2022年12月14日、The BlockはValhallaとCockpunchのNFTについて、直近7日間の取引高が合計約1,860万ドルになったと報じました。市場の低迷が語られる時期にも、一部の新しいコレクションへ取引が集中していたことを示す記事です。
ただし、取引高は発行会社の利益ではありません。また、Valhallaという名前には別のプロジェクトもあります。2026年9月27日に確認した資料から、当時の統計の意味、各企画の違い、その後に確認できる範囲を整理します。
約1,860万ドルは7日間の取引金額の合計
当時のThe Block記事はCryptoSlamの集計を引用し、Valhallaが約940万ドル・6,774件、Cockpunchが約920万ドル・9,554件と紹介しました。順位はそれぞれ3位と4位とされています。これは2022年12月の記事が参照した期間の記録で、現在の順位や継続的な売上水準ではありません。
| コレクション | 報じられた7日間の取引高 | 取引件数 |
|---|---|---|
| Valhalla | 約940万ドル | 6,774件 |
| Cockpunch | 約920万ドル | 9,554件 |
元記事の約1,800万ドルという見出しは、この合計を丸めたものです。点数や保有者数が1,860万になったわけではありません。また、売買が起きた金額の合計と、全保有者が今すぐ換金できる金額は一致しません。
今回の調査は当時の報道を確認したもので、元の全取引を再取得して同じ数値を再計算したものではありません。集計の締め時刻、対象取引の範囲、疑わしい取引の除外などにより別のデータとは差が出得ます。比較する際は、同じ日数というだけでなく集計方法もそろえる必要があります。
StackedのValhallaとFlokiの同名ゲームを分ける
ValhallaのOpenSeaコレクションは発行者をStackedStudiosと表示し、公式サイトはアバターのマーケットやクランの案内を掲載しています。2023年のCRIPCOによる調査記事も、Stackedのアニメ調アバター企画として紹介しています。ここで扱うNFTを特定するには、この発行主体とコレクションの対応を見る必要があります。
一方、Floki側の公式資料にもValhallaというゲームがあり、FLOKIの用途に結び付く別の説明がされています。旧記事には、Stackedの企画を説明する文章へFlokiのゲームの情報が混在していました。名称だけを手掛かりに別企画の運営者や機能を結び付けると、購入する資産の説明が変わってしまいます。
同名のサービスを区別するときは、公式ドメイン、コレクションの発行者、チェーン、コントラクトを順に照合します。画像や名称だけが似ていることは、同じ運営主体や相互利用できる権利の証拠にはなりません。Stackedのアバターを持つことから、Flokiのゲーム内の資産を得たとは判断できません。
また、マーケットやクランという案内があることと、当初想定された機能が全て実装・運用されたことも別です。本稿ではウォレット接続後の操作やゲームプレイを検証していないため、現在の全機能を利用できるという案内はしていません。
Cockpunchはティム・フェリスの物語とアートの企画
Cockpunchは、作家・起業家のティム・フェリスが紹介したフィクションとアートのプロジェクトです。本人の2022年11月18日の記事は、その制作や発想を扱い、同年12月5日には関連するフィクションのポッドキャストを案内しています。NFTの売買だけでなく、物語を音声でも展開した点が特徴です。
最初の発表には、一次販売による収入をSaisei Foundationへ寄付する方針が記載されていました。ただし、報道された約920万ドルの取引高すべてが、そのまま寄付額になるわけではありません。発行時の販売、保有者同士の二次取引、制作者へ支払われる金額を分ける必要があります。
物語を読むことや音声を聴くことと、NFTを保有することも同じではありません。作品の世界観への関心から参加する人もいれば、デジタル作品の収集を目的にする人もいます。著名な著者が関わることや寄付の目的があることを、二次市場での価格上昇の保証へ置き換えることはできません。
日本語で紹介する際も、ポッドキャストの聴取順位とNFTの取引順位を混同しないようにします。配信サービスごとのカテゴリー順位は、対象地域や日時によって変わり、NFTの購入者数を直接測る数字ではありません。本稿は当時の順位を現在の人気指標として再掲していません。
売買高、販売収入、保有者の損益は異なる
