【要約】
・Melania プロジェクトは過去8日間で合計999万枚のMELANIAトークン(約465万ドル相当)を売却
・同プロジェクトは単独流動性とDCA(定期的な分割投資)の手法を用いて売却を継続
・トランプ一族が主体となる「World Liberty Financial(WLFI)」の動きも活発化
・「ゴールデンブック」戦略と呼ばれる方針により、暗号資産業界とホワイトハウスの境界が曖昧になりつつある
・各種取引で政治的利害や海外投資家との衝突が表面化
Melaniaプロジェクトによる大規模売却の実態
暗号資産コミュニティで話題を集めるMelaniaプロジェクトは、過去8日間にわたって999万枚のMELANIAトークンを売却し、その合計額は約465万ドルに上ると報じられています。これは単独流動性プールに加え、DCA(ドル・コスト平均法)のスタイルを組み合わせることで効果的に市場で売却を進めたものです。メディア報道によれば、この売却により得た資金をSOLやUSDCなどへ転換し、他のブロックチェーンへ移送する動きも確認されています。
さらに、3月16日以降のわずか1か月半の間にMelania側が転出したMELANIAトークンの累計は4167.5万枚に達し、約2306万ドル相当のSOLに交換してきたとの分析があります。平均換算すると1トークンあたり0.55ドル前後で売却されたと見られ、かなりまとまった利確が行われたことになります。同プロジェクトによるこれらの転換資金は、最終的にUSDCなどへ替えて他チェーンに送金されるか、さらに他の取引手段を模索している可能性も指摘されています。
トランプ一族と暗号資産:「ゴールデンブック」戦略の背景
一方、メディアで大きく取り上げられているのが、アメリカ前大統領ドナルド・トランプ氏の家族企業による暗号資産への新たな取り組みです。近年、トランプ一族は**World Liberty Financial(WLFI)**という組織を立ち上げ、暗号資産市場で積極的な活動を展開しています。その活動方針が一部で「ゴールデンブック」戦略と呼ばれ、事業への投資や提携に政治的な影響が及ぶのではないかと懸念が高まっています。
報道によると、WLFIは複数の暗号資産関連企業と協業し、自社トークンを相互購入する「共同投資取引」方式を提案してきた事例があるといいます。これには、WLFIが相手プロジェクトの暗号資産を少額購入する一方で、相手側は莫大な資金を投じてWLFIのトークンを買い支えるという非対称な条件が含まれているとの指摘があります。また、そうした実態を市場に十分開示しないまま、提携の「表面上のイメージ」を利用して価格を吊り上げている可能性もささやかれています。
この「ゴールデンブック」戦略には、トランプ一族の政治的立場が関与し得るため、海外企業や投資家がWLFIトークンを購入することで、裏を返せばトランプ家との「つながり」を得ようとする動機が働くという見方があります。以前の米国大統領選や政権運営では、暗号資産規制を巡ってSECや司法省などの動向が厳しさを増していましたが、トランプ系の新たな政権チームでは暗号資産に対して緩和的なスタンスを示す動きが報じられており、こうした政治的背景がビジネスへの影響をさらに大きくしているのです。
WLFIと海外投資家の思惑
WLFIは設立当初、自社トークンを販売することで少なくとも5億5000万ドル以上の資金を調達したと報道されています。その資金の多くが、香港やイスラエル、ドバイなど海外投資家から集められたものだとされ、政治献金ではなく「合法的なトークン購入」という形でトランプ一族を支援する構図が指摘されています。
さらにWLFIのパートナーや投資家には、米国証券取引委員会(SEC)などから過去に訴訟を受けた人物や、グレーゾーンで活動する企業も含まれている模様です。国際的な暗号資産取引において、政治的影響力の高いプロジェクトと提携することで規制面の優遇を得ようとする狙いがあるのではないか——そうした疑念は専門家の間でもくすぶっています。
トランプ政権が暗号資産業界に及ぼす影響
2024年末の選挙で再びトランプ家が政権を握ったことで、暗号資産規制の方向性が一変したとの声が挙がっています。新しい行政チームには暗号資産寄りのアドバイザーが複数参加し、司法省による捜査縮小やSECの執行力低下が進んでいるとの報道もあります。かつて「犯罪者や詐欺師の温床」とまで揶揄していた暗号資産に対し、トランプ氏自身がホワイトハウスから業界を支援する政策を矢継ぎ早に打ち出している現状は、まさに「ゴールデンブック」戦略を支える基盤になっていると言えるでしょう。
また、トランプ氏が「アメリカをグローバル暗号資産の中心地にする」と宣言してからというもの、大手取引所や投資家の米国進出意欲が加速。業界への資金流入は明らかに増えており、かつての厳格な規制路線から一転、暗号資産市場に追い風が吹いているとの指摘が多いのも事実です。
暗号資産市場における政治とビジネスの境界
暗号資産市場は、もともと金融とテクノロジーが融合した新しいビジネス領域です。しかし、ここに政治的影響力が加わることで、投資家や一般ユーザーが受ける影響は多面的に拡大します。WLFIのような企業が政策決定の裏側で利益を得ている可能性は、海外投資家との関係性にも大きな注目を集めています。
とりわけ、トランプ一族の暗号資産事業が「大統領一家だからこそ得られる特権的なポジション」を武器にしているという指摘は、アメリカ国内のみならず各国メディアで報じられるようになりました。大口投資家によるトークン大量保有は価格操作リスクをはらみ、さらに政治的なバックアップがあるとなれば、投資家心理の操作や規制の歪みにつながる可能性も否定できません。
ニュースの解説
今回のMelaniaトークン大量売却と、トランプ家のWLFIにまつわる「ゴールデンブック」戦略の動向は、暗号資産市場がいまだ流動的であることを如実に示しています。特にMelaniaプロジェクトのように、短期的な大規模売却を行うケースではコミュニティへの影響度合いが大きく、価格の乱高下や投資家保護の観点で議論が避けられません。
さらに、政治とビジネスが交錯するWLFIの動きが国際的に注目されている背景には、暗号資産規制をめぐる各国政府の温度差や、投資家が求める“有利な接点”へのニーズが存在します。表面的には「相互投資」を謳いながら、実態は大量の資金がトランプ家へ流入する仕組みが疑われており、この点は今後もメディアや議会での検証対象になるでしょう。
米国が「暗号資産大国」を目指すというメッセージは、市場活性化に一定のプラス要因をもたらす反面、規制の形骸化や不透明な資金流入が進むリスクも伴います。今後、MelaniaやWLFIといった注目プロジェクトの動向は、単に暗号資産の価格変動だけでなく、政治外交の駆け引きや国際的な資金調達の在り方にも影響を与える可能性が高いと考えられます。こうした複合的な要因を踏まえ、投資家や市場参加者は常に最新情報をウォッチし、慎重な判断を下すことが求められるでしょう。