▽ 要約
ローンチ:100超の米株・ETFをオンチェーン化。
規制:米国外向け提供、米国は対象外。
メリット:24/5ミント・償還と低い価格乖離。
リスク:議決権なし、規制/信用/技術に注意。
米国外投資家向けに米株・ETFをトークン化する「Ondo Global Markets」が始動し、オンチェーンでの株式アクセスが現実になった。Ondo 株式トークンは裏付け資産を保持しつつ即時ミント/償還と自由な移転を可能にし、伝統市場の利便性を拡張する。一方で議決権はなく、地域・規制要件やカウンターパーティ等のリスク理解が前提だ。本稿では仕組み、規制、メリット/リスク、市場動向まで解説する。
基本の仕組みと構造
株式・ETFを証券ブローカー経由で取得し保管したうえで、1株相当の経済価値に連動するERC-20トークンを発行するため、オンチェーンでの利便性と現物裏付けを両立した。
OndoのGlobal Marketsは、米国登録ブローカーを通じて対象証券を取得し、規制下の口座に分別保管する。投資家はUSDon(1:1ドル連動のプラットフォーム内ステーブル)でトークンを即時ミント/償還し、受け取ったトークンは任意の対応ウォレットやスマートコントラクトで24/7保有・移転できる。トークンは総称して「onAAPL」などの表記が用いられ、端株単位の取得にも対応する。配当は再投資され、株式分割等のコーポレートアクションは数量や価格へ反映される。
価格形成(ミント/償還と乖離最小化)
ミント/償還を原資産の市場時間に連動させたため、NAVとオンチェーン価格の裁定が働きやすく乖離は抑制される。
ミント/償還は24/5で即時実行され、価格は基礎株価に連動する設計。セッション間の短時間停止や夜間流動性の変動など運用上の注意点はあるが、裁定機会が機能しやすい構造だ。
権利の範囲と投資家保護
経済的価値のエクスポージャーに限定され議決権は付与されない一方、裏付け資産の分別管理や報告体制が整備される。
株主総会投票や議決権は対象外で、トータルリターン連動商品として設計される。他方、保有・報告・ミント/償還手順は文書化され、投資家保護の透明性が重視されている。
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法規制と各国の対応
米国は安定通貨の包括法整備が進む一方で、株式トークン自体は現行法上の証券該当性が高いため、当面は米国外提供が中心となる。
米国では2025年7月にGENIUS Actが成立し決済型ステーブルコインの連邦枠組みが整備された。他方、株式トークンは証券規制の対象となる余地が大きく、Ondoは非米国向け提供と適法な仲介を基本にする。英国など一部法域はプロ投資家要件等の制限付きでの提供、日本はFIEA上の電子記録移転権利に該当しうるため国内公募には第一種業の枠組みが必要だ。
Oasis Pro買収と米国内インフラ
SEC登録のブローカーディーラー/ATS/TAの取得で、将来的な米国内展開の制度基盤を段階的に整える狙いが明確になった。
2025年7月にOndoは米証券会社Oasis Proの買収を発表し、コンプライアンス主導の展開姿勢を示した。これは米国内での適法なトークン証券取扱いに向けた重要な布石となる。
日本の位置づけ
日本ではST(電子記録移転権利)の枠組みが整備済みだが、株式トークンの公募・販売には高い規制遵守が求められるため、当面は国外提供品の直接勧誘は想定しにくい。
適格投資家向けの活用や、国内STO市場との制度整合が鍵となる。
投資メリット
伝統市場の流動性を活かしつつ24/5のミント/償還と24/7移転が可能なため、時間・地理・資金量の制約を下げた。
端株対応で少額分散が容易になり、USDon/USDCを介したオンチェーン決済でグローバル参加障壁を低減。自由な移転性により、担保・貸借・自動化運用などDeFi連携の拡張余地も広い。保有資産や手続の可視化により透明性が高い点も利点だ。
投資リスク
規制・信用・市場・技術の多面的リスクが残るため、法域・相手方・運用環境の変化に常時注意が必要だ。
