12月23日:市場構造法案で読む2026暗号論点

▽ 要約

制度:米国の市場構造関連法案が焦点
市況:BTCは$85,000〜$90,000で攻防
需給:24h清算$183M、企業買いは$26.35M
技術:量子とzkEVM安全競争が2026論点

米国の市場構造関連法案の進展観測を起点に、BTCの需給・量子耐性・zkEVM安全性・AI連動の論点を2026視点で整理する。

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投資家が知りたいのは、反発局面が「資金の戻り」で裏付けられるのか、そして制度・暗号技術の更新が2026年の価格形成にどう効くのかです。本稿は市場構造法案を軸に、BTCのレンジ、清算動向、量子/zkEVM/AIの主要論点を1本で把握できるようにまとめます。

市況総括

マクロ不確実性の一巡で売り圧力は鈍化しつつ、買いの戻りが鈍ければレンジ滞在が長期化し得ます。
足元のBTCは$85,000〜$90,000のレンジで反復し、次の上値目標として$94,000が意識されています。
高値$126,000から30%超の調整後で、脱レバレッジと再定価値付けの局面が続くという整理です。

資金フローは反転の条件になりやすく、安定的な買い手の存在が焦点になります。
レポートでは、リテールの撤退が続く一方でDATsや「鲸鲨」クラスが逆張りで増やしているとされます。
一方でステーブルコインとETFの両チャネルで資金が流出に転じており、次週のフロー回復が短期の分岐点とされています。

ETFフローはセンチメントの鏡で、ETH現物ETFの資金流出はアルトの重しになりやすいです。
ETH現物ETFが直近1週間で$644Mの純流出となり、BlackRockのETHAが流出額の8割超を占めたと整理されています。

短期のボラティリティ要因として、デリバティブ清算の偏りも確認されました。
2025-12-22の24時間で全体$183Mが清算され、ショートが$124Mと優勢でした。
BTCは$60.68M、ETHは$45.38Mと、主要銘柄の清算比率が高い状態です。

規制・政策アップデート

政策面は「線引き」と「準拠コスト」がテーマになり、2026年の資金流入を左右し得ます。
X上ではCFTCのマイケル・セリグ委員長が、暗号資産の市場構造に関する法案が議会から大統領に提出される準備が整っていると述べたと伝わりました。
実際の条文と提出時期、商品/証券の区分、監督当局の権限整理が、今後の価格材料になりやすいポイントです。

ステーブルコインは「銀行の終結者ではなく競争圧力」と位置づける見方が強まりつつあります。
研究の整理では、給与・住宅ローン・カード等の結び付きで預金は粘着的で、安定通貨が即座に大規模な預金流出を起こすとの懸念は過大だったとされます。
そのうえで、足元の議論は準備資産・償還権を明確化する規制枠組みの下で、決済効率(原子的決済)をどう取り込むかに移っています。

予測市場はYes/No契約で確率を価格化し、仕組みは二元オプションに近いと整理されています。
ただし対象は政治・天候・興行など検証可能な事象まで広がり得るため、規制の扱いと“情報集約”の価値をどう両立するかが論点になります。
Coinbase CEOのBrian Armstrongが予測市場はCFTC監督が望ましいと述べたと紹介されました。

関連:Bitcoin for America法案:BTC納税を解説

同時に、AI関連の政府・大企業需要が市場テーマに波及する可能性も残ります。
X上では米国防関連機関がイーロン・マスク氏のxAIと契約を結んだとの速報が共有されました。
規制そのものではないものの、AIインフラ投資と暗号資産(AI/DeAI銘柄、データ流通)を同時に見る投資家が増える局面では、ニュースフローの相関が高まり得ます。

企業・プロジェクト動向

上場企業の暗号資産保有は「需給の底」を作る一方、買いの継続性が評価軸になります。
Bitcoin Treasuriesデータとして、過去1週間の上場企業の純買いは$26.35Mとされました。
Strategyは保有601,550 BTCで、12週間ぶりに保有が増えなかった点が注目されています。

強気発言は需給の裏付けが伴うかで評価が分かれます。
Michael Saylorが「企業がBTC供給の5%を保有すれば1BTC=$1,000,000の可能性」と述べたと紹介されました。

オンチェーンでは大口の行動と、インフラ事故後の資金回収が同時に観測されています。
2025-12-22には巨鯨が2,005 AAVEを平均$2,631で売却し、AAVE価格が約4.0%下落したと報じられました。
同日、Rabby Walletの機能でMultichain事件(2023年)以降凍結されていた$85,740 USDCを回収した事例も共有されています。

