marumaruNFT崩壊とMARU上場廃止の論点

▽ 要約

概要:夜のエンタメ向けNFT事業で、終了と閉鎖の報告が拡散。
市場:MARUは上場廃止が相次ぎ、換金性と価格発見が低下。
論点:円決済・実用NFTの設計は、停止時に権利が消えるリスク。
注意:新規案件への誘導もあり、二次被害への警戒が必要。

終了通知とされる投稿後に公式導線が消え、取引停止も重なったため、保有者は検証と退出の時間を奪われた。

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2025-12中旬以降、夜のエンタメ業界向けNFTマーケットをうたったmarumaruNFTをめぐり、創業者によるプロジェクト終了の告知と公式サイト・SNSの閉鎖が相次いだとの報告が広がっています。結論として、情報断絶と換金性低下が同時に起きた局面では、事実確認とリスク管理の優先順位を明確にし、追加の拠出や「取り返し」目的の行動を抑えることが重要です。本稿では公開資料で確認できる点と、SNSで流通する主張を切り分けて解説します。

実用NFT×円決済モデルの盲点

店舗特典と結び付く設計は理解しやすい一方、運営が止まると権利と市場流動性が同時に失われやすい。

同プラットフォーム(marumaruNFT)は、メイドカフェやコンセプトカフェ等で使える「会員証」「優待チケット」「ポイント」などをNFT化し、ファン活動に活用できる点を訴求してきました。インスタント写真(チェキ)に代わるデジタル特典という打ち出しは、Web3の文脈を知らない層にも伝わりやすい設計です。

一般メディアの記事では2024-11時点で「先日提供開始」と紹介され、提携資料でも2024-10中旬から試験的サービス開始予定とされるなど、拡大フェーズの説明が先行していました。

特典設計の例として、店舗ポイント10万円分など“額面価値”を付けたNFTを割引販売できる、といった説明も紹介されていました。
価値の源泉が「特典の履行」に寄るため、特典提供主体と条件の明文化がより重要になります。

ただし、実用性は「店舗が特典を認め続けること」「運営が発行・照合の仕組みを維持すること」に依存します。権利の根拠が利用規約や運営DBに寄るほど、運営停止が即座に価値喪失へ波及する点は、投資家が最初に織り込むべきリスクです。

背景

サービス設計とトークン設計を分けると、停止時に崩れるポイントを事前に特定しやすい。

日本円決済とカストディの関係

ウォレット不要のUXは便利だが、所有権管理が運営側に寄るほど、停止時の救済手段は乏しくなる。

円決済を前面に出すNFT販売は、暗号資産口座やウォレットを持たない一般層への拡張に向きます。一方で、ユーザーが自分のアドレスを持たない設計の場合、保管・移転の実務が運営カストディに寄りやすく、外部から「誰が何を保有しているか」を検証しにくくなります。

検証可能性が低いモデルでは、販売実績や在庫、二次流通の実態が不透明になりがちです。投資家にとっては、オンチェーンで追えるデータと、運営が提示する数字が一致するかが、信頼性の初期判定材料になります。

運営会社と代表者情報

一次資料では法人情報が明示されており、事実確認はまず所在地・設立・代表者から着手するのが近道だ。

提携資料では、運営会社を株式会社パーソンパワー(兵庫県西宮市)とし、設立が2018-10、代表取締役社長が八田浩一氏であることが記載されています。暗号資産「MARU」の発行とトークンエコノミー育成事業も事業内容として示されており、少なくとも公表ベースではNFT事業とトークンが同一の法人活動として整理されていました。

MARUトークンの位置付けと上場

独自トークンを軸に据える設計は拡張性がある反面、上場と流動性に依存して価格変動が増幅しやすい。

MARUはBNBチェーン上のトークンとして発行され、供給上限を20億枚とする説明や、プロジェクト内での決済・ガバナンス等の用途が掲げられてきました。スポンサー記事では2024-03-31のCoinW取扱い開始が予告され、初期の上場ニュースが期待感を形成したとみられます。

もっとも、ユーティリティが実需として積み上がる前に上場が先行すると、価格はニュースフローと流動性に左右されやすくなります。プロダクトの継続性が揺らいだ瞬間、トークン側の出口も同時に細る点は構造的です。

2025-12の急転

取引停止の公式アナウンスと、公式導線の消失が短期間に重なり、保有者の行動選択肢が縮小した。

取引所側では、CoinWが2025-12-11付でMARUを上場廃止する旨を告知しています。中央集権取引所の上場廃止は、価格発見と換金経路を急激に狭め、出来高の薄い銘柄ほど「売れない」リスクを顕在化させます。