規制変更や地域制限の強化、ブローカー/カストディの倒産等の信用事象、基礎資産の急変や取引停止、コントラクト/ブリッジの脆弱性、週末ニュース時の流動性低下などは想定すべき。議決権がない点や配当再投資の扱いも商品特性として理解が必要だ。
裏付け資産とラインナップ
当初はAAPL、TSLA、NVDAなどの大型株やQQQ・SPY等のETFを含む100超から開始し、年内に1,000超への拡大を計画する。
現時点の対象はNYSE/NASDAQ銘柄が中心で、固定所得ETF(TLT, TIP, AGG等)も含む。今後は対象の広域化・多層化が想定される。
DeFiおよびRWAとの関連性
自由移転を前提とした設計のため、レンディングやアグリゲータ等での組み込み余地が広く、RWAのユースケース拡張に寄与する。
Global Markets Allianceを通じ、ウォレット/カストディ/アグリゲータ等と標準化・相互運用の連携を進める。OndoはRWAインフラのハブ化を志向し、既存の国債連動トークン群とも補完関係を構築する。
今後の展望とロードマップ
自社L1「Ondo Chain」と多チェーン展開、プライムブローカレッジ的機能、オンチェーン運用の自動化など、資本市場のフルスタック化を進める。
Ondo Chainは公開チェーンの開放性と許可型の順守性を両立させる思想で、トークン化証券の規模運用に必要な機能拡張を計画。LayerZero等の相互運用基盤と併用し、マルチチェーンで同一資産を扱える体験を目指す。
取引市場と流動性(どこで取引できるか)
CEX/ウォレット/DEXアグリゲータ各所でサポートが広がり、オン/オフチェーン双方からアクセス可能なエコシステムが形成されつつある。
BitgetやGate等のCEX統合、Trust/OKX/Rainbow/Bitget Wallet等の対応、1inchやCoW Protocolなどのアグリゲーション接続が進む。ミント/償還で理論流動性は担保されるが、夜間や週末は板厚・スプレッドの点検が必要だ。
トークン価格動向と市場の反応
ローンチ直後はONDOが数%上昇するなど好意的反応が見られ、RWAテーマの資金流入も追い風となった。
市場は「期待先行だが本格的な板の厚みはこれから」という段階。取扱拡大、制度整備、提携ニュースが短期の価格変動要因となりやすい。
共有された4つのX投稿の要点
サービス開始宣言・モデル比較・Bitget提携・Oasis Pro買収の4類型の投稿は、技術・市場・規制の三正面作戦を示す。
①「Wall Street 2.0」ローンチ告知:非米国向けに100超の株式/ETF提供開始と年内拡大計画。
②「Not all tokenized equities…」比較スレ:流動性/移転自由/裁定設計の優位点を強調。
③Bitget提携:取引所・ウォレット統合で導線拡大。
④Oasis Pro買収:米規制準拠エコシステム構築の意思表明。
▽ FAQ
Q. Ondo Global Marketsの公開日は?
A. 2025年9月3日。非米国向けに100超の米国株・ETFを提供開始。
Q. 米国や英国の居住者は利用できる?
A. 米国は不可。英国などはプロ投資家等の条件下で利用可。
Q. 取引時間は?土日も可能?
A. ミント/償還は24/5で、原資産セッションに連動。オンチェーン移転は24/7。
Q. 最小投資額と通貨は?
A. 最小1ドル。USDon/USDC経由での即時決済に対応。
Q. 配当はどう反映?議決権はある?
A. 配当は再投資で価格反映。議決権は付与されない。
■ ニュース解説
ローンチ(2025-09-03)で非米国向けに株式トークン提供が始まり、Oasis Pro買収やGENIUS法成立の追い風がある一方で、地域・投資家適格や権利制限が残るため、拡大には段階的な制度対応が要る。
投資家の視点:短期は取扱銘柄拡大・パートナー連携・規制ニュースが価格/流動性の主因。運用ではミント/償還時間帯と夜間スプレッド、地域制限/KYC、保管・ブリッジの運用リスクを明確化し、分散・サイズ管理・シナリオ別の換金計画を持つ。
※本稿は投資助言ではありません。
(参考:Ondo Finance Docs)