▽ 要約
マーケット影響:ベイリー総裁が「貨幣信頼が揺らぐ」と警告。
法制化進展:米・香港でステーブルコイン規制が8月施行へ。
投資視点:RWAとDeFi融合でETH需要が急増中。
リスク管理:新決済モデルは脆弱性監視が不可欠。
ステーブルコイン、RWA、そして DeFi――この三つのキーフレーズは、いま金融の常識を書き換えようとしています。
「中央銀行の信用に挑む存在になり得る」と英国中銀が警鐘を鳴らす一方、米・香港では立法が加速。読者が抱くのは「どこにリスクとチャンスが潜むのか」という疑問でしょう。本稿は結論として「規制強化がむしろ RWA と DeFi の橋渡しを促し、ETH の価値再評価を導く」と示します。その論拠を、法制化の最新日程と機関投資データで立体的に解説します。
ステーブルコインが貨幣信頼にもたらす課題
中央銀行はステーブルコインの大量流通で通貨発行権が希釈される可能性を警戒している。
ベイリー総裁は「決済部門の革新が新たな脆弱性を持ち込む」と演説し、モニタリング強化を明言しました。ステーブルコイン残高は 2,583 億ドルで過去最高を更新しており、公的マネー需要を奪う規模に達しつつあります。
システミックリスクと規制の同時進行
金融庁や BoE が議論するリスクは二つです。第一に流動性ショック時の償還メカニズム崩壊、第二に銀行預金の市場シェア喪失――いずれも基軸通貨信認と直結します。規制当局は流通量上限や 1:1 証拠金義務を軸に枠組みを整備しています。
RWA:資産オンチェーン化の加速
2030 年までに最大 120 兆ドルがトークン化されるとの予測が示す通り、RWA は最も急成長するブロックチェーン分野です。(出典:Cycle Trading 2025‑07‑03)
RWA 市場は 2023 年 52 億→現在 243 億ドルへ 4.6 倍拡大。特に私募債や米国債の代替商品が顕著です。
国債・私募信貸が牽引
ブラックロックの BUIDL(28.6 億ドル)や富蘭克林の BENJI(7.43 億ドル)が代表例。95% がイーサリアム上に発行されており、「実需」が既にチェーン上で回り始めています。
DeFi 融合が生む新インフラ
ステーブルコインと RWA が DeFi の担保・利回り源となることで、従来の銀行機能を置換するエコシステムが形成される。
Securitize の sToken や Ethena の USDtb 戦略は、国債裏付けトークンを借入・再投資に使い 4–5% のベース利回りを実現しています。
スケーラビリティとコンプライアンスの両立
機関投資家は 合規版 DeFi を選好。KYC 済みウォレットとオラクル連動清算が常識化しつつあり、従来の「無許可型」より予測可能な収益構造を提供します。
ETH 価値再評価と投資インプリケーション
イーサリアムは最も安全で流動性の高い「RWA の公共チェーン」として、デジタル経済の基底資産に位置付けられる。価格遅行はむしろ再評価余地。
RWA 発行額の 58% が ETH、ZKsync Era を含めると 75% 以上。Bitmine Immersion が 2.5 億ドルで ETH を戦略備蓄した事例が象徴的です。
ETF ステーキング・バーンメカニズムの相乗効果
現物 ETF のステーキング解禁が実現すれば、バーンによる供給減と利回り需要が同時進行。デジタル石油としての希少性と利息収入が重層的に評価されます。
▽ FAQ
Q. 英国中銀の懸念はどこにある?
A. ステーブルコインが無制限に発行されると、中央銀行の利率政策が効きにくくなる点に最大の懸念があります。
Q. 米「Genius」法案の核心は?
A. 1:1 準備金義務と OCC(米通貨監督庁)ライセンス枠組みにより、ドル連動トークンを国債需要増へつなげる設計です。
Q. RWA が拡大する最速セグメントは?
A. 現時点で最大は 143 億ドル規模の私募信貸。利回りと分割性でオンチェーン化が急進しています。
Q. ETH 価格への直接インパクトは?
A. RWA 発行残高が 2 兆ドルに達すると仮定すると、ガス需要増とステーキング利率上昇で希薄化後マルチプルが大幅に切り上がるとの試算があります。
■ ニュース解説
今回の報道は、規制当局の警戒(英国)と、制度整備によるビジネス促進(米・香港)が同時に進む「二相市場」を示しています。短期的には法令整備までの不確実性がボラティリティ要因になる一方、中期的には公的ルールが投資家の参入障壁を下げ、市場規模を拡大させる公算が大きいといえます。
(出典:CycleTrading)