【要約】
・Suiが新たに導入したホワイトリスト機能は、ハッキング被害時の資金回収を可能にする重要なアップデート
・2025年5月時点で、Suiのステーブルコインは約230倍に急増し、新興公链の中でも注目度が高い
・イーサリアムやトロン(Tron)が依然としてステーブルコイン全体の大半を占める一方、SolanaやBSCなど新興チェーンの台頭が顕著
・AptosもSuiと同じMove言語を用いたエコシステムとして急速に拡大中
・HyperliquidやBaseといった新興L2や公链もユーザー獲得を推し進め、多様化が進むステーブルコイン市場をさらに活性化
Suiのホワイトリスト機能がもたらすインパクト
暗号資産界隈で注目を集めているのが、昨日Suiが緊急リリースしたホワイトリスト機能です。SuiはMove言語を採用する新興ブロックチェーンとして知られており、2024年以降、ステーブルコインの発行額を急速に伸ばしてきました。そんなSuiが最新アップデートで導入したのが「特定のホワイトリストに登録されたトランザクションはあらゆるセキュリティチェックをバイパスできる」という仕組みです。
この背景には、ハッキングなど不正流出が起きた場合に、プロトコルがあらかじめ用意した“救済トランザクション”を実行して資金を回収する目的があります。たとえば盗難アドレスがブラックリストに登録されたとしても、このホワイトリスト機能によって一度だけ取引を強制的に通すことが可能です。こうした機能は中央集権的だという批判もあり得ますが、利用者保護の観点からは一定の有用性があると見なされています。
12ブロックチェーンのステーブルコイン大分析
2025年に入ってから、暗号資産市場はステーブルコインの発行と流通を巡って激しい競争が進んでいます。大手チェーンの優位は揺らぎ始め、一部では新興チェーンが驚異的な成長を見せています。ここでは、主要12チェーンの概況を整理します。
1. イーサリアム:依然として半数近い市場シェア
イーサリアムはステーブルコインの総発行量で半数以上を維持しており、特にUSDTやUSDCが主要な地位を占めています。USDTは減少傾向にあるものの、USDCが大幅に増加したことで全体の勢力を保っています。2025年5月時点で約1225億ドルの時価総額を誇り、依然としてステーブルコインの中心的役割を担うブロックチェーンです。
2. トロン(Tron):USDTの最大発行チェーン
トロン(Tron)はUSDTの発行量でイーサリアムを追い抜き、ステーブルコイン発行額の約31.3%を握っています。トランザクション数や実際の流通量も高く、特に小額決済や新興市場での利用が増えています。低コストと高速トランザクションを武器に、ますますUSDTユーザーを取り込んでいる点が特徴です。
3. Solana:高速TPSがステーブルコインを後押し
Solanaは、2024年初頭の18億ドル規模から、一時131億ドルを超える大幅なステーブルコイン増加を実現しました。高TPSを生かしたDEX取引の盛り上がりが背景にありますが、依然としてトップチェーンとは10倍以上の差があるのも事実。USDCがSolanaでは主要銘柄として扱われています。
4. BSC:ゼロGas施策とUSD1
BSC(Binance Smart Chain)は、2025年に入ってからステーブルコインの市値を70億ドルから約100億ドルへ伸ばしており、特にゼロGas施策と新興ステーブルコインであるUSD1の発行が大きく寄与しています。最近ではステーブルコインのDEX取引数が急増し、トランザクション数では先頭集団に入るほどの活況を呈しています。
5. Base:Coinbaseが後押しするL2
BaseはCoinbaseが開発したL2で、ステーブルコインの急激な増加が目立ちます。2024年1月には1.77億ドルだったのが、現在は40億ドルを超える規模に成長しました。USDCの優位が際立ち、特にETHメインネット外でのUSDC取引が活発化しています。
6. Hyperliquid:デリバティブ品特化の新星
Hyperliquidはデリバティブ品プラットフォームとして台頭し、わずか半年足らずで約32.6億ドルのステーブルコインを抱える規模に達しています。ここでもUSDCの存在感が大きく、今後はfeUSDやUSDTなどの多様化も進む見通しです。
7. Arbitrum:激しい流出も依然注目のL2
Arbitrumは2024年に流入が爆発的に増えた一方、2025年初頭に激しい資金流出を経験しました。Incentives Detoxの終了による流動性撤退と、USDTのクロスチェーン標準移行などが要因とされています。
8. Polygon:企業との連携がキー
PolygonではUSDCの原生サポートやVisa・Mastercardとの実証実験を通じて、ステーブルコインが堅調に増えています。USDTとUSDCがほぼ拮抗する形で、市場をけん引しているのが特徴です。
9. Avalanche:手数料引き下げの効果は限定的
Avalancheは手数料大幅削減後も、ステーブルコインの市値が10~20億ドル前後で推移しています。エコシステム全体の活性化が今後の課題として残っています。
10. Aptos:Moveエコシステムの先行者
AptosはSuiと同じMove言語圏の公链として、2025年第一四半期にステーブルコイン市値が10億ドルを突破。USDCが原生対応したこともあり、USDTと共に成長を押し上げています。
11. Sui:230倍の成長
再度取り上げるSuiは、ステーブルコイン分野において特筆すべき急成長を遂げています。2024年初は500万ドルほどだったのが、2025年5月には約11.56億ドルに到達し、実に230倍もの拡大となりました。USDCが主要なシェアを握っており、新たな資金流入の促進策が機能していると考えられます。
12. TON:Telegram連動が伸び悩み
TONはTelegramユーザーを取り込む形でスタートし、一時的にはUSDT発行額を急増させましたが、2025年に入るとやや伸び悩みが見えます。大きな新規トレンドが生まれるかが焦点です。
ニュースの解説
今回取り上げた2つのトピックからは、それぞれ次のような示唆が読み取れます。まず、Suiのホワイトリスト機能はブロックチェーンの分散性とセキュリティの両立をめぐる議論を再燃させる可能性があります。ユーザー保護の観点では歓迎される一方、中央集権的措置だと反発する声も考えられるでしょう。
一方、主要12チェーンにおけるステーブルコインエコシステムの分析からは、市場の多極化と新興チェーンの躍進が浮かび上がります。とりわけSuiやAptosのような新規プロジェクトが急速にステーブルコインを拡大させていることは、ユーザーが多様な選択肢を求めている証でもあるでしょう。今後、セキュリティ対策が強化される中で、それぞれのチェーンがいかにユーザー体験を向上させるかが鍵となりそうです。