ストラテジーのビットコイントレジャリー全解剖

▽ 要約

ホルディング:2025年7月末62.9万BTC、8月下旬63.2万BTCへ増加。
レバレッジ:転換社債と優先株で調達、希薄化と配当負担が裏表。
ボラティリティ:BTC下落と希薄化懸念で8月は株価15%安。
規制:MiCA全面適用で開示・運用の負担増に留意。

世界最大のビットコイントレジャリー企業となったストラテジー(旧マイクロストラテジー)は、ビットコイン長期保有で企業価値を高めると宣言してきたが、調達と希薄化、満期の壁、規制強化の三点で市場の不安も増しているため、ビットコイントレジャリー戦略の現在地と持続可能性を本稿で解説する。

現状総覧:保有・方針・社名変更

2025年7月31日にBTC保有は628,791枚、平均取得約7.3万ドルで評価額は約700億ドル超となり、8月下旬には約63.2万枚へ増加したため、上場企業として世界最大の保有者かつ総供給の約3%を占めるに至った。
同社は2025年8月11日付で法的社名を「Strategy Inc.」へ変更し、「ビットコイン財務戦略企業」を明確化した。

  • 保有・資金・方針の主要数値(2025年時点)
指標内容
ビットコイン保有枚数628,791 BTC(7/31)→ 632,457 BTC(8/24時点報道)
平均取得価格約 $73,000 / BTC
取得総額(簿価)約 $46B
推定時価約 $70–74B(価格により変動)
方針原則Buy & Hold(2022年12月に税務目的で704BTCのみ売却後、即買い戻し)

資金調達の特徴:ATM・優先株・転換社債

2024–25年はゼロ~低利の転換社債やATM(随時発行)に加え、2025年に可変配当の優先株(STRD/STRF/STRC)も投入したため、迅速にBTCを積み上げる一方で希薄化と配当負担が裏表となる。
主な発行実績は、2024年3月0.875%・2031年満期(約6.04億ドル)、2024年6月2.25%・2032年満期(8億ドル)、2024年11月0%・2029年満期(30億ドル)、2025年2月0%・2030年満期(20億ドル)などである。

KPI運用

同社は「Bitcoin per Share(BPS)」や「BTC Yield」「BTC $ Gain」をKPI化し、2025年は年初来でBPS+25%を達成したため、年内目標を引き上げた。さらに「mNAV(マーケットNAV)」倍率に基づく普通株ATM発行の運用指針も示している(のちに柔軟化)。

関連:mNAV(NAV倍率)とは:定義と計算

株価・市場の反応:上振れの後の修正

ナスダック100採用(2024年12月)など好材料を経て過熱感が高まったが、2025年3月10日はナスダック総合が4%急落する地合いで同社株も日中17%安となり、1月末から3月上旬で約30%下落した。
2025年8月には希薄化方針の修正とBTCの調整が重なり、月間で約15%安となってプレミアムが縮小した。

BTC連動の倍率効果

同社株はBTCと高相関に加え、資本政策で株価の上下が増幅されやすいため、上昇局面では超過リターンを狙える一方で下落局面のドローダウンも拡大しやすい。

希薄化と投資家評価

Q2決算時に示したmNAV 2.5倍基準による普通株ATM発行の抑制をその後柔軟化したため、希薄化懸念が再燃し短期的にプレミアムの剥落を招いた。一方で優先株活用は普通株の過度な希薄化を抑える狙いもある。

財務・規制リスクの勘所

総負債は2025年Q2時点で約82億ドル規模となり現預金は薄いため、BTCが低迷すると再調達や配当・利払いの負担が増しやすい。
規制面ではEUのMiCAが2024年6月(安定通貨)・12月(CASP)に適用され、暗号資産の開示・ガバナンス要求が強化されるため、上場企業の保有・発行行動にも透明性が求められる。

満期の壁と再調達

2027年0%約10.5億、2028年0.625%約10.1億、2029年0%30億、2030年は0%20億+0.625%8億、2031年0.875%約6.04億、2032年2.25%8億ドルが順次到来するため、BTC価格と株価水準が低迷すると現金償還や高コスト再調達のリスクが増す。

会計と税務の感応度

2025年からの公正価値会計導入でBTC評価差額が損益に直結するため、四半期業績の変動が大きい。さらに米税制の取り扱い次第では未実現益への課税リスク議論も続いており、資金繰り・売却余地に影響し得る。

広がる「暗号資産トレジャリー」:BTCからアルトへ?

ストラテジーの手法は他社のBTC保有を後押ししたが、最近はマーケットメイカーDWF Labsが「ナスダック上場企業に自社トークンの財庫を構築させる案件に対し、調達額の10–20%を投資」と発信しており、アルト含む“企業トレジャリー”の議論が加速している。
ただし、上場企業による個別トークン保有は流動性・規制・会計・ガバナンスの難度が一段高く、BTC以上にボラティリティ管理と情報開示の厳格運用が不可欠となる。

▽ FAQ

Q. 2025年8月時点のBTC保有量は?
A. 8月24日報道で632,457BTC、7月31日会社発表は628,791BTCとされる。

Q. 平均取得価格と総投資額は?
A. 平均約7.3万ドル/BTC、累計コストは約460億ドル(Q2公表)。

Q. 直近の株価下落要因は?
A. 希薄化方針の柔軟化とBTC調整が重なり、8月は約15%下落した。

Q. 主な債務満期は?
A. 2027年0%約10.5億、2028年0.625%約10.1億、2029年0%30億など。

Q. MiCAの施行フェーズは?
A. 2024年6月30日(安定通貨)と12月30日(CASP)適用開始。

■ ニュース解説

BTC保有は過去最大に達し社名も「Strategy Inc.」へ改称した一方で、8月は希薄化方針の修正とBTC調整で月間マイナス、満期の壁と配当負担への警戒が強まった。
投資家の視点:mNAVとBTC NAVの乖離、普通株と優先株による調達コスト、転換社債の満期プロファイル、MiCA等の開示・許認可対応、そして「BPSが増える発行か」をチェックし、BTC価格シナリオ別にNAV・希薄化・金利の三点感応度を比較するのが実務的だ。

※本稿は投資助言ではありません。

(参考:Strategy