▽ 要約
USDC建て非託管型のPolymarket予測市場の仕組みを解説
2024年米大統領選で約36億ドル、2025年11月に月間37億ドル超
CFTC制裁からQCEX買収を経て米国市場へ合法的に回帰しつつある
Kalshi等との比較とウォッシュトレード・民主主義への影響も整理
PolymarketはUSDCとPolygonを用いる世界最大級の暗号資産予測市場であり、政治・経済・スポーツなど多様なイベントに数十億ドル規模の資金が集まる一方、規制対応やウォッシュトレード、民主主義への影響を巡る論点も抱えています。

読者の多くは「Polymarketのオッズがニュースに出ているが、仕組みや規制リスクが分からない」「ギャンブルなのか、投資インフラなのか」を知りたいはずです。本稿ではPolymarketの構造、取引規模、法規制対応、競合との比較、社会的評価を整理し、予測市場セクターにおける位置付けを俯瞰します。Polymarketというフォーカスキーフレーズを軸に、投資家がこの新しい市場をどのように理解し、どの程度リスクを取るべき対象なのかを検討する材料を解説します。
Polymarketとは何か:仕組みとビジネスモデル
PolymarketはUSDC建てのバイナリ型コントラクトを取引し、価格を確率として解釈する暗号資産ベースの予測市場プラットフォームです。
バイナリ株と価格=確率のメカニズム
Polymarketでは「Yes/No」で判定可能な将来イベントごとにデジタル契約(予測株)が発行され、その価格が市場参加者のコンセンサス確率を表します。例えば「候補Xが選挙で勝つか?」という市場ではYes株とNo株がそれぞれ0〜1 USDCの範囲で板取引され、Yesが0.20 USDCで取引されていれば、その時点で市場は「勝つ確率20%程度」と評価していると解釈できます。価格形成はオーダーブックで行われ、Bid/Askの中値が画面上の「確率」として示されます。
各市場は完全担保型で、YesとNoの1組につき常に合計1 USDCがロックされ、現実の結果が確定すると的中側が1株=1 USDCで精算され、外れた側はゼロになります。このため、20セントで購入したYes株が的中すれば1ドルを受け取り差額0.80ドルが利益となり、外れれば全損です。決着前にも株は自由に売買できるため、途中で利益確定・損切りを行うトレーダーも多く、実際の取引はイベントの前後で激しく回転します。
非託管ウォレットとPolygonネットワーク
Polymarketの口座はメール登録等で作成されますが、内部ではユーザーごとにEthereum互換ウォレットが紐付けられ、秘密鍵は利用者側で保有する非託管設計が採用されています。基盤チェーンにはEthereum本体ではなくレイヤー2のPolygon(PoS)が用いられており、ガスコストと決済速度の面で一般ユーザーにも利用しやすい構成になっています。決済通貨はドル連動ステーブルコインのUSDCに限定されており、値洗いやP/L計算がしやすい点も特徴です。
オラクルと決着プロセス
各市場の最終的な結果は、選挙管理委員会の公式発表やスポーツの公式記録、政府統計といった外部情報源をもとに決定されます。結果が不明瞭なケースや情報ソース間に齟齬がある場合には、Polymarketが設置したマーケットインテグリティ委員会(MIC)が最終判断を下す枠組みがあり、コミュニティから異議申立てが行われるプロセスも整備されています。
新規市場の上場権限は基本的に運営チームに限定されており、「明確な決着が可能か」「十分な需要があるか」といった観点でテーマがキュレーションされます。この点で、誰でも自由に市場を立ち上げられる完全分散型プロトコルとは異なり、Polymarketはユーザー体験とコンプライアンスを優先したハイブリッド型の設計と言えます。
取引対象と利用動向:爆発的成長と統計
Polymarketでは政治・経済からスポーツ、AIやポップカルチャーまで、多様なイベントが予測市場として上場され、2024〜2025年にかけて取引規模は数十億ドル単位まで拡大しました。
多様なマーケット:政治・スポーツ・テック
政治分野では各国選挙の勝敗や政権交代、法案成立の可否、著名政治家の進退などが恒常的な人気テーマです。2024年米大統領選では「誰が勝つか」「どの州をどちらが制するか」といった細分化された市場が乱立し、投票日までに累計で約36億ドル(約3.6兆円)が取引されたと報じられています。
