PASSの受付継続を証明するものではありません。
この記事の出典
- 大弘企画:Chainlinkとの協業発表(2023年4月20日)
- MovingStones:Bellygomシーズン2とL Passの制作事例
- TheNewsCrypto:DaehongとChainlink Labsの協業報道
- Chainlink公式:VRF概要
- Chainlink公式:VRFのセキュリティ上の注意事項
- 大弘企画:2023ロッテオープンNFTチケット実績
- ロッテホールディングス:Bellygom日本展開と2026年のドラマ発表
※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供であり、投資の勧誘や助言ではありません。暗号資産・NFTの価格は大きく変動します。最新の情報は各公式発表をご確認ください。




