▽ 要約
市況:BTCは$88,000台、ETHは$2,900割れ(2025-12-26)。
テーマ:金銀高騰がオンチェーン商品取引を押し上げ。
規制:米政府閉鎖懸念と、日本の暗号資産ETF論点を整理。
リスク:Trust Wallet拡張2.68の後門で損失>$6M。
金銀高騰がオンチェーン商品取引を刺激する一方、BTC/ETHは年末レンジで荒い。米政策の遅延懸念とTrust Wallet事案が確認点となる。

年末相場は暗号資産だけを見ていれば足りるのか。結論は、金銀高騰を起点にRWAとオンチェーン商品・Perp DEXの動きが交差し、規制とセキュリティも同時に点検すべきだ。本稿は2025-12-26〜2025-12-27の材料を投資家目線で解説します。
市況総括
暗号資産は方向感が出にくい一方で、貴金属の急伸が「マクロ取引」の関心を押し上げている。
2025-12-26の短期値動きは、BTCとETHともに荒い。BTCは一時$89,000を回復(日中+0.72%)した後、別の場面では$88,000を割り込み$87,977(-0.44%)も示した。ETHも$2,900を割り込み$2,899.07(-2.09%)と報じられている。
貴金属は暗号資産とは別の理由で注目が集まった。現物金が$4,500/ozを突破し、銀も$75/ozに到達、年初来上昇率が一時約160%に迫ったと伝えた「銀が1オンス=79ドルを突破し、1日で+10%超」と投稿しており、年末は“暗号資産の外側”の変動が連想を生みやすい局面だ。
貴金属高の背景は複合的だ。2025年後半の米FRBの3回利下げやドル指数の低下、脱ドル化、各国中央銀行の金購入増などを要因として列挙した。見通しとしては金が2026年に$4,900(Goldman Sachs)や$6,000(Yardeni)、銀が$72〜$88(IG)といった予測も紹介されている。
規制・政策アップデート
政策イベントの遅延リスクが残るため、制度・税制の「確定」と「示唆」を分けて整理したい。
米国:政府閉鎖懸念と市場構造法案
政府閉鎖が現実化すれば、暗号資産の規制明確化は時間を要する可能性がある。
Yahoo!ファイナンス(CoinPost)は2025-12-27 06:35 JST配信として、上院民主党が2026-01-31前後に再び政府閉鎖を引き起こす可能性を示唆したと伝えた。Xでも同趣旨を共有しており、政治日程が市場心理に波及しやすい。
制度面では、同記事がデビッド・サックス仮想通貨担当官の発言として、2025-12-19に法案の上院審議入り(2026-01-01〜2026-01-31)を確認した点を挙げた。法案は暗号資産が「証券か商品か」の分類基準を定め、SECとCFTCの管轄を明確化する狙いで、2025-07-01〜2025-07-31に下院を通過済みとされる。
日本:金融庁が分離課税と暗号資産ETFを整理
税制改正要望は、暗号資産の課税とETF議論を一段具体化させた。
金融庁は2025-12-26付の資料で、金融商品取引法等の改正を前提に、一定の暗号資産取引を申告分離課税(20%)に見直す案を整理している。暗号資産ETF等は「投信法施行令の改正を前提に、分離課税」と明記され、損失の3年間繰越控除や、取引業者から税務当局への報告義務整備も含まれる。
Xでもこの資料に触れ、「政令改正で組成可能」などの記載を紹介した。もっとも、資料は要点整理の位置付けであり、法改正・政令改正の成立時期は別途確認が必要となる。
企業・資金調達・プロジェクト動向
オンチェーン商品とPerp DEXの競争軸は、手数料配分よりも「取引体験」と「扱うアセット」に広がっている。
実世界資産(RWA):金銀高騰がトークン化商品に波及
金銀高騰の影響は、トークン化大宗商品という形でも表面化している。
2025-12-26時点のトークン化大宗商品(主に金)の総時価総額は$3.95Bで、年初から約300%増とされる。市場の80%超をトークン化金が占め、Tether Gold(XAUT)とPaxos Gold(PAXG)の時価総額はそれぞれ約$1.7B、約$1.6Bと報じられた。
取引インフラ側では、Perp DEX上で大宗商品取引が伸びた。記事はOstiumの累計取引高が$30Bを超え、大宗商品永続の取引が約40%を占めると紹介する。未決済建玉の95%超が金・エネルギー・FXなどに集中し、金が$4,500を試す局面では、オンチェーン金パーペチュアルの建玉の50%超を捕捉したとも述べた。
Perp DEX:回購(バイバック)偏重への異論
バイバック偏重は、競争力の源泉をどこに置くかという論点を浮かび上がらせた。