経済・金融領域では、FOMCでの利上げ・利下げ幅、インフレ指標の水準、失業率やGDP成長率などマクロ指標に加え、「特定銘柄が期日までに株価○ドルを超えるか」「四半期決算でコンセンサス予想を上回るか」といった個別銘柄イベントも対象になります。スポーツではNBAやNFLなど主要リーグの試合結果や優勝チーム、テニスやF1、サッカー国際大会の勝者が日々取引されています。
テクノロジーや暗号資産分野では、「ビットコインが年末までに○万ドルに到達するか」「特定L2のTVLが期日までに×億ドルを超えるか」など、クリプト投資家の関心に直結する市場が多く、AIでは「OpenAIやGoogleがいつどの機能をリリースするか」といった技術ロードマップに関する予測も人気です。ニュース性の高いトピックが出るたびに「Breaking」カテゴリで新市場が追加されるため、プラットフォーム全体として高いリアルタイム性を維持しています。
取引量とユーザーの拡大
データプロバイダーや業界メディアの集計によれば、2024年に入ってからPolymarketの月間出来高とアクティブユーザー数は急増し、2024年11月の米大統領選シーズンで一度ピークに達した後、2025年にかけて再び過去最高を更新しました。2025年11月には単月出来高が約37億ドルとなり、前月の約30億ドルから23.8%増の過去最高を記録しています。
同時期にCFTC登録の予測市場Kalshiも約58億ドルの月間出来高を記録しており、両社合計で月間100億ドル規模のイベント先物フローを形成したとされています。2025年秋時点で両プラットフォームが世界の予測市場流動性の大半を占めていると指摘されており、Polymarketはそのうち暗号資産ベースの最大プレイヤーとして位置付けられます。
ウォッシュトレード問題と出来高の質
一方で、報告される取引量の一部はウォッシュトレード(自己売買)によって水増しされているとの研究結果も出ています。2025年11月に公表されたコロンビア大学の論文では、Polymarketの全取引履歴をネットワーク分析した結果、過去3年間の出来高の平均約25%が同一グループ内での売買に起因すると推計されました。
同研究によれば、ウォッシュトレード比率は時期により大きく変動しており、2024年12月には週次ベースで約60%に達した一方、2025年5月には約5%程度まで低下したとされています。2025年10月には再び20%程度に上昇した兆候もあるものの、全期間をならすと市場全体は依然として数十億ドル規模の「実需」に支えられていると解釈されています。運営側もアカウント監視やルール変更によって不自然な取引パターンの抑制を進めているとされますが、出来高を額面どおり受け取るのではなく、ボリューム指標の質に注意を払う必要があります。
運営主体・資本構成:スタートアップからデカコーンへ
Polymarketはニューヨークを拠点とするBlockratize, Inc.によって運営され、創業から数年で評価額数十億ドル規模の企業へと成長しました。
創業者シェイン・コープランと組織体制
創業者であり現CEOのShayne Coplan氏は、大学を中退して2018年前後から予測市場プロジェクトの構想を進め、2020年にPolymarketをローンチしました。オフィスはマンハッタンに所在し、エンジニアリング・コンプライアンス・マーケット運営の各チームを社内に抱えるスタートアップ型の組織です。2022年には米商品先物取引委員会(CFTC)の元委員長J. Christopher Giancarlo氏がアドバイザリーボード議長に就任するなど、規制当局OBや選挙予測の専門家Nate Silver氏を顧問に迎え、制度対応と市場設計の両面で知見を取り込んできました。
資金調達とICEによる戦略投資
資本面では、2024年のシリーズA/Bラウンドでイーサリアム共同創業者Vitalik Buterin氏やピーター・ティール氏のFounders Fundなどから累計約7,000万ドルを調達し、クリプト業界内での期待値を一気に高めました。
2025年には、ニューヨーク証券取引所(NYSE)の親会社であるIntercontinental Exchange(ICE)が最大20億ドル規模の戦略的投資を行い、Polymarketのバリュエーションは概ね80〜100億ドルレンジに達したと報じられています。ICEは既存のデリバティブ取引所運営ノウハウを持つため、Polymarketにとっては伝統金融との橋渡し役となりうる株主です。さらに、トランプ前大統領の息子が率いる1789 Capitalも出資し、米保守系ネットワークとの関係性も強めています。
