【要約】
・ビットコインを賞金に採用し、番組中の相場変動まで物語に取り込んでいる
・8人の人気配信者がマルタ島で2週間共同生活を送り、その全貌を24時間ライブ配信
・視聴者がリアルタイムで番組に干渉し、展開に影響を与えられるインタラクティブ性
・Netflix初の試みとして、撮影そのものを常時オンラインで公開する新時代のリアリティ番組
・制作はマーク・ホランド率いるSHRIMP.coが担当し、マルタ政府の支援も受けた
「The House of Streams」とは何か
The House of Streamsは、8人の有名ストリーマーを集めてマルタ島の一軒家に滞在させ、その様子を24時間体制でライブ配信した新感覚のリアリティ番組です。視聴者はTwitchやYouTubeを通じて、ゲーム実況者やIRL配信者の日常を丸ごと覗き見るだけでなく、コメントを通して番組に直接影響を与えられる仕組みになっています。撮影期間は2週間で、その間は家屋内外に合計35台以上のカメラが設置され、起きている出来事が常にオンラインに配信されました。
革新的な「第四の壁」の突破
通常のリアリティ番組では出演者の外部連絡を遮断しがちですが、The House of Streamsではあえて出演者にスマートフォンやPCを支給し、自身のTwitchチャンネルで配信したりSNSを更新することを許可しています。これにより、リアリティ番組の定番である“壁”を取り払い、視聴者がリアルタイムでコメントやアイデアを送り、その内容が出演者の行動や戦略に反映される双方向モデルを実現。視聴者にとっては“番組を一緒に作っている感覚”が得られ、今までにない没入感を提供しています。
賞金にビットコインを採用
The House of Streamsが特に注目を集めた要因の一つが、賞金として暗号資産であるビットコインを採用している点です。撮影開始時には1ビットコインが約16,000ユーロに相当しましたが、番組期間中に価値が上下する様子もストーリーの一部（サブプロット）として描かれました。ビットコイン価格が記録的に高騰すると、出演者たちのテンションや戦略にも変化が生まれ、視聴者のコメント欄でも「賞金の価値が上がった」「暗号資産に興味を持った」などの声が多く見られたそうです。こうした価格変動を“ドラマ”として組み込む演出は、暗号資産コミュニティの関心を集めるだけでなく、番組をより刺激的なものにしています。
制作者の背景と国際的な連携
本企画の発案者は、マルタ出身の映像プロデューサーであるマーク・ホランド氏です。彼が率いる制作会社Stream House Media Productions（通称：SHRIMP.co）は、マルタ政府の映像委員会からサポートを受け、番組の企画・運営を完全にマルタで行いました。さらに、イギリスのCamelot Films社がNetflixとの配信契約を仲介し、欧州圏を中心に話題性を高めています。マルタ国内での撮影という地元色と国際的なチームの組み合わせが、独創的なリアリティ番組を生み出す原動力となりました。
24時間の配信体制と技術的要素
番組は家屋の至る所に配置された多種多様なカメラで撮影され、裏方の配信司令室（ミッションコントロール）からネットへ向けて常時ストリーミングされました。高度なミキシング技術を使い、TwitchとYouTubeへ同時配信するシステムを整備。視聴者のコメントは画面上で即時表示され、出演者もタブレットやモニターを通してリアルタイムに反応できます。撮影が終了した後は、その膨大なデータを編集し、Netflix向けの約8～9話構成のシリーズへ再構築する方針がとられました。ビットコインに絡めたクイズやゲームも行われ、暗号資産とエンターテインメントを直結させる事例として大きな注目を集めています。
番組の社会的・文化的インパクト
The House of Streamsは“配信者の存在”を広く認知させるだけでなく、ネット文化と従来のテレビ番組を融合させた先駆的試みとして高く評価されています。特に、人気ストリーマーたちが24時間密着の生活を送る姿を、ファンコミュニティがリアルタイムで見守り、SNSを通じて発信できる点は大きな話題となりました。一方で、このようにプライバシーをさらけ出す形式のリアリティ番組には、出演者への心理的負担や炎上リスクを危惧する声も見られます。しかしホランド氏は、出演者がオンラインコミュニケーションに熟達しているストリーマーであることを強調しており、今後のリアリティ番組の在り方を考える上で貴重な事例になると期待されています。
Netflixでの公開と今後の展望
撮影は2023年6月に行われ、翌年の編集作業を経て、2025年6月18日にイギリス・アイルランド地域でのNetflix配信が発表されています。マルタで撮影・制作された作品がNetflixオリジナルシリーズとして公開されるのは史上初とされ、地元メディアでも「マルタ産の快挙」として大々的に報道されました。他国での配信スケジュールは未定ながら、視聴者の反応次第でグローバル展開が拡大していく可能性があります。国際的なメディア芸術イベントや映画祭で事例紹介が行われることも期待されており、そのインタラクティブ性が次なる番組制作の指針となると指摘する専門家もいます。
ニュースの解説
ビットコインが賞金に設定されるリアリティ番組は極めて珍しく、The House of Streamsは暗号資産の価値変動をエンターテインメントへ取り込む好例といえます。リアルタイム配信と双方向性が普及した現在、デジタル通貨の話題性を番組の仕掛けに組み込むことで、視聴者との距離を縮めるだけでなく暗号資産への理解を広げる効果が見込まれます。従来のメディアでは得られなかった即時性・没入感に、ビットコインの変動がスリルを加える構成は、今後さらに注目度を高めるでしょう。Netflixでの配信を皮切りに、マルタ発のこの革新的企画が世界的に拡散されることで、リアリティ番組の可能性と暗号資産の一般認知度がいっそう高まることが期待されています。
