Bullish(BLSH)IPO 初値90ドルの背景

▽ 要約

初値90ドル:公募37ドル比+143%の異例の寄り付き。
需給逼迫:3,000万株に増額し需給強化、出来高は約3,800万株。
制度追い風:GENIUS法成立で規制明確化、機関マネー流入。
市場波及:CircleやFigmaの成功でIPO地合い改善、後続案件に弾み。

暗号資産関連の上場は本当に「一過性の熱狂」なのか──Bullish IPO 初値90ドルという象徴的な出来事は、その疑問に数字で答えつつある。公募37ドルから+143%の跳ね上がりは、機関投資家の強い需要と政策環境の改善を映す。本文では、同社の実像、初値形成のメカニズム、規制・需給の背景、市場への波及とリスクを解説する。

IPOの事実関係(数字で読むBLSH)

初値90ドル・高値118ドルとなったため、発行価格37ドルベースの評価は一気に織り上がり、一時の時価総額は約130億ドルに達した。
公募は3,000万株で、想定28〜31ドル→32〜33ドルのレンジを経て37ドルに決定した。調達額は約11.1億ドル。主幹事はJPモルガン、ジェフリーズ、シティで、オーバーアロットメント(4,500,000株)の付与が明記された。初値形成後は118ドルまで急騰し、終値はおおむね68〜70ドルで着地した。初日は約3,800万株が売買され、需給の逼迫が顕在化した。

公募条件の変遷と需給

需要の強さを受け公募株数は2,030万株から3,000万株へ増額され、価格もレンジ上方の37ドルで決定されたため、公開直後も買い優位が継続した。
事前のブックで機関投資家の需要が厚く、ブラックロックおよびARKの合計2億ドル規模の購入意向が示されたことで、需給のタイト化がさらに進んだ。公開価格ベースの時価総額は約54億ドルで、控えめとの評価が買い安心感を誘った。

初日の値動きとボラティリティ制御

急騰によりボラティリティ制御(LULD)に基づく売買中断が複数回発動されたため、序盤の上値追いは断続的となり、取引は段階的に再開された。
寄付き90ドル(+143%)後、序盤に100ドル超へ到達し118ドルまで上伸、途中で売買中断(サーキットブレーカー)を挟みつつ推移し、引けは公開価格比で大幅高を維持した。

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急騰の背景(評価・規制・経営)

バリュエーションを控えめに設定し信頼できるスポンサーが支えたため、規制明確化の追い風と相まって機関マネーの買い意欲が一気に顕在化した。
Bullishはピーター・ティール支援、CEOはNYSE元社長のトム・ファーリーで、ガバナンス・規律面の信用補完が働いた。2025年7月には米連邦のステーブルコイン法(GENIUS法)が成立し、同社は調達資金の相当部分をステーブルコインに転換して運用する方針を示した。さらにニューヨーク州のBitLicense取得が最終段階にあり、制度面の見通し改善が評価につながった。

需給とバリュエーションの妥当性

公開時の約54億ドル評価は、同業のマルチプルや直近の強気地合いを踏まえると「入り口の妙味」があると受け止められ、ブラックロックやARKの買い意向が需要の質を底上げした。
需給面では増額実施でもなお初値後に買いが殺到し、出来高膨張と価格スパイクを招いた。初日約3,800万株の出来高は、流通株式の回転率の高さを物語る。

規制の追い風と経営の信認

ステーブルコインの法的枠組みが整備されたため、同社の資金運用計画に一定の予見可能性が生まれ、機関投資家の受容性が高まった。
加えて、NYSE出身の経営陣という「伝統金融の文脈」が大口投資家のデューデリジェンスを通しやすくし、価格決定力を支えた。BitLicense取得が見込めることも、主要金融センターでの営業拡大に直結する。

事業の実像と拡張性(機関投資家×情報資産)

機関投資家特化モデルにCoinDeskのメディア・指数・データを組み合わせたため、収益源の多角化と顧客獲得の相乗効果が見込める。
Bullishは2020年設立、現物・先物・デリバティブを提供し、累計取引高は2025年3月末時点で1.25兆ドル超。2023年にCoinDeskを買収し、ニュース配信に加え指数・データ事業を取り込んだ。価格形成・指数・市場データをワンストップで提供できる体制は、機関投資家の運用プロセスに親和的で、取引所外収益の安定化にも寄与する。

機関投資家特化のメリット

リテール依存度が相対的に低いため、相場循環での出来高ボラティリティを緩和しやすい一方で、取引先の与信・コンプライアンス対応が重視される。
この領域でのオペレーショナル・エクセレンス(約定品質、カストディ、リスク管理)は、料金競争になりにくい差別化要因となる。

メディア/指数のシナジー

メディア露出はブランド資産を強化し、指数・データは商品開発(ETF、先物、ストラクチャード)やベンチマーク提供を通じてフライホイールを形成する。
情報資産と流動性の連関は、機関向けプロダクトのクロスセルを促し、景気後退局面でも耐性を持ちうる。

市場波及と今後の見通し

CircleやFigmaの成功でIPO地合いが改善したため、GalaxyやeToro、Grayscale、Geminiなど後続案件の米市場上場機運が強まり、暗号資産と伝統金融の融合が加速している。
2025年は大型テック・クリプトの上場が相次ぎ、米株式市場のリスク許容度は高水準。実需と規制の明確化が進めば、暗号資産ビジネスは主要指数採用や広範な機関採用を通じて、資本市場の中核に組み込まれていくだろう。一方、初期の価格過熱と流動性収縮局面のドローダウンには備えが必要だ。

▽ FAQ

Q. BullishのIPO条件は?
A. 2025年8月13日NYSE上場、公開価格37ドル、発行3,000万株、主幹事はJPモルガン・ジェフリーズ・シティです。

Q. 初日の値動きはどうだった?
A. 初値90ドル(+143%)、高値118ドル、終値68〜70ドル、出来高は約3,800万株でした。

Q. なぜ初値が急騰したのか?
A. 割安な初期評価と機関投資家の強い需要、GENIUS法成立での規制明確化が重なったためです。

Q. 事業の強みは?
A. 機関投資家特化の取引基盤と、CoinDeskの指数・データ事業を統合した垂直型モデルです。

■ ニュース解説

Bullishが8月13日にNYSEで初値90ドルを付けたため、公開価格37ドル比+143%の大型IPOとなり、規制明確化と需給の強さが評価された。背景にはGENIUS法による制度面の前進と、ブラックロック等の買い意向、控えめな発行価格設定がある。一方でボラティリティは高く、売買中断が複数回発動された。
投資家の視点:初期過熱と回帰局面の値幅に備え、ロックアップ、グリーンシュー、実行KPI(出来高・スプレッド・顧客構成)と規制進捗(BitLicense等)をモニターするのが一般的だ。指数採用・後続IPOの地合いも相対評価に影響しうる。

※本稿は投資助言ではありません。

(参考:Bullish,SEC,White House