▽ 要約
基本:米GENIUS法準拠の米国内向け米ドル連動型安定通貨/USAT
体制構築:Anchorageが発行、Cantorが準備金保管・運用を担う
用途:米国内の決済・送金と創作者経済の送受金に照準
競争:USDC等と本格競合、国債需要増など副次効果も
USATはGENIUS法に沿った銀行発行・1:1裏付け・月次開示の設計で、米国内決済に最適化されたTetherの新ドル建てステーブルコインです。
米国で「安全に使えるデジタルドル」を求める声に対し、TetherはUSATで規制準拠と透明性を前面に出す。USATはGENIUS法に基づき銀行が発行し、現金・短期国債で1:1裏付け、月次開示を行うため、米国内の決済・送金での採用障壁を下げる狙いだ。既存のUSDTがオフショア発行で規制上の制約を受けたのに対し、USATは米国市場で合法的に流通できる「オンショア版」。本稿では規制・体制・技術・用途・米国戦略・市場影響を要点解説する。
TetherのUSAT発行と米規制準拠(2025年内)
GENIUS法に完全準拠するため、Anchorage銀行が発行しCantorが準備金を保管するので、米国内で合法かつ透明な運用が可能となる。
米連邦法となったGENIUS法は、1:1の安全資産裏付け、月次開示、無利息、ライセンス保有の発行体といった厳格な要件を定め、米国内での安定運用を制度面から担保する。
GENIUS法の要件(骨子)
1:1現金・短期国債の裏付けと月次開示、無利息、適格発行体ライセンスを義務付けるため、利用者保護と監督一体性が強化された。
発行体は連邦・州の二元的監督を受け、証券ではない支払用トークンとしての位置づけが明確化される一方、政府の預金保険対象外である点も明示された。
USDT/Tether Gold(XAU₮)との相違点
USATは米国内の規制下で銀行発行・完全現金等担保と毎月開示に徹する一方、USDTはオフショア発行、XAU₮は金連動で目的が異なる。
USDTは世界最大規模の流通を誇るが米国内では準拠法制の制約があった。他方、XAU₮は1トロイオンス相当の金現物に連動し、価値保存・分散投資の色彩が強い。
技術とコンプライアンス(発行・償還・監視)
発行と償還は銀行レールとブロックチェーンを連携し、アドレス監視や制裁対応を前提に設計されるため、決済用途で求められる遵法性と追跡性が担保される。
スマートコントラクト上の移転は標準規格に準拠し、発行量は準備金の入出金と連動、異常取引の監視・遮断を含むガバナンスが想定される。
用途と米国戦略(決済・送金/クリエイター経済)
米国内の即時小口送金とオンライン決済に照準を合わせ、Rumble等のプラットフォーム連携でクリエイター経済の送受金に普及を狙うため、初期獲得層の明確化が図られる。
企業間決済や越境B2B送金でも銀行送金より迅速・低コストな選択肢となり、法定通貨建ての会計処理の容易さが採用を後押しする。
市場への影響(競合・供給・米国債)
USDC等との競争が激化し、準備金の国債需要が増す一方で、流動性分散や追加規制の可能性も高まるため、発行残高の伸長が金融市場へ波及する。
供給拡大はドルのデジタル流通経路を多様化させ、米国債需要の増勢や資本市場への接続強化という副次効果を生みうる半面、ラン時の耐性設計が問われる。
今後の注目点(時系列)
2025年内のローンチ、主要取引所・決済事業者対応、月次開示の品質、USDTとの相互交換やガバナンス開示の拡充、規制当局との継続的対話が焦点となる。
▽ FAQ
Q. USATはいつ、誰が発行する?
A. 2025年内にAnchorage Digital Bank, N.A.が発行。Tetherが運用・技術を支援し米国内で提供されます(GENIUS法準拠)。
Q. 裏付け資産と開示ルールは?
A. 現金・米国短期国債で1:1完全担保、毎月の内訳開示と監査等の透明性措置が義務化されています(2025-07-18施行)。
Q. 利息や保護(FDIC/SIPC)は?
A. 利息付与は禁止で、政府の預金保険対象外です。安定性は準備金と監督に依拠し、元本保証は公的にはありません。
Q. USDTやXAU₮との位置づけは?
A. USATは米国内決済用のオンショア版、USDTはオフショアでグローバル流通、XAU₮は金連動の価値保存向けです。
Q. 主要パートナーと拠点は?
A. 発行:Anchorage、準備金保管:Cantor Fitzgerald、米国拠点はノースカロライナ州シャーロットに置かれます。
■ ニュース解説
USATはGENIUS法の明確化で銀行発行・1:1裏付け・月次開示を前提に米国内で合法運用できるため、決済実装と規制整合の両立が進む。
投資家の視点:銀行発行・国債裏付けは信頼性を高める一方で、利息禁止や保険非対象、規制追加のリスクも織り込み、流動性と開示の継続性を点検したい。
※本稿は一般的な情報提供を目的としており、投資助言ではありません。
(参考:Congress.gov)





