▽要約
エコノミー効果:恒久減税で民間投資が加速
福祉削減:メディケイド就労要件で受給者減
国境強化:壁建設・ICE増員で送還促進
AI規制凍結:州独自の法整備を10年停止
「ワン・ビッグ・ビューティフル・ビル法案は、減税と歳出削減・国境強化を一括で実現する巨大パッケージだ」。——そんな見出しが世界を駆け巡りました。本記事では、法案成立までの経緯と主要条項、賛否双方の論点を整理します。読むことで、米国経済・社会・技術政策の今後を俯瞰できます。
成立までの経緯
共和党は予算調整ルールを駆使し、わずか2か月半で歴史的法案を通過させた。
2025年5月に下院へ提出→5月22日に可決(賛成215 対 214)。上院では7月1日に副大統領決裁で折半突破。独立記念日(7月4日)の大統領署名で発効にこぎ着けた。
下院での綱渡り
造反した保守強硬派5人を、メディケイド削減強化と州特例で取り込み逆転可決。
上院の50 対 50
ムルコウスキー議員の地元特例が鍵。予算調整によりフィリバスターは無効化。
税制改革
2017年減税の恒久化が核心で、10年間3.7兆ドルの歳入減に。
個人・法人向け恒久減税
相続税基礎控除倍増、標準控除拡大、199A控除率23%へ上昇。
設備投資100%償却の復活で製造業支援(出典:議会審議記録)。
新規減税と一部巻き戻し
チップ&残業代非課税(2028年期限)、自動車ローン金利控除。
EV購入税控除などグリーン優遇は段階撤廃。
社会保障・福祉改革
就労要件の拡大と州負担増で、低所得層へ大きな影響。
メディケイド
働ける成人に就労義務。州独自財源スキームも制限、1,180万人が保険喪失の恐れ。
SNAP
就労義務を65歳未満まで拡大。扶養児童例外7歳未満。州の除外裁量1%へ縮小。不正率に応じ最大25%州負担。
国防・移民・国境安全
壁建設470億ドルとICE大幅増員で強制送還を本格化。
資金配分
壁・監視網・拘留施設に計920億ドル超。テキサス州警備の連邦補填120億ドル。
法的措置
不法移民のレミッタンス課税、亡命審査厳格化、刑罰強化。
エネルギー・環境政策
化石燃料優遇へ大胆転換、メタン税撤廃で業界は喝采。
リース再開と許認可簡素化
連邦土地の石油・ガス開発を再開。環境レビュー短縮で新パイプラインを迅速化。
H3 気候対策の縮小
IRA由来の再エネ補助を軒並み凍結。石炭・ガス発電所の規制緩和で脱炭素は後退。
科学技術・規制条項
州によるAI規制を10年間凍結し、連邦主導の技術競争を優先。
AIモラトリアム
「自動意思決定システム」規制を2035年まで禁止。産業界は歓迎、州と市民団体は違憲訴訟を準備。
CFPBと銃規制
CFPB予算をFRB12%→5%へ削減。サプレッサーのNFA除外で銃規制を緩和。
▽ FAQ
Q. 法案はいつ成立した?
A. 2025年7月4日、独立記念日に大統領署名で発効。
Q. 恒久化された減税の代表例は?
A. 個人所得税率引き下げと相続税基礎控除倍増が代表的。
Q. 福祉削減で最も影響を受ける制度は?
A. メディケイドの就労要件強化が最大の対象拡大。
Q. AI条項はどこが画期的?
A. 州・地方のAI規制を全国一律で10年間停止する点。
■ ニュース解説
野党は「One Big Bad Bill」と批判し、中間選挙の争点化は必至。国内総生産(GDP)は短期押上げの可能性がある一方、社会保障削減が地域経済を冷やすリスクも残る。財政赤字拡大と利上げ圧力をどう抑えるかが今後の焦点だ。
(出典:gigazine,whitehouse,afpbb,bloomberg)