トランプ大型減税法案OBBBAの全貌

▽ 要約

エコノミー:個人・法人減税を恒久化し約4.5兆ドルの景気刺激。
財政:CBOは10年で最大3兆ドルの赤字拡大を警告。
仮想通貨:600ドル以下の決済益は非課税、マイニング課税は売却時へ。
市場:株高の一方で国債利回り上昇、BTCは年初来高値更新。

トランプ大型減税法案が下院をかろうじて通過し、米国経済はどう変わるのか──。結論から言えば、税負担は軽くなるが財政赤字は膨張し、仮想通貨にも新ルールが波及する。本記事では法案の要点と影響を整理し、投資家・企業・読者が取るべき対応を提示する。

OBBBAとは何か

OBBBAは“減税恒久化+歳出拡大”を一括で進める約900ページの包括法。
正式名称は「One Big Beautiful Bill Act」。2017年TCJAの個人減税を恒久化し、法人向け即時償却を復活。国防費や国境警備費も増額する。

減税メニューの全体像

個人・法人・富裕層の全方位減税。
個人は税率引き下げと控除拡大、チップ・残業代非課税。法人は21%維持と全額償却。相続税の生涯免除枠は1,500万ドルへ。

財源と社会保障削減

赤字穴埋めは債務上限引き上げ+福祉カット。
:債務枠を最大5兆ドル拡大し、メディケイドやSNAPに就労要件を追加。CBOは10年間で約3兆ドルの追加赤字を試算。

仮想通貨課税の新ルール

日常決済とマイニングに追い風、短期取引には逆風。
600ドル以下の売却益非課税。マイニング報酬は売却まで課税繰延べ。ウォッシュセール規制が適用され、30日以内の損出しは控除不可となる。

市場・業界リアクション

商工会議所などは支持。一方で太陽光・EV業界は雇用10万人減を懸念。国債利回りは財政悪化観測で上昇。

上院審議と成立確率

50対50のタイ決定で可決、再び下院へ。
JDバンス副大統領の賛成票で上院通過。7月4日までに下院が修正版を承認すれば法案は成立し、即日署名される見込み。

海外・投資家の視点

送金税は移民送金と中南米経済に逆風、暗号資産送金が代替手段に。
メキシコ政府は5%送金税(上院修正後1%)に抗議。ドル安・金高・BTC高という“価値逃避”が進むとの指摘もある。

▽ FAQ

Q. OBBBAで個人の税金は下がる?
A. 2025年で切れる減税が恒久化。所得税率が平均2%下がり、チップ・残業代は非課税となる。

Q. 仮想通貨トレーダーは不利になる?
A. ウォッシュセール規制により損失計上が制限。一方で600ドル以下の決済益は非課税となる。

Q. 財政赤字への影響は?
A. CBOは10年間で最大3兆ドルの赤字増と試算。長期金利上昇と格下げリスクが指摘される。

Q. 送金税は誰が負担?
A. 上院修正で税率1%、現金送金のみ対象。移民労働者の本国送金コストが上がる。

Q. 上院可決後の手続きは?
A. 下院が修正案を再採決し大統領が署名すれば即日発効。目標期限は2025年7月4日。

■ ニュース解説

本法案は減税と支出拡大を同時に進めるため短期景気にはプラス。ただし財政赤字の恒常化と社会保障の切り下げで格差拡大が懸念される。仮想通貨には税制明確化という恩恵と、損出し規制という制約が同時に訪れる。市場は「経済刺激」と「財政悪化」の綱引きで変動が続きそうだ。

(出典:CBO速報値,米下院議事録,nli-research,crypto)