▽ 要約
平均6,641万円、高市内閣の閣僚資産分布を一覧。
小泉防衛相2.7億円は全額が滝川氏名義の有価証券。
株式評価額を含まない公開ルールで実際の資産は上振れ。
菅・岸田内閣より平均資産は低下し超富裕層が減少。
第1次高市早苗内閣の閣僚資産公開を素材に、高市内閣 閣僚資産の水準と内訳、過去内閣との違いを投資家目線で整理します。

第1次高市早苗内閣でどの程度の資産を持つ閣僚が政策を担っているのか、平均や内訳が投資家の関心を集めています。今回の資産公開では、平均資産は過去内閣より低い一方で、小泉進次郎防衛相の2億円超など個別に際立つケースも確認されました。この記事では、高市内閣の資産分布の特徴と公開ルール、そして菅義偉内閣・第1次岸田内閣との比較を通じて、政治リスク評価にどう位置付けるべきかを解説します。
高市内閣の閣僚資産構造
高市内閣の閣僚資産は平均6,641万円で、突出した超富裕層が少ない分布となっている点が特徴です。
2025-10-21に発足した第1次高市内閣では、高市早苗首相と閣僚18人の家族分を含む保有資産が2025-12-05に公開され、平均は約6,641万円と示されました。家族分まで含めた資産総額が最も多かったのは小泉進次郎防衛相の2億7,248万円で、唯一の2億円超となっています。
一方、高市首相自身の資産は約3,206万円で、閣僚19人中10位という中位のポジションにあります。内訳は奈良市の土地・建物や夫の山本拓元議員名義の不動産・定期預金などで、典型的な不動産+預金型のポートフォリオといえます。
1億円以上の資産を持つ閣僚は、小泉氏のほか茂木敏充外相(約1億9,397万円)、林芳正総務相(約1億5,088万円)、片山さつき財務相(約1億3,966万円)、赤間二郎国家公安委員長(約1億1,991万円)の5人にとどまります。最少は松本尚デジタル相の約550万円であり、トップと最少の差は約50倍とかなり大きいものの、「数十億円規模」の資産家は含まれていません。
こうした分布を俯瞰すると、高市内閣は「2億円超の資産家1人+1億円台が数人+数千万円台が多数」という構造で、平均値よりも中央値に近い閣僚が多い構成になっています。平均を押し上げる一部の大資産家の存在が、公開数値を読む際の重要な前提となります。
小泉防衛相資産が突出した背景
小泉進次郎防衛相の2億7,248万円という資産は全額が妻の滝川クリステル氏名義の有価証券であり、家族資産の合算が突出の主因となっています。
公開資料によれば、小泉氏本人は公開対象となる資産を自身名義では保有しておらず、申告された額のすべてが滝川氏名義の国債などの有価証券です。国債だけで約7,000万円と報じられており、金融資産への集中度が高い構成といえます。
滝川クリステル氏は元テレビキャスターとして長年活動してきた人物で、自身の職業収入や資産形成の履歴があるとみられます。そこに政治家一家出身である小泉氏側の資産背景も加わることで、世帯単位の資産額が他の閣僚に比べて大きくなっている可能性があります。ただし、どの部分が相続・贈与か、どの部分が本人らの運用成果かは公開資料からは判然とせず、推計の域を出ません。
今回の開示では「配偶者・扶養子の資産も合算する」というルールのため、配偶者が高所得・高資産である場合には、本人名義の資産が少なくとも総額が大きく見える構造があります。小泉氏のケースはその典型であり、政治家本人の財産と世帯全体としての財産を区別して見る視点が投資家にも求められます。
資産公開制度のルールと限界
公開された資産は不動産・有価証券・定期預金などに限られ、株式評価額や動産は含まれないため、実際の財産規模とは乖離し得る点に注意が必要です。
高市内閣の資産一覧では、土地・建物は固定資産税の課税標準額、有価証券は国債や社債、投資信託などの額面金額、預貯金は定期預金やゆうちょの貯金などが集計対象になっています。高市首相の夫である山本拓氏の定期預金1,000万円なども、この枠組みの中でカウントされています。
一方で、上場株式は銘柄名と株数の届け出義務こそあるものの、その評価額は資産総額に算入されません。茂木敏充外相はeBASEなど5銘柄・計24万3,300株を別途保有していると公表されていますが、その時価は1億9,397万円という資産総額には含まれていません。
また、普通預金・当座預金の残高や、貸付金・借入金、ゴルフ会員権、自動車、ヨット、競走馬、書画骨董なども集計対象外とされています。
このため、例えば自動車や美術品、現金同等の普通預金を厚く保有するタイプの資産家は、今回の公開額より実際の純資産が相当程度大きくなっている可能性があります。公開データはあくまで「一定のルールで切り取られた一部の資産」であり、政治家の財務全体を完全に表すものではない点を前提に読む必要があります。
なお、資産公開制度や政治資金規正法の位置付け、過去の改正経緯については別稿で整理しています。
過去内閣比較と見える資産水準の変化
菅内閣や第1次岸田内閣と比較すると、高市内閣は平均資産水準・1億円超の閣僚数ともに抑えられた構成になっています。
2020年9月発足の菅義偉内閣では、首相と閣僚21人の家族分を含む平均資産は約1億651万円と、1億円を超える水準でした。最多は麻生太郎副総理兼財務相の約6億4,845万円で、1億円超の閣僚は5人とされています。