顧問陣と政治的ネットワーク
前述のGiancarlo氏やSilver氏に加え、政治家一家の関係者がアドバイザーに名を連ねることで、Polymarketは規制当局や政界とのパイプを強めています。2025年には、テレビ番組「60 Minutes」でCoplan氏が「現時点で人類が持つなかで最も正確な予測ツールだ」と述べた発言が引用され、予測市場の社会的ポジションについての議論を喚起しました。
法規制:制裁から米国市場への回帰まで
Polymarketは創業当初から各国のギャンブル・デリバティブ規制の網にかかり、制裁とサービス制限を受けつつも、2025年には米連邦規制下での再ローンチに道筋を付けました。
2022年CFTC制裁と米国内ブロッキング
2022年1月、CFTCはPolymarketを運営するBlockratizeに対し、未登録のイベントベース二項オプション(スワップ)市場を提供していたとして、140万ドルの民事制裁金と一部市場の停止命令(Cease-and-Desist)を科しました。この和解を受けてPolymarketは米居住者のアクセスをブロックし、実質的に米国外向けサービスとして運営を継続することになります。
その後も、2024年米大統領選を巡って米司法省(DOJ)やCFTCがPolymarketの米国ユーザーへの提供状況を調査し、FBIが創業者宅を家宅捜索したと報じられるなど、当局の目は厳しい状況が続きましたが、最終的には重大な刑事訴追には至っていません。
CFTCイベント契約ルールと政治市場
CFTCは2024年に、政治選挙や特定の公的政策に関するイベント契約を「公益に反する」として禁止する方向性のルール改正案を公表し、パブリックコメントを実施しました。一方、競合のKalshiは議会支配政党に関するコントラクト上場を巡りCFTCと訴訟で争い、2024年10月の連邦控訴裁判所判決でKalshi側が勝訴したことで、選挙関連契約の是非を巡る法的線引きは揺れています。
このため、今後のPolymarket US(米国内向けサービス)では、政治選挙を避けた経済指標・天候・スポーツなどに対象を限定しつつ、オフショア版では引き続き政治市場を提供する「二本立て戦略」が現実的選択肢とみられます。
QCEX買収と米国再ローンチ
転機となったのは、PolymarketがCFTC認可済みのデリバティブ取引所・清算機関であるQCEXを約1億1,200万ドルで買収し、そのインフラ上で米国向けサービスを立ち上げる計画を打ち出したことです。2025年9月、CFTCはQCEXに関する指定変更命令とノーアクションレターを発出し、Polymarketが米国内で合法的にイベント契約を提供できる枠組みを認めました。
投資家向けには、ブローカー(証券会社・FCM)経由でPolymarketのコントラクトにアクセスする形が想定されており、取引所としてのPolymarketは記録・報告義務や市場監視体制の強化が求められます。一方、EUや東南アジアの一部では違法ギャンブルサイトとしてブロッキング対象とされるケースも出ており、グローバルに見ると規制環境は依然としてモザイク状です。
競合との比較:Augur・PredictIt・Kalshi
他の予測市場と比較すると、PolymarketはUXと流動性、テーマの幅の広さで優位に立つ一方、完全分散型や学術目的のプラットフォームとは性格が大きく異なります。
Augurなど完全分散型プロトコルとの対比
AugurはEthereum上に構築された初期の分散型予測市場で、独自トークンREPを用いたオラクルにより市場決着を行う、極めて非中央集権的な設計でした。しかし誰でも市場を作成できるため不適切なテーマが乱立し、Ethereum L1の高いガス代やUIの複雑さも相まって、ローンチ後まもなく日次アクティブユーザー数は急減したと報告されています。
これに対しPolymarketは、
(1) Polygon上での低コスト決済、
(2) 運営側による市場のキュレーション、
(3) USDC建てでわかりやすいP/Lという実用重視の設計を採用し、一般ユーザーでもストレスなく取引できるUI/UXを優先しました。その結果、理想的な分散性では劣るものの、実際の流動性とユーザーベースでは大きく先行しています。
PredictIt:研究目的から商業化への移行
ニュージーランドのVictoria大学が運営するPredictItは、2014年にCFTCのノーアクションレターを得て「学術研究目的」の政治予測市場として始まりました。1人あたりのベット上限が数百ドル程度に制限されていたこともあり、流動性は限定的で、米国内の政治好き個人が少額参加する性格が強い市場です。
