ステーブルコイン市場急拡大の光と影

▽要約

マーケット動向:総時価総額2500億ドル、5年で11倍拡大。
Circle上場衝撃:IPO比595%高で資本流入加速。
規制ターニング:GENIUS法案が米議会を通過、枠組み明確化。
利回り競争:USR等が4〜16%利回りを提示しシェア奪取。
アンカーリスク:透明性格差と流動性不足が最大の不安要因。

ステーブルコイン市場はわずか5年で時価総額を11倍に伸ばしたが、拡大の裏側ではアンカーリスクと規制の空白という影が濃い。本稿はCircleの歴史的IPOを起点に、ステーブルコイン市場の熱狂と危うさを整理する。読み進めれば、投資機会と同時に潜むリスクを俯瞰し、次の一手を考える手がかりが得られるだろう。

Circle上場が映すステーブルコイン市場の熱狂

株価急騰は市場の過熱度を示す警報でもある。 米国初の「ステーブルコイン第一号」Circleは上場3日で株価が6倍に跳ね上がり、流通USDCの7割に迫る時価総額を達成した。背景にはGENIUS法案可決で規制期待が強まり、既存金融からの資金流入が一気に加速したことがある。

IPO直後に株価6倍、投資家心理の映し鏡

Fortune誌が「40年で7番目の低評価IPO」と評した初値31ドルが、最高215.7ドルに達する過程で出来高は史上高水準の6300万株。この急騰は市場の信認拡大を示す一方、FOMO(取り残され恐怖)が過度に価格を押し上げたサインとも読める。

巨大化する市場規模と二極化するシェア

ステーブルコイン市場は成長と寡占が同時進行している。 発行総額は2500億ドル、うちUSDTが62%、USDCが24%を占め、両社で86%を独占。過半を超える資金が二つの民間企業に集中する構造は、単一障害点リスクを高める。

USDTとUSDCが86%を掌握

USDTは2024年に社員1人当たり5000万ドル以上の利益を生み、25年には約6000万ドルと試算される高収益体質。こうした“儲けの独占”が新興勢力の台頭を誘発している。

透明性と規制が決める生存率

規制整備は拡大を正当化する必要条件だ。 GENIUS法案はドル建てステーブルコインの準備資産監査と償還義務を法制化し、CFTC監督の道を開いた。さらにCFTCはUSDCを先物証拠金として承認、実需利用の道を広げた。

規制と技術の“互換性”が国際展開を左右

透明性レポートの頻度、監査人の質、オンチェーン証跡の公開度は、国境を超えるときの信頼係数となる。米国で確立した基準が国際標準化されれば、USDC陣営が先行者優位をさらに固める公算が大きい。

利回り競争がもたらす次の波

“利息ゼロ”の現状に挑むプロトコルが増えている。 USR(年利8.6%)、USDN(4.1%)、iUSD(最大16%)などは、収益を保有者へ還元するモデルでユーザーを誘致。

USR・USDN・iUSDの三者比較

USRはBTC/ETHフルバックで超過担保168%、USDNは米国債利回りを即日分配、iUSDはロック期間に応じ利率が階段式に上昇する。高利回りは魅力だが、流動性不足が生じればアンカーショックを拡大させる。

リスクマネーの出口と投資家の心得

IPO熱狂と高利回りは紙一重でバブルを醸成する。 BitMEX創業者Arthur Hayesは、ICOバブルの次はIPOバブルが来ると警鐘を鳴らす。アンカー・流動性・ガバナンスの三重リスクが顕在化した瞬間、利回りは一転して投資家の損失源に変わる。

アンカーリスクとIPOバブルのシグナル

Circle株の一部早期投資家やARK Investが高値で利確を始めた事実は、熱狂のピークが近い兆候かもしれない。上場益と高利回りに惑わされず、準備資産の質と換金性を冷静に見極める必要がある。

▽ FAQ

Q. Circle株はなぜ急騰した?
A. GENIUS法案可決期待とUSDC拡大で資金集中し、IPO比595%高。

Q. USDT/USDCはなぜ利息を払わない?
A. 準備資産の国債利回りを発行体が収益化し、利用者に還元しない設計。

Q. 新興ステーブルコインの最大年利は?
A. iUSDがロック4週以上で最高16.4%を提示。

Q. GENIUS法案の次のステップは?
A. 下院通過後に大統領署名で施行、2025年8月締切が設定されている。

■ ニュース解説

米国の規制整備が進むことで、ステーブルコインは決済や担保用途を拡大し、金融市場の流動性を押し上げる一方、準備資産が集中する寡占構造はシステミックリスクを内包する。投資家は株式・トークン・利回り商品の三層で利益機会を得られるが、アンカー・規制変更・金利反転が同時に起きた場合の下方リスクを常に織り込むべきだ。

(出典:PANews,Tim)