2021年10月発足の第1次岸田文雄内閣では、首相と閣僚20人の平均資産は約9,440万円に低下しましたが、それでも高市内閣よりは高い水準です。資産トップは野田聖子少子化担当相の約2億8,553万円で、1億円超の閣僚は7人、そのうち4人は2億円超と報じられました。
今回の高市内閣では、平均が約6,641万円にとどまり、2億円超の閣僚は小泉防衛相だけ、1億円超は5人と、過去2内閣と比べて超富裕層の比率が低くなっています。これは、麻生氏や野田氏のような「突出した数億円クラス」の資産家が閣僚に含まれていないことが大きく、顔ぶれ次第で平均値が振れやすいことを示しています。
もっとも、資産公開ベースの数字はいずれの内閣でも同じ制度・同じ算定ルールで出されているため、トレンドとして「第2次安倍内閣以降の平均1億円超」から「岸田・高市内閣にかけての減少局面」にあることは読み取れます。投資家としては、この変化が単なる偶然の人事構成なのか、あるいは派閥力学や世代交代の影響なのかを、政治情勢と合わせて注視する必要があります。
論点と今後の注目点
閣僚資産の水準や構成は、利益相反リスクや政策の公平性への信頼に直結するため、政治リスク評価上の重要な情報です。
金融資産の比率が高い閣僚が多い場合、証券税制や金融所得課税、相続税・贈与税制へのスタンスに関して、市場との利害がどのように重なるかが注目されます。一方で、地方の不動産比率が高い閣僚が多い場合には、地方創生やインフラ投資の政策にインセンティブが働きやすいとの見方もありえます。
高市内閣では、平均水準は抑えつつも小泉氏や茂木氏など金融資産が厚い閣僚が要職に就いているため、今後の税制改正大綱や金融所得課税の議論では、利益相反管理の枠組みや説明責任が一段と問われる局面が想定されます。また、2023年前後に表面化した政治資金問題を踏まえ、資産公開制度自体の厳格化や範囲拡大(株式の時価反映など)が議題に上るかどうかも重要なウォッチポイントです。
さらに、資産公開は海外投資家にとっても「ガバナンスと透明性」のシグナルとして機能します。日本株全体への政治リスク・プレミアムを考えるうえで、個々の閣僚資産だけでなく、制度の透明性、開示のタイミング、説明責任の履行状況を組み合わせて評価する視点が必要です。
▽ FAQ
Q. 高市内閣の閣僚資産の平均額はいくらですか?
A. 2025-10-21発足の第1次高市内閣では、高市首相を含む閣僚19人の家族分平均資産は約6,641万円と公表されています。
Q. 資産トップの小泉進次郎防衛相の構成はどうなっていますか?
A. 小泉進次郎防衛相の2億7,248万円は全額が妻の滝川クリステル氏名義の国債など有価証券で、小泉氏本人名義の公開対象資産はゼロです。
Q. 公開対象となる資産の種類と算定方法は?
A. 土地・建物は固定資産税課税標準額、有価証券は額面、預貯金は定期などが対象で、普通預金や自動車、ゴルフ会員権などは高市内閣でも集計対象外とされています。
Q. 過去の菅内閣や第1次岸田内閣との違いは何ですか?
A. 菅内閣の平均は約1億651万円、第1次岸田内閣は約9,440万円だったのに対し、高市内閣は約6,641万円と閣僚資産の平均水準が低下しています。
Q. 今回の閣僚資産公開は投資家にとってどんな意味がありますか?
A. 高市内閣では超富裕層が相対的に少なく、金融資産偏重の閣僚もいるため、税制や金融規制の方向性、利益相反リスクを点検する材料として活用できます。
■ ニュース解説
今回の高市内閣の資産公開では、平均6,641万円という水準と小泉進次郎防衛相2億7,248万円という突出した数字が並び、制度上の算定方法と顔ぶれの組み合わせが結果を大きく左右することが改めて示されました。公開ルールは過去内閣と同一であるため、菅・岸田両内閣との比較から、超富裕層閣僚の有無が平均値や「1億円超」の人数を左右する構造も読み取れます。
投資家の視点では、第一に「公開額=実際の純資産」ではない点を冷静に踏まえる必要があります。株式の時価や普通預金、自動車・美術品などが含まれていないため、特に金融資産を厚く保有する閣僚の実勢は公開値より上振れする傾向があります。第二に、資産構成は税制や規制への姿勢に影響し得るため、金融所得課税や相続・贈与税制、地方不動産関連政策などの議論で、閣僚個々のポジションと政策対応をセットでトレースすることが重要です。第三に、政治資金問題への世論の厳しさが増す中で、資産公開制度の見直し(対象範囲や算定方法の拡充)が行われるかどうかは、日本株全体のガバナンス評価に関わる中長期テーマとなります。
投資家の視点:本稿のデータは、特定銘柄やセクターへの売買シグナルというより、政権の透明性やガバナンスを測る一つの材料と位置付けるのが妥当です。ポートフォリオ構築においては、高市内閣の政策運営方針(財政規律、税制、規制改革)と合わせて、閣僚の利害関係や説明責任の果たし方を点検し、日本株へのカントリーリスク・プレミアムをどう見積もるかというマクロな判断の一部として活用することが考えられます。特定の閣僚資産に過度に反応するのではなく、制度と運用の両面から政治リスクを体系的にモニターしていく姿勢が重要です。
※本稿は一般的な情報提供を目的としており、特定銘柄・金融商品の売買を推奨するものではなく、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。
(参考:nippon.com,TBS NEWS DIG,FNNプライムオンライン)





