ノルウェー政府年金基金 ビットコイン192%増の中身

▽ 要約

実績:2025年6月末に7,161BTC、前年比192%増。
要因:MSTR+3,005BTC、MARA等も増勢。
背景:インデックス運用の結果、受動的に増加。
危惧:倫理監視強化や価格急落で縮小懸念。

ノルウェー政府年金基金グローバル(GPFG)のビットコイン間接エクスポージャーが前年比192%増という見出しは、何がどれだけ増えたのか、そして方針転換なのかという疑問を呼ぶ。結論は「受動的要因で、銘柄別寄与が鮮明」。本稿はノルウェー政府年金基金 ビットコイン 192%増の真因を、投資先別の寄与、推移、規制・運用方針の整合で読み解く。K33の一次資料を軸に、他の公的年金やETF動向も併せて解説する。

投資先とETFの実像—どの銘柄が押し上げたか

NBIMの間接BTCは企業株式の保有を通じて生じ、2025年上半期の増分3,340 BTCの大半はMicroStrategyの積み増しとNBIMの持株比率上昇のため、銘柄要因が支配的となった。
K33のブレークダウンでは、MicroStrategy(MSTR)が+3,005.5 BTCで圧倒的な寄与。NBIMは2024年末の0.72%保有から2025年上半期末に1.05%へと持株比率を高め、同社のBTC積増し(H1で+145,945 BTC)が相乗した。Marathon Digitalが+216.4 BTC、Blockが+85.1 BTC、Coinbaseが+57.2 BTC、Metaplanetが+50.8 BTCで続く。テスラ、GameStop、Mercado Libre、Virtu、WeMade等は一社当たり35 BTC未満の小口寄与にとどまる。

MicroStrategy(MSTR)

MSTRは企業保有BTCの筆頭であり、2025年上半期の大量取得がNBIMの間接BTC増分の主因となった。NBIMのMSTR保有比率上昇と同社のBTC買い増しが同時進行したため、寄与が突出した。

Marathon/Block/Coinbase/Metaplanet

マイナー(MARA)、企業財務でBTCを保有するBlock、暗号資産取引所Coinbase、日本のMetaplanetが順に寄与した。一方でRiot等の一部はマイナス寄与も見られた。これは事業環境・株価の差が反映されたためだ。

現物ETF(IBITなど)

2024年1月の米SEC承認で現物ビットコインETFが上場し(例:BlackRockのIBIT)、伝統市場経由のアクセス性が飛躍的に向上した。これが関連株と市場流動性を底上げし、間接保有の評価額増に追い風となった。

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規模と推移—2020〜2025の拡大プロファイル

2025年6月末の間接保有は7,161 BTC(約8.44億ドル)で、2024年末3,821 BTCから半年で+3,340 BTC、前年比+192%へ加速した。推移は2020年796 BTC→2024年末3,821 BTC→2025年6月末7,161 BTCと一貫拡大した。
1人当たりの間接保有は、2024年半ばで約27ドル、2024年末で約68,837サトシ(約64ドル)に達した。価格上昇を踏まえると2025年半ばは100〜150ドル規模と推定される。

価格環境の追い風

BTCは2024年末に10万ドル台へ乗せ、2025年7月には12万ドルを初突破したため、BTC保有企業株やETFに資金が流入し評価額が押し上がった。

背景と方針—「能動」ではなく「受動」の増加

NBIMは世界約1.5%の上場株を保有し、幅広いインデックス運用を基本とするため、BTC保有企業を含む市場全体への配分が結果として間接BTCを生んだ。一方で直接買い入れは否定的で、倫理監視は強化されている。
2024年は米大型テック株の伸長で基金は過去最高益2,220億ドル、2025年は四半期ベースで変動しつつも市場連動で推移。BTC連動の一部収益はこの文脈で理解すべきだ。

「方針転換ではない」根拠

タンゲンCEOは2025年1月のダボスで「暗号資産は戦略外」と表明しており、増加はインデックス配分の帰結に過ぎない。

倫理・ガバナンス

倫理委員会は2025年に向け暗号資産企業やギャンブル企業等の監視を強化。重大事案発生時は個別除外の可能性がある。

過去との比較と波及—「誤差」から「無視できない規模」へ

2020年は評価額2,300万ドル規模だった間接保有が、2024年末に約3.56億ドル、2025年半ばに約8億ドル台へ拡大したため、構造的な存在感が生じた。一方で総資産約1.8兆ドルに対する比率は依然0.05%前後である。
韓国の国民年金公団(NPS)は2024年8月、MicroStrategy株を約3,375万ドル取得し、間接BTC投資に踏み出した。GPFGの事例は他機関の参照点となり、ETF等の直接商品への移行議論も促す。

市場インパクト

GPFGは現物を買っていないため需給への直接影響は限定的だが、「最大級の機関が事実上BTCに触れている」というシグナルは投資家心理に作用し、ETF資金流入と相まって市場の制度化を後押しした。

▽ FAQ

Q. GPFGの間接BTCは本当に前年比192%増?
A. 2025年6月末で7,161 BTC、前年同月比+192%がK33分析で確認される。

Q. 2025年上半期の最大寄与銘柄は?
A. MicroStrategyが+3,005.5 BTCで最大、MARA+216.4 BTCが続いた。

Q. 直接保有の可能性は?
A. 2025年1月にNBIMのタンゲン氏が「戦略外」と表明し、当面は見込み薄。

Q. 1人当たりの間接保有額は?
A. 2024年末で68,837サトシ(約64ドル)。2025年半ばは100~150ドルと推計。

Q. ETFは寄与した?
A. 2024年1月のSEC承認でIBIT等が上場、機関の参入と流動性向上を促した。

■ ニュース解説

GPFGの間接BTCは2025年6月末に7,161 BTCへ拡大したため、前年比192%増という大幅伸長となった一方で、要因はMSTR等の銘柄寄与と価格環境の好転であり、基金の能動的な方針変更は確認されない。
投資家の視点:指数連動・分散投資の大規模プレイヤーでも、企業財務のBTC保有や現物ETFを介し間接エクスポージャーが生まれる。ポートフォリオ全体の相関、規制・倫理リスク、価格変動耐性を前提に、直接・間接の配分とヘッジ(現物ETF/先物/現金同等物)の設計を再点検したい。

※本稿は投資助言ではありません。

(参考:K33 Research,U.S. SEC