Yves Saint Laurent Parfumsによる2023年1月の米国商標出願には、仮想空間向けの商品やNFTで認証されるデジタルファイルに関する記述が含まれていました。ただし、商標を出願したことは、記載した全商品を発売したという意味ではありません。出願番号で対象を特定し、先行するGolden Blockの公式発表と区別しながら、2026年9月の確認範囲を整理します。
対象は香水・化粧品側の二つの米国出願
商標情報サイトFurmで確認できる対象は、2023年1月12日出願の「YSL」(出願番号97751774)と「YVESSAINTLAURENT」(97751751)です。いずれも出願人はYves Saint Laurent Parfumsと記載されています。名前が似た別の出願と混同しないため、本記事では名称だけでなく番号を併記します。
YSLという呼び方は広く使われていますが、このニュースの出願主体は香水・化粧品に関係する法人です。衣料品のブランド全体が同じ日付で同じサービスを発表したという説明には広げられません。また、米国の出願情報を取り上げており、日本を含むすべての国で同じ範囲の登録が成立したという意味でもありません。
今回、個別案件の情報は商標データの第三者索引で確認しました。USPTOの公式検索システムTSDRにもアクセスを試みましたが、当該案件の最新の審査記録を取得できていません。出願の内容を紹介する根拠と、現在の法的な状態を確定する根拠の強さが異なる点は、明確にしておく必要があります。
仮想の香水やメイクは何を指していたのか
掲載されている指定商品・役務には、仮想環境で使う香水や化粧品などを表すコンピュータープログラム、関連する画像・文章・音声・映像を含むダウンロード用ファイルなどがあります。NFTは、そうしたファイルを認証する仕組みとして記載されていました。物理的な香りそのものをブロックチェーンへ保存するという説明ではありません。
ほかにも、仮想環境向けの肌やメイクの外観を作成・変更するソフトウェア、仮想商品を扱うオンライン小売、娯楽目的で提供する仮想アイテムなどが挙げられています。この列挙は保護を求める対象の説明であり、それぞれの開発が完成し、利用者がすでに購入できることを示す製品一覧ではありません。
たとえば「仮想空間向けのメイク」という項目があっても、対応するアバターの規格、利用できるゲーム、販売価格、公開日はその言葉から分かりません。特定のメタバース上に店舗を開いたことも、出願の項目だけでは確認できません。旧記事にあった「メタデータベースの小売店」という表現は、仮想商品を扱う小売役務という意味に整理しました。
出願、登録、サービス開始は別の段階
USPTOの説明では、商標は商品やサービスに使うブランド名やロゴなどを保護する仕組みです。発明を保護する特許や、創作物を保護する著作権とは対象が異なります。NFT関連の商標出願を行ったとしても、NFT技術全般や仮想化粧品という発想そのものを独占できると解釈するのは適切ではありません。
申請後には審査があり、出願したすべての商標が登録されるわけではありません。USPTOは、公告によって異議申立ての期間に入った段階でも、まだ登録済みではないと説明しています。使用意思に基づく手続きでは、許可通知の後にも使用についての書類などが必要になる場合があります。
この一般的な流れを、対象二件が実際にどこまで進んだかという個別判断と混ぜてはいけません。本記事は出願手続きの意味を説明するもので、両案件の最終登録を確認した報告ではありません。登録が確認できた場合であっても、そこに記載されたすべての商品が日本で販売されていることまでは証明しません。
2022年にはGolden Blockの公式発表があった
商標出願より前の2022年6月、ロレアルはViva Technologyに関する公式発表で、Yves Saint Laurent BeautéがYSL Beauty’s Walletを通じて1万個のGolden Block NFTを展開すると説明していました。体験や特典へのアクセスを設け、例としてP00ls上のDJアーティストによるソーシャルトークンの提供を挙げています。
この発表は、商標データだけでは分からないブランド側の取り組みを確認する一次資料です。少なくとも、YSL BeautéがWeb3に関する企画を公に説明していたことが分かります。一方、1万個という数は当時の企画規模であり、現在の保有者数、実際に特典を使った人数、売買された件数を示すものではありません。
Golden Blockは、物理的な金塊の購入や所有権を案内した名称でもありません。ここでのBlockはデジタルコレクティブルの名前です。また、当時紹介された特典が現在まで同じ条件で続いているかは、2022年の資料だけでは判断できません。過去の配布発表を、今から申し込める無料キャンペーンとして扱わないようにします。
先行NFT企画と商標出願の関係を読み過ぎない
2022年のNFT企画に続いて、2023年に仮想商品を含む出願が行われたという時間的な順序は確認できます。ただし、その順序だけから「Golden Blockが成功したため商標出願した」という原因まで確定できません。今回確認した公式資料には、対象出願の動機をそのように説明した記述はありませんでした。
商品や役務の記述を比較すると、Golden Blockの体験への入口という役割に対し、出願情報は仮想商品、ソフトウェア、小売などを含む広い範囲を扱っています。両者にWeb3という接点はあっても、Golden Blockを保有すれば出願に記載されたサービスをすべて使えるという関係にはなりません。
商標権、NFTの所有、キャンペーンの参加資格も区別が必要です。あるNFTを取得したことだけでブランドの商標を商品販売に使えるわけではなく、ブランドが商標を出願したことだけでNFT保有者への永久特典が成立するわけでもありません。利用者が何を受け取れるかは、その企画の規約や個別の案内で定まる問題です。
2026年時点で確かめられた範囲
2026年9月の調査では、ロレアルの2022年の公式発表と、二つの出願番号に対応する第三者索引を参照できました。一方、USPTOの最新個別記録を取得できなかったため、現在の審査段階や登録の有無は確定していません。索引サイトの更新日や状態表示が異なる場合もあり、そこから推測で最新状態を選ぶことは避けています。
また、出願文にある仮想商品の全項目について、発売日や現行の販売ページを確認したわけではありません。NFT関連の文言が見つかったというニュースを、そのままブランドの新しい市場への全面参入や事業収益の拡大として評価することもできません。需要や利用実績には別の資料が必要です。
今後この案件を追う場合は、97751774と97751751をそれぞれ確認し、状態の日付、登録番号の有無、審査文書を分けて見ると対象を取り違えにくくなります。製品の利用を調べる場合は、それとは別にブランドが出す商品名、対象地域、利用条件を照合します。出願記録と発売情報を二段階で確認することが、このニュースを読むうえで役立ちます。
よくある質問
Q. YSLはNFT関連商標を登録したのですか?
A. 2023年1月12日の対象出願は第三者索引で確認できますが、本記事では最新の個別審査記録を取得できておらず、登録済みとは断定していません。
Q. 仮想の香水は実際に香りがする商品ですか?
A. 出願情報には仮想環境用プログラムやデジタルファイルなどが含まれます。香りを再現する機器や物理的な製品の発売を示すものではありません。
Q. Golden Blockを持てばすべての新サービスを使えますか?
A. そのような権利は確認できません。2022年の特典紹介と2023年の商標出願は別の資料であり、現在の利用条件も別途確認が必要です。
この記事の出典
- Furm:YSL、出願番号97751774の索引
- Furm:YVESSAINTLAURENT、出願番号97751751の索引
- L’Oréal:Viva Technology 2022公式発表
- USPTO:商標の手続き
- USPTO:公告と登録の違い
※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供であり、投資の勧誘や助言ではありません。暗号資産・NFTの価格は大きく変動します。最新の情報は各公式発表をご確認ください。