同じNFTが期間内に何度も売られれば、そのたびに売買高へ計上され得ます。例えば一つの作品が100、120、90という価格で順に取引された場合、取引金額の合計は310ですが、最後の価格は90です。合計額が大きいことだけで、全購入者が利益を得たとはいえません。
発行者や制作者の収入を知りたい場合は、一次販売の代金、二次流通のロイヤルティーなど、実際に誰へ支払われるかを見ます。保有者の利益を知りたい場合は、取得費用、売却代金、手数料を対応させます。同じ取引でも、分析したい対象によって見るべき金額が違います。
さらに、平均価格だけではコレクション内の違いが見えません。希少な一作品の高額取引が平均を押し上げる場合もあり、その値段で他の作品が売れるとは限りません。最低出品価格も売り手の提示であり、必ず成立する価格とは別です。件数、価格の分布、売買の集中度を合わせて見る方が、実際の市場を把握しやすくなります。
取引高が多い理由についても、公開された合計額だけから断定しません。新規参加、既存保有者の売却、短期の回転売買など、異なる動きが同じ数字に含まれ得ます。特定のコレクションに不正があると認定するには、別途具体的な証拠が必要です。
2026年に確認できる公開ページと調査の限界
2026年9月の確認では、Stacked側のValhallaの公式サイトにマーケットとクランの案内があり、OpenSeaにも対応するコレクションのページがありました。Cockpunchのサイトとフェリス本人の過去の企画記事も確認できます。少なくとも、当時の企画をたどる公開資料は残っています。
ただし、ページの存在を、そのまま活動の活発さや全サービスの継続の証明とすることはできません。本稿では両企画について、現在の全ユーザー数、特典の履行、収益や寄付の全記録を監査していません。2022年の週次取引高を、その後の長期的な成功まで示す数字として使わないようにします。
現在の売買画面に載る価格や件数は変動するため、過去のニュースを読むための記事へ固定的な購入目安として載せることも避けます。確認が必要な場合は、参照日時とネットワーク、期間を残し、当時の集計と今の集計を区別する必要があります。
短期間の取引集中から市場全体を推測しない
二つの企画で取引が増えたことは、その期間に関心が集まったことを示す材料になります。しかし、市場全体が回復したことや、すべての新規NFTが売れる状況になったことまで証明しません。特定のコレクションの動きと、広い市場の統計は異なる範囲を測っています。
このニュースを比較の材料にするなら、まず対象の同一性を確かめ、次に期間と指標の定義をそろえます。そのうえで、作品の内容、使える機能、保有者の行動を別に調べます。数字が大きいという印象を出発点にせず、何を数えた結果なのかを明確にすることが重要です。
2022年12月の記録は、相場が低迷していても一部の作品へ取引が集中し得ることを示しています。同時に、同名企画の取り違えや取引高の誤読を避けなければ、その記録から誤った投資上の結論を導いてしまいます。作品の特徴と数値の限界を併せて読むことが必要です。
よくある質問
Q. 1,860万ドルは発行者の利益ですか。
A. 違います。当時報じられた2コレクションの7日間の取引金額の合計です。発行者の収入や保有者の利益とは区別します。
Q. ここでのValhallaはFlokiのゲームですか。
A. 記事で扱うのはStackedStudiosのNFTコレクションです。Floki側にも同名ゲームがあるため、発行者や公式サイトを照合する必要があります。
Q. Cockpunchの取引高は全額寄付されたのですか。
A. 公式発表の寄付方針は一次販売の収入についてのものです。二次取引を含み得る取引高全額を寄付額とすることはできません。
この記事の出典
- The Block:2022年12月14日の2企画の取引高報道
- Valhalla:アバターの公式サイト
- OpenSea:StackedStudiosのValhallaコレクション
- Floki:同名ゲームの公式紹介
- Tim Ferriss:Cockpunchの企画と一次販売の寄付方針
- Tim Ferriss:フィクションポッドキャストの紹介
- Cockpunch:公式サイト
- CRIPCO:2023年のValhalla調査
※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供であり、投資の勧誘や助言ではありません。暗号資産・NFTの価格は大きく変動します。最新の情報は各公式発表をご確認ください。




