要約
本記事では、ブロックチェーン技術を活用した知的財産（IP）管理プロトコルであるStory Protocolの可能性と課題について詳しく解説します。2024年8月にa16z CryptoがリードするBラウンドで8000万ドルの資金調達を完了したStory Protocolは、既に総資金調達額1.4億ドルに達し、開発者PIP Labsの評価額は22.5億ドルとなっています。本記事では、Story Protocolが解決を目指す具体的な問題点、ブロックチェーンとの統合による利点と限界、そして現在のエコシステムと将来の展望について詳細に分析します。

1. Story Protocolの資金調達と評価 2024年8月、知的財産（IP）に特化したブロックチェーンプロジェクトであるStory Protocolは、a16z Crypto主導のBラウンドで8000万ドルの資金調達を完了しました。参加投資家にはPolychain Capital、Stability AIの副社長兼取締役のScott Trowbridge、K11の創設者で億万長者のAdrian Cheng、デジタルアートコレクターのCozomo de’ Mediciなどが含まれます。これにより、Storyの総資金調達額は1.4億ドルに達し、開発者PIP Labsの企業評価額は22.5億ドルとなりました。主ネットは今年後半にリリース予定です。

2. Story Protocolが解決する具体的な問題 Story Protocolの主な目標は、知的財産（IP）をトークン化し、ブロックチェーン技術を利用して現実世界のIP管理の課題を解決することです。具体的には、以下のような問題に取り組んでいます：

• 複雑な許諾プロセス：IPの所有者と新たなクリエイターとの間での許諾交渉は煩雑で時間がかかります。Story Protocolは、これを簡素化し、効率化することを目指しています。
• 収益分配の紛争：版権収入の計算や支払いに関する紛争を防ぐために、スマートコントラクトを利用して自動的かつ透明な収益分配を実現します。
• 法的障壁：IPの登録や保護には高額な費用がかかり、個人クリエイターにとっては負担が大きいです。Story Protocolは、低コストでのIP登録を可能にし、より多くのクリエイターが参入できる環境を提供します。
• 国境を越えた複雑性：各国のIP法が異なるため、国際的なIP管理は非常に複雑です。ブロックチェーン技術を活用することで、グローバルに統一されたIP管理を目指します。

3. Story Protocolのブロックチェーン統合の利点 Story Protocolは、ブロックチェーン技術を利用することで、以下のような利点を提供します：

• 無国境のプラットフォーム：ブロックチェーンの特性上、国境を越えて誰でもIPをトークン化・管理できるため、グローバルな市場でのIP活用が容易になります。
• スマートコントラクトによる版税管理：スマートコントラクトを使用して、IPの使用に伴う版税を自動的に分配することで、収益分配の透明性と公正性を確保します。
• 簡便な登録プロセス：法律フレームワークとソフトウェア開発キット（SDK）の提供により、技術や法律の知識がなくても簡単にIPを登録・管理できます。
• 拡張性の確保：IP管理においては取引頻度や速度が他の分野ほど重要ではないため、ブロックチェーンのスケーラビリティ問題は大きな障害とはなりません。むしろ、セキュリティと透明性が強みとなります。

4. Story Protocolの技術的仕組み Story Protocolは、Cosmos SDKを基盤としたStory Networkをコアブロックチェーンとして構築し、EVM（Ethereum Virtual Machine）と互換性を持たせています。以下は主要な技術要素です：

• IP資産のトークン化：IPはERC-721 NFTとしてStory Network上に登録され、作者や他の作品との関係、属性などのメタデータが含まれます。
• IPFi（IPベースのDeFi）：IP資産を基にしたDeFiアプリケーションを展開し、IPの使用や流動性提供を促進します。
• IPアカウント：各IP資産にはERC-6551（Token Bound Account）が割り当てられ、IPに関連するデータや版税トークンを管理します。
• モジュール（Module）：スマートコントラクト内の各機能を集約したもので、認可モジュール、版税モジュール、争議モジュールなどが含まれます。

5. Story Protocolのエコシステムと主要アプリケーション Story Protocolは、多様なアプリケーションとの連携を通じてエコシステムを拡大しています。以下は主要なアプリケーションの例です：

• クリエイタープラットフォーム：Magma、Sekai、ABLO、Colorなどのプラットフォームがあり、クリエイターがIPを登録し、生成的AIを活用して新しいコンテンツを創作・収益化できます。
• DeFi / IPFi：Unleash、PIPERX、Ethena、Verioなどのプラットフォームが、IP資産を利用した貸借やトークン取引を支援します。
• 人工知能（AI）との統合：Mahojin、MyShell、RingFenceなどのAIアプリケーションが、生成的AIを活用したコンテンツ創作とIP登録をサポートします。

6. Story Protocolが直面する課題と障害 Story Protocolは多くの利点を持ちながらも、以下のような課題にも直面しています：

• トークンエコノミクスの設計：IPトークンの価値を維持し、ネットワークの持続可能な成長を支えるためには、効果的なトークン報酬システムが必要です。偽造活動を防ぎつつ、実際の価値創出に基づいた報酬を提供する仕組みが求められます。
• 知名度のあるIPの獲得：有名なIPをプラットフォームに誘致することは、エコシステムの価値を高めるために重要ですが、ブロックチェーンの利点を理解してもらう必要があります。Storyチームは効果的な説得戦略と資金支援を通じて、主要なIPの参加を促進する必要があります。
• 法的および規制の統合：Story Protocolは、ブロックチェーン上でのIP管理を目指していますが、実際の法律問題には対応できません。包括的な法的争議処理プロセスを構築し、現実世界の法的手段と連携する必要があります。

7. 今後の展望と成長戦略 Story Protocolは、知的財産のトークン化とブロックチェーン技術の融合を通じて、IP管理の新たなスタンダードを確立しようとしています。今後の成長戦略としては、以下の点が挙げられます：

• エコシステムの拡大：クリエイターやIP所有者が参加しやすい環境を整え、エコシステム全体の活性化を図ります。
• 技術革新の推進：スマートコントラクトやブロックチェーン技術のさらなる改良を行い、IP管理の効率化とセキュリティの強化を目指します。
• グローバルなパートナーシップの構築：世界各国のIP所有者や企業との連携を強化し、

より多くのIPがStory Protocol上で管理されるようにします。