▽ 要約
・KADENA、RWAへ 5000万ドル を投入しエコシステム再構築
・資金の半分は 規制対応RWAプロジェクト、残りはChainweb EVMとAI統合へ
・英国CURVEBLOCKが 初の助成対象、40万ドル獲得
・過去の1億ドル施策は TVL低迷 で失速、今回は挽回なるか
・グローバル規制(香港・米国・EU)が RWA証券化 を後押し
はじめに:老舗チェーンの綱渡り
2016年創設のKadenaは、マルチロック並列PoW「Chainweb」を掲げ、かつてはKDAが最高27ドルまで高騰した。だが21年後半の弱気相場で価格と開発熱が急冷し、TVLは100万ドル未満に沈んだ。そんな停滞を破る切り札として運営が選んだのが**RWA(Real World Assets)**である。
5000万ドル激励プログラムの中身
1. 資金配分
- 2,500万ドル ─ 規制準拠のRWAトークン化プロジェクト
- 2,500万ドル ─ Chainweb EVM上のdAppsとAI連携ソリューション
助成はエクイティを伴わず、資金に加えて技術・マーケティング支援も約束されている。
2. 第1号採択:CurveBlock
英CurveBlockは英国デジタル証券サンドボックス入りした不動産テック企業で、環境配慮型の開発案件をトークン化する計画だ。採択額は40万ドル。合規性の裏付けが選定理由とみられる。
3. PactベースRWA標準
Kadenaは独自言語PactでイーサリアムEIP‑3643を参考にしたRWA規制対応標準を実装。オンチェーン許可管理や強制償還ロジックを備え、証券型トークンの発行・二次流通を想定している。
過去の「1億ドル失敗」から何を学んだか
22年の1億ドル助成はゲーム・NFT分野を網羅したものの、
- 受給プロジェクトが9件にとどまり、
- 資金配分や成果指標も不透明、
- 市場冷却でユーザー誘導に苦戦
――結果としてTVLを押し上げられなかった。今回の違いは「テーマをRWAに絞り、法規制と機関投資家ニーズを正面から捉えた点」にある。
RWA証券化を巡る世界潮流
香港
2025年5月可決の安定コイン条例草案は、発行ライセンス・100%準備資産・AML要件を規定。高流動資産の裏付けを義務付け、市場信頼を醸成する。
米国
上院通過のGENIUS法案は、法定通貨担保型ステーブルコインに100%キャッシュ等価準備と定期監査を要請、アルゴ型は事実上制限。
EU
MiCA は資産参照トークンと電子マネートークンの発行者に自己資本・情報開示を求め、サービス事業者にも統一ライセンスを与える。
これら枠組みは「証券型トークン = 厳格規制」の共通項を示す。Kadenaが標準に権限制御を組み込むのは、市場参入ハードルを下げる実務的対応と言える。
成功のカギ:流動性とインセンティブ設計
旧来の「プロジェクト向け助成」モデルは、ユーザー不在では成果が刈り取れない。今回重要なのは
- CEX上場やブリッジ連携 による二次流通の確保
- ユーザー側報酬 の見直し(従来は40 KDA抽選など低水準)
- 透明な採択基準とKPI(TVL/取引高/規制認可)
特にRWAは法的デューデリとチェーン外コストが高い。CurveBlock級の案件を継続的に呼び込み、実需を生むかが試金石となる。
■ ニュース解説
Kadenaの大規模インセンティブは、RWA特化 + 規制対応 という“的を絞った再始動”。香港・米国・EUで法制度が整い始めたタイミングと合致し、「PoW系でRWAを扱う希少プラットフォーム」という差別化が奏功すれば、低迷TVLの反転も視野に入る。
一方、22年の失敗例が示すように、資金ばらまきだけではエコシステムは活性化しない。流動性供給や利用者報酬まで含めた包括的ROI設計が欠かせない。RWA銘柄の拡大競争が激化する2025年後半、Kadenaが**「Chainweb EVM × 規制準拠標準」**で実利用を示せれば、PoWチェーン再評価のきっかけとなるだろう。