2022年にはCFTCがノーアクションレターを撤回し、訴訟を経て2025年9月にPredictIt側が勝訴、同年CFTCからDCM・DCOとしての正式認可を得るなど制度的な転換点を迎えましたが、グローバルなテーマの広さや出来高の面ではPolymarketとは別カテゴリーといえます。
Kalshi:CFTC登録イベント先物取引所
KalshiはCFTC登録のDesignated Contract Market(DCM)として2021年に正式承認を受けたイベント先物取引所で、米連邦法の枠内で各種指標やスポーツなどのイベントコントラクトを上場しています。2025年11月の月間出来高は約58億ドルで、Polymarketの約37億ドルを上回る規模に達しましたが、対象イベントは規制上の制約により政治選挙などに制限が残ります。
KalshiはNevada州など一部州のギャンブル規制当局と「商品デリバティブ vs 州賭博法」の管轄争いを抱えており、連邦でのCFTC承認を得つつも、州レベルではスポーツ賭博とみなされるリスクが顕在化しています。PolymarketがICE資本とQCEXライセンスをテコにKalshi型の合法路線へ寄せる一方、Kalshiは州との法廷闘争を抱えるという、興味深いねじれ図が生じています。
その他プラットフォームとPolymarketの優位性
Gnosis/OmenやZeitgeist、Manifold Marketsなど、暗号資産・ポイント制を用いた予測市場も複数存在しますが、ユーザー数と出来高の面でPolymarketに大きく劣るのが現状です。また英国のBetfairのような中央集権型ベッティング取引所は長い歴史を持つものの、地域規制の制約からアクセス可能な投資家層が限定されます。
結果として、Polymarketは「暗号資産ベースで国境を越えた参加が容易」「常時1万件規模の多様なマーケット」「板取引による高い流動性」という点で競合と差別化しており、予測市場セクターの中で独自のポジションを確立していると評価できます。
関連:Polymarket(ポリマーケット)予測市場総覧:ICE出資と米再参入
社会的評価と残る論点
Polymarketは「集合知による最も精度の高い予測ツール」と持ち上げられる一方で、「富裕層がオッズを操作し、民主主義や倫理に悪影響を及ぼす」とする批判も根強く、評価は二極化しています。
メディア・プラットフォームからの評価
2024年米大統領選以降、主要メディアは世論調査に代わる指標としてPolymarketやKalshiのオッズを引用するようになりました。2025年には米CBSの「60 Minutes」がPolymarketを取り上げ、Coplan氏が「人類にとって今ある中で最も正確な予測手段」と語った場面が広く拡散されています。
またGoogleやYahoo!ファイナンスがKalshi・Polymarketのデータ統合を進めていると報じられており、イベントオッズが株価チャートやニュースと並んで表示されるケースも増えています。こうした動きは、予測市場が「オルタナティブデータ」として金融市場に取り込まれつつあることを示しています。
倫理・民主主義への影響
一方で、遭難した潜水艇の捜索や災害、テロなど人命に関わる事象を賭けの対象にすることへの倫理的な批判も強く、Mother Jonesや各種オピニオン誌は「悲劇で利益を得るギャンブラー」を象徴的に取り上げています。
2025年11月には、ニューヨーク市長選のオッズがPolymarketやKalshiからタイムズスクエアの巨大ビジョンに表示され、「候補A当選確率94%」といった数字がリアルタイムで街頭に流れたことが話題になりました。こうした「予測結果の可視化」が有権者心理や投票行動に影響を与えた可能性が指摘され、「1人1票」ではなく「1ドルが世論を動かす」新たなプロパガンダ手段になりかねないとの懸念が示されています。
投資家から見た位置付け
投資家にとってPolymarketは、(1) 純粋な収益機会(イベントベット)、(2) マクロ・企業イベントのセンチメント指標、(3) 将来的な上場やトークン配布への期待、という複数の側面を持つ存在です。ウォッシュトレードなど出来高の質の問題や、各国規制によるサービス停止リスク、倫理的な批判がある一方、集合知の予測精度が従来の調査手法を上回るケースも多く報告されています。