トークン買い戻しを巡っては、同じPerp DEXでも評価軸が割れている。論考は、2025年に広がった「回购叙事(バイバックで価格を支える物語)」は、初期プロジェクトにとって有害になり得ると主張した。例としてHyperliquidが収益の約97%を回购に回している点を挙げ、短期的な価格支援と引き換えに、開発・拡張・M&Aに使える資金を失うリスクを指摘している。
論考は対比として、2017〜2021年のBinanceが新規プロダクト投入やM&Aを優先し、回购は利益の約20%に留めたと説明する。その上で、Lighterのような競合が、プロダクト革新・ユーザー獲得・複数法域での合法運営・採用・M&Aに資源を集中できれば、長期戦では優位に立つ余地があるという。
セキュリティ・ガバナンス
年末の材料は強気・弱気の両論を生むが、損失が顕在化したテーマから優先的に確認したい。
Trust Wallet:拡張機能2.68の後門
拡張機能の後門は、ウォレットのサプライチェーンが最大リスクになり得ることを示した。
ウォレットの供給網リスクが再確認された。Trust Walletのブラウザ拡張2.68版に悪意ある後門が見つかり、総損失が$6M超と報じた。攻撃者は第三者パッケージではなく拡張の内部コードを改変し、ロック解除後に暗号化された助記詞を取得、入力パスワードで復号して攻撃者サーバーへ送信する仕組みとされる。
時間軸も具体的だ。悪性ドメイン(metrics-trustwallet.com)は2025-12-08に登録され、api.metrics-trustwallet[.]comへの初回リクエストは2025-12-21に観測されたという。被害はBTC約33 BTC(約$3M)に加え、Ethereum/L2等で約$3M、Solanaで約$431と整理され、APT(高度持続型脅威)の可能性が示唆された。
2025年の「離譜」事例が示す論点
2025年の十大事例は、詐欺と統治不全が同時に増幅する構図を映した。
業界の課題は価格より「統治」と「倫理」にも及ぶ。2025年の十大事例は、詐欺・内部不正・中心化対応が同時に起き得ることを示した。
・MELANIA/LIBRAのラグプルで$100M超の収奪
・Infiniの内部犯行で$49.5M流出
・PolymarketでUMA巨鲸が結果を操作
・TUSD準備金$456Mを巡る対立
・Zerebro共同創業者の“假死”騒動
・Cetusハック($223M)後にSuiが$162Mを凍結
・Confluxのナスダック逆さ合併が頓挫
・Faraday FutureがC10暗号指数構想を提示
・USDXのデペッグと創業者の刑事トラブル
・Berachainの「元本保護」条項が論点化
次の年に向けた視点では、2026年の有力叙事として、
①ステーブルコインの主流化(過去1年で約$46T決済との推計、国際送金の30%がステーブルコイン化という予測)、
②AI Agentの台頭(x402、KYAなど)、
③トークン化資産の実行性重視、
④予測市場の拡大(Polymarket週次>$1.5Bという予測)、
⑤プライバシー需要の再評価(時価総額$100B超予測)を挙げた。
予測は当たるか否かより、どの領域で実需・規制・技術が同時に進むかの仮説として扱うのが現実的だ。
▽ FAQ
Q. トークン化大宗商品はどこまで伸びた?
A. 2025-12-26時点で総時価総額$3.95B、XAUT約$1.7B・PAXG約$1.6Bが中心と報じた。
Q. Trust Wallet拡張2.68の被害規模は?
A. 総損失>$6Mで、BTC約33 BTC(約$3M)などが2025-12-21以降に確認、悪性ドメインは2025-12-08登録。
Q. 日本の暗号資産ETFは何が論点?
A. 金融庁資料(2025-12-26)は暗号資産ETFを政令改正前提で整理し、分離課税20%と損失3年繰越、報告義務整備も示した。
Q. 米国の市場構造法案はどこまで進んだ?
A. Yahoo報道では2025-07-01〜2025-07-31に下院通過済みで、政府閉鎖なら2026-01-01〜2026-01-31の審議が遅れる懸念がある。
■ ニュース解説
金銀高騰がオンチェーン商品取引を押し上げるため、暗号資産は「価格」だけでなく「取扱資産の拡張」を追う必要がある一方で、政策遅延と供給網攻撃が同時に起き得る点は見落とせない。
投資家の視点:年末は指標が錯綜しやすいので、
①規制の確定日程(法案・政令)②取引所/ウォレットのバージョン管理③トークン価値の源泉(回购か成長投資か)を分けてモニタリングしたい。
※本稿は一般的な情報提供を目的としており、特定銘柄・金融商品の売買を推奨するものではなく、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。
(参考:金融庁)





