米国『100万BTC備蓄』法案の現実性

▽ 要約

法案 5年で100万BTC取得を米上院が審議。
需給 市場の希少度指数が上昇し売り枯れ。
機関マネー 9/8–12にETFへ23億ドル流入。
オプション 12月は14–20万ドルに建玉集中。

「国家がビットコインを備蓄する時代」は来るのか――米上院のBITCOIN法案は5年で100万BTC取得を掲げ、ETF資金流入やオプション市場の強気傾斜も重なり相場の背風が強い。政策・需給・テックの三面から進捗と実現可能性を点検し、投資家にとっての含意を解説する。

米国「100万BTC備蓄」法案の中身

政府が年20万BTCを5年間で累積取得する設計のため、調達手段と財政中立性が実現性のカギとなる。
法案S.954(BITCOIN Act of 2025)は「戦略的ビットコイン備蓄」を創設し、購入・保管・売却の権限とガバナンスを定義する。財源は連邦準備制度の剰余金や金証券評価益の活用で相殺し「予算中立」を志向する。9月にはマイケル・セイラーら業界リーダーが議会向け円卓会議を開き、懸念点の洗い出しと推進戦略を共有した。

実現可能性と市場インパクト

国家買い付けは価格弾力性の低さゆえ即時の上昇圧力となり得る一方で、分割購入・保管ルールが価格変動リスクを吸収するため、執行設計次第でボラティリティは抑制も可能だ。マイクロストラテジーの約63.9万BTC保有規模は需要ショックの参照値として有用である。

関連:2025年9月のビットコイン最新動向<9/16>

需給とセンチメント—オンチェーンとデリバティブ

希少度指数の上昇で売り手不在が進む一方、コール優勢の建玉偏重が年末の上値志向を示す。
取引所在庫の希少度指数は6月以来の上昇で供給ひっ迫を示唆する。デリバティブではコール比率が約6割まで優勢化し、12月物は14万〜20万ドル帯のコールに建玉が集中している。こうした「売り枯れ×強気オプション」の組合せは、押し目の浅い上昇局面をもたらしやすい。

注意点—単一指標依存のリスク

希少度や売り圧関連指標は強気だが、一過性のスパイク後に反落することもあるため、現物フロー(ETF流入)、出来高、板厚など複数データで裏取りする必要がある。

資金フローと価格—ETF・USDT・金利

ETFの継続流入と利下げ観測で下支えが強まるため、11.7万ドル超えなら高値更新の射程が開ける。
9/8〜12の5営業日で米スポットBTC ETFへ約23億ドルが純流入し、年初来でも有数の規模となった。USDTは9月中旬に大型ミントが相次ぎ、暗号資産市場への新規マネー余力を示した。価格は9/15に11.6万ドル台を回復。CME FedWatchでは9/17の25bp利下げ織り込みが極めて高く、歴史統計では「高値圏での利下げ開始後12カ月の平均株式リターン+15%」という分析もある。

テクニカルの分岐水準

短期は11.2万/10.7万ドルが支持帯として意識され、11.7万ドル突破で12.4万ドル(過去高値)トライの余地が広がる。逆に支持割れなら調整が速く深くなる可能性がある。

規制・政策の転換点

SECの「共通上場基準」構想と英米の規制協調が、暗号資産の“時間軸”を早めるため、商品ラインアップと参加主体の拡大が同時進行となる。
SECは暗号資産ETPの個別19b‑4審査を簡素化し、基準適合ならS‑1から最短75日前後で上場可能とする方向で議論が進む。米国ではXRPやDOGEのETF上場計画も報じられ、市場アクセスの裾野が広がる見込みだ。国際面では、英国と米国が安定通貨やデジタル証券サンドボックスで連携強化に踏み出し、ルールの相互運用性が高まる。

米金融当局の人事

スティーブン・ミラン氏がFRB理事に就任し、金融緩和バイアスが政策議論に加わる可能性がある。一方で中銀の独立性担保も引き続き注視点となる。

テック×暗号の融合—決済と基盤

AIエージェント決済の標準化とUSDCの新規チェーン展開が同時進行のため、実需回廊の整備が価格ファンダを下支えする。
Googleは「Agent Payments Protocol(AP2)」を公開し、カード/即時振込/安定通貨を横断する決済を標準化。CoinbaseやMastercardなど60社超がパートナーに名を連ねる。基盤側ではCircleがHyperliquidに戦略投資し、HyperEVMでネイティブUSDCとCCTP v2を展開、将来的なバリデーター参加も検討している。

▽ FAQ

Q. BITCOIN法案は何を目指す?
A. S.954は5年で100万BTC備蓄を規定し、連銀剰余金や金証券再評価益で費用を相殺する設計(2025年案)。

Q. ETFフローはどう動いた?
A. 9/8–12に米スポットBTC ETFへ累計約23億ドル流入、IBITやFBTCが牽引したと集計されている。

Q. オプション市場の偏りは?
A. コール比率が約59%へ上昇、12月限は14万〜20万ドルのコールに建玉集中と報告がある。

Q. 直近の価格レンジは?
A. 9/15に一時11.6万ドル台、11.2万/10.7万ドルが支持帯、11.7万ドル上抜けで12.4万ドル試しの見方。

Q. 英米協調の狙いは?
A. 安定通貨監督やデジタル証券サンドボックスの連携で、国境を跨ぐ市場アクセスと監督協調を強化する。

■ ニュース解説

法案が年20万BTC×5年の備蓄枠を定め進行する一方で、ETF資金流入や希少度指数の上昇が需給を締め、英米の規制協調とAP2が実需の回廊を広げつつある。
投資家の視点:短期は11.2万/10.7万ドルの支持、11.7万ドル上抜けの持続性、ETFフロー継続性、USDTミントの定着度をモニター。政策ではSECの上場基準共通化とFOMCの緩和ペースが鍵。分散・流動性・ヘッジの規律を維持しつつ段階的にエクスポージャーを調整したい。

※本稿は投資助言ではありません。

(参考:U.S. Congress