この二面性をどう評価するかは、投資家のリスク許容度と、予測市場が社会にもたらす便益と負の外部性をどう捉えるかに大きく依存します。
▽ FAQ
Q. Polymarketはいつ創業され、どこに拠点がありますか?
A. Polymarketは2020年にニューヨークで創業され、マンハッタンのオフィスからPolygon上のUSDC予測市場を運営しています。
Q. Polymarketにはどのようなイベントの市場がありますか?
A. 米大統領選やFRB利下げ、NBA優勝、AI機能のリリース時期など、政治・経済・スポーツ・テックまで数千〜1万件超の市場が常時稼働しています。
Q. 取引規模はどの程度で、どのくらい成長していますか?
A. 2024年米大統領選では累計約36億ドル、2025年11月には月間約37億ドルと過去最高を記録し、Kalshiと合わせ予測市場フローの大半を占めています。
Q. 規制面でのリスクはどのようなものがありますか?
A. 2022年にCFTCから140万ドルの制裁と市場停止命令を受けたほか、欧州やアジアの一部で違法賭博とみなされアクセス遮断されるなど、各国規制当局との摩擦が続いてきました。
Q. 出来高の信頼性について指摘されている点はありますか?
A. コロンビア大学の研究では過去3年の平均で約25%、2024年12月には週次で約60%がウォッシュトレードだった可能性が示されており、ボリューム指標の質に注意が必要です。
■ ニュース解説
Polymarketは、USDCとPolygonを用いた暗号資産ベースの予測市場として短期間で数十億ドル規模の出来高を集め、2024年米大統領選や2025年のマクロイベントを通じてKalshiとともにイベントデリバティブ市場の中核プレイヤーとなりました。一方で、CFTCによる140万ドルの制裁や各国でのアクセス遮断、ウォッシュトレード比率の高さを指摘する研究など、市場インフラとしての信頼性と規制リスクは依然として大きな論点です。
CFTCはイベント契約ルールの改正案を通じて政治選挙を巡るデリバティブに慎重姿勢を示しつつも、QCEX買収を経たPolymarketの米国再ローンチを承認するなど、予測市場を完全に排除するのではなく制度の枠組みに取り込む方向へ舵を切りつつあります。Kalshiが選挙契約訴訟で一定の勝利を収め、Nevada州ではスポーツ賭博として扱われるなど、連邦と州、そして暗号資産ベースのオフショア市場が複雑に交錯することで、今後の規制地図はなお流動的です。
投資家の視点:
投資家がPolymarketをどう位置付けるかを考える際には、少なくとも次の点を整理する必要があります。第一に、個別イベントへのベットは本質的にハイリスク・ハイボラティリティであり、レバレッジ商品やオプション取引と同様に「失ってもよい資金」に限定すべき領域だという点です。第二に、価格やオッズそのものはセンチメント指標として有用である一方、ウォッシュトレードや大口プレイヤーによる一時的なオッズ歪みを内包しているため、「市場の予測=真実」と短絡しない慎重さが求められます。第三に、米国や各国での規制方針が今後変化する可能性が高く、特に政治・社会的にセンシティブなテーマについては、突然の市場閉鎖や精算条件変更が発生しうることを織り込むべきです。
こうした要素を踏まえると、Polymarketはポートフォリオのコア資産とするよりも、マクロイベントのセンチメントを観測する補助指標、あるいはごく限定されたリスク・バジェット内でのサテライト的な投機機会として位置付けるのが現実的と考えられます。長期的には、規制と倫理の枠組みが整えば、予測市場データが政策決定や企業経営における一つのインプットとして定着する可能性もありますが、その過程では市場インフラとしての健全性と、民主主義や公共性への影響について継続的な検証が必要です。
※本稿は一般的な情報提供を目的としており、特定銘柄・金融商品の売買を推奨するものではなく、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。