同時期に、創業者の終了通知とされる投稿が出た後、公式サイトやSNSが相次いで閲覧不能になったとの報告が拡散しました。事実関係は個別確認が必要ですが、少なくとも「問い合わせ窓口」「発表アーカイブ」「NFT特典の扱い」という確認経路が弱まったことが、コミュニティの不安を増幅させました。

時系列の整理(公開資料・取引所告知ベース)としては、2024-10-02に上場企業子会社と地域団体との提携が告知され、2024-11-19に一般メディアでの紹介記事が出た後、2025-12に上場廃止告知と終了報告が重なる流れです。

市場への影響

流動性の蒸発は「価格下落」だけでなく「損失確定不能」という形で投資家行動を拘束する。

価格データサイトでは、2025-12中旬以降にMARUの価格更新が止まった、あるいは極端に低位で推移している旨が表示されています。DEX側の流動性プールについてはチェーン上の検証が前提ですが、出来高が細れば少額でも価格が大きく動き、保有者は合理的に退出しづらくなります。

加えて、実用NFTが店舗特典と紐づく場合、トークンの値動きとは別に「特典が使えるか」というオフチェーン要素が価値を左右します。運営と店舗のどちらが特典を担保するのかが曖昧だと、投資家は資産価値の評価軸を失いやすい点に注意が必要です。

論点とリスク

同種案件を避けるには、「実績」「資金の流れ」「権利の実体」を第三者が検証できる形で追えるかが核心になる。

第一に、売上や利用実績がオンチェーン/オフチェーンのいずれでも検証可能かを確認すべきです。第二に、運営資金・流動性・トークン配分が一方的に移動し得る設計か、ロックやマルチシグなどの制約があるかが重要です。第三に、定例開示やリスク記載、窓口維持といった説明責任が途切れた瞬間に、投資家は最悪シナリオを織り込む必要があります。

チェック項目としては、(1)発行体の法人情報と責任者、(2)資金・配分のロック条件、(3)実需のKPI、(4)利用規約での権利定義、(5)上場廃止時の手続き、の5点が最低ラインです。短期で拡散する成功演出より、検証可能なデータの積み上げを優先して見ます。

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今後の注目点

同一人物の関与が指摘される新規案件が出た場合、過去案件との資金・コミュニティ連続性が最大の論点になる。

プレスリリースによれば、No NPC Society($NONPC)は2025-12-15 12:00 UTCに48時間のプレセールを実施し、300 SOLのソフトキャップ、800 SOLのハードキャップ、1ウォレット20 SOL上限などを掲げています。透明性やマルチシグ管理、流動性ロックを強調する一方、関与範囲や過去案件との関係は投資家側が追加で検証しなければなりません。

SNS上では被害者同士の情報共有や証拠保全の動きが報告されています。法的評価は当局判断になりますが、少なくとも個人としては、取引履歴、入出金記録、告知のスクリーンショット、音声配信のURL等を時系列で保全し、二次被害を生む勧誘には応じないことが実務的です。

▽ FAQ

Q. MARUはどこで取引できますか?
A. CoinWは2025-12-02に、2025-12-11付でMARU/USDTの上場廃止と取引終了予定を正式に告知しました。

Q. 円決済型NFTで投資家が注意すべき点は?
A. 2024-10-02のWHDC提携資料は「日本円で決済可能」と明記し、カストディ型は停止時の権利確認が難化しやすいです。

Q. No NPC Societyのプレセール条件は?
A. 発表では2025-12-15 12:00 UTC開始、48時間、300 SOL〜800 SOL枠、上限20 SOL/人です。

Q. 被害拡大を防ぐ初動は?
A. 2025-12の告知、取引履歴、入出金記録、スクショを保存し、被害額メモも付けてX投稿URLや取引所案内を日付で整理します。

■ ニュース解説

上場廃止の告知で換金性が低下したため、公式導線の弱体化報告と相まって保有者の選択肢は急速に縮小した。
ただし、売上実態や資金移動を断定するには追加の一次情報が必要だ。
投資家の視点:同種案件では、(1)取引所依存度、(2)資金ロックとマルチシグ、(3)実績の検証可能性、(4)説明責任の継続性を点検し、「取り返し目的の追加投資」や新規案件への乗り換えを慎重に判断すべきです。

※本稿は一般的な情報提供を目的としており、特定銘柄・金融商品の売買を推奨するものではなく、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。

(参考:CryptoPotato