プロトコルの信頼維持では、インサイダー疑惑への対応速度が評価されます。
Hyperliquidは$HYPEのインサイダー取引疑惑に対し、全社員によるHYPEデリバ取引禁止などの方針を示したとされています。
透明性の担保は短期炎上の鎮火だけでなく、長期の流動性と参加者構成にも影響します。

技術トレンド(量子・zkEVM・AI)

暗号資産の中長期テーマは、性能競争から「暗号・安全性の更新コスト」へ移っています。

ビットコインと量子計算:長期リスクの時間軸

量子リスクは直近の価格ではなく、移行に要する年数と合意形成が本質的な変数です。
議論では楕円曲線暗号が理論上破られ得る点が再注目され、NISTが2030〜2035年に既存暗号の廃止を求めていることも引かれました。
想定される影響として、約6,700,000 BTC($600B超)が直接リスクに晒され得るという推計が示されています。

移行の難所は、初期形式の「移せないコイン」をどう扱うかに集約されます。
P2PKアドレスにある約1,700,000 BTCは公開鍵が露出しやすく、アップグレード後も移行不能なら凍結か放置かの二択になります。
過去のSegWitやTaproot並みに、設計・実装・合意形成・資金移動で5〜10年かかり得るという見立てが、投資家の時間軸に影響します。

対策は始まっており、他チェーンの動きがBTC側の議論を刺激する可能性があります。
2025-12-05のBlockstream研究ではハッシュベース署名が後量子解として提案され、EthereumはL2を“試験場”にPQC導入を検討しています。
AptosのAIP-137やSolana×Project Elevenなど、実装を先行させる動きも確認されています。

zkEVM「リアルタイム証明」:速さから安全へ

zkEVMは「速いが危うい」を避け、L1級の可証明安全へ要件が引き上がっています。
報告では、主網ブロックの証明時間が16分→16秒、コストが45倍改善し、目標ハードで10秒以内に99%を証明できる段階に到達したとされます。
一方で、STARK系の前提となる数学的仮定が近月否定された例があり、安全性を定量化して再設計する局面に入っています。

EFのロードマップは2026年内の128-bit安全性を明確に目標化しました。
節目として2026-02-28までのsoundcalc接続、2026-05-31までの100-bit水準、2026-12-31のH-star(128-bit)と形式的論証が示されています。
速度競争が一巡した後は、証明の信頼性と検証コストのバランスが価値評価の中心になりそうです。

AIの分配権と暗号資産の接点

AIはモデル性能だけでなく「誰が配るか」が争点になり、DeAI/DePINの物語と接続します。
Andrej Karpathyは2025年の変化としてRLVR訓練やVibe Coding、GoogleのNano banana等を挙げ、開発・利用の形を変えたと回顧しました。
別稿では、巨頭が握る“灯台”型と、開源で主権を持つ“火把”型が併存し、用途で二極化するとの見立てが示されています。

Messariは2026年を「投機からシステム統合へ」の転換点とし、DeAIやDePINが収益化と規制明確化で加速し得ると整理しました。
AI投資テーマが強まる局面では、分散型算力・データ供給・決済(ステーブルコイン)を跨いだ再評価が起きやすいため、暗号とAIのニュースを同じ棚で管理する意義が高まります。

▽ FAQ

Q. 市場構造法案が進むと何が変わる?
A. CFTCのセリグ氏発言(2025-12-23)で注目され、取引所の登録や商品/証券の線引き、監督権限の範囲整理が争点です。

Q. 量子計算でBTCが危険になるのはいつ?
A. NISTは2030〜2035年の暗号更新を要請し、6,700,000 BTCやP2PK約1,700,000 BTCが論点です。

Q. zkEVMの安全競争で注目すべき期限は?
A. EFは2026-02-28/2026-05-31/2026-12-31を節目に、128-bit(H-star)到達を目標化しました。

Q. 直近の清算額と偏りは?
A.2025-12-22の24時間で$183M、ショート$124M、BTC$60.68M・ETH$45.38Mです。

■ ニュース解説

米国の市場構造関連法案の進展観測が伝わったため制度期待が意識される一方で、足元は資金流出と清算データが示す需給の脆さも残るので、短期はレンジと材料消化の両にらみが続きます。
ただし量子耐性やzkEVM安全性の要件引き上げは2026年の評価軸を変え得るため、技術の移行コストと規制の線引きが同時に問われます。
投資家の視点:フロー(ETF・ステーブルコイン)、法案の条文/時期、量子対応の合意形成、zkEVMの128-bit達成度を「時系列」で点検すると整理しやすいです。

※本稿は一般的な情報提供を目的としており、特定銘柄・金融商品の売買を推奨するものではなく、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。

(参考:PANews