2026年9月17日18時(日本時間)、日本円ステーブルコインのJPYCが韓国の大手取引所Upbitに上場しました。取引ペアはKRW・BTC・USDTの3市場、入出金に対応するネットワークはEthereumだけです。上場から40分ほどで、1円のはずのJPYCがUpbit上で3倍を超え、その歪みがDEXにも波及しました。日本人コミュニティでは「100万円が250万円になった」「300万円を超えた」という報告が相次ぎ、夜まで祭りが続きました。この記事は、公開されている時刻と数字だけを並べて、何が起きたのかと、誰が取れて誰が取れなかったのかを整理します。
時系列(すべて日本時間)
| 時刻 | 出来事 |
|---|---|
| 9/17 18:00 | UpbitでJPYCの取引開始(KRW / BTC / USDT) |
| 18:42 | Upbit KRW市場で35.7ウォン。始値8.81ウォン比+197.5%。同時刻のCoinMarketCap価格は9.65ウォンで、Upbitはグローバル価格の3倍超 |
| 18:56 | Ethereum上のDEXで1 USDC ≈ 50 JPYC(平時は1 USDC ≈ 150 JPYC前後) |
| 20:30 | DEXでJPYCが約0.02ドル(約3.11円)の高値 |
| 20:34 | JPYC株式会社がEthereumでの発行予約を一時停止 |
| 22:19 | Polygonでの発行予約も一時停止 |
| 23:43 | Ethereumの発行予約が復旧 |
| 9/18 00:22 | Polygonの発行予約が復旧 |
| 9/18 00時台 | Ethereumで1 JPYC = 0.011043 USDC(平時の約1.72倍)、Polygonで0.010624 USDC(約1.65倍)、Avalancheは0.006422 USDC(乖離なし) |
出典はJinaCoin、NADA NEWS、CoinMarketCap、各DEXの板です。分単位の値は取得元によって数秒〜数分ずれます。
なぜ1円のコインが3倍になったのか
理由は供給の偏りです。Upbitが対応したのはEthereum版のJPYCだけで、Ethereum版はJPYC全流通量の約7%にすぎません。上場で韓国ウォン建ての新しい買い需要が一気に生まれた一方、Upbitに送れるJPYCが少なく、板が薄いまま買い上がりました。
Upbitで高く売れるなら、EthereumのJPYCをUpbitへ送って売る人が出ます。その人たちがDEXでJPYCを買い集めた結果、Ethereum上のDEXでもJPYCが釣り上がり、1 USDCで50 JPYCしか買えない(=1 JPYCが3円)状態になりました。Polygon版にも波及したのは、ブリッジや発行・償還を通じてEthereum版に変えられるからです。Avalanche版に乖離が出なかったのは、その経路が細いためと考えられます。
「100万円が300万円台」の中身
報告の典型は「平時に1円で用意していた100万JPYCを、DEXでUSDCに売ったら21,300ドル(約331万円)になった」という形です。JinaCoinも「100万JPYCをDEXスワップで約311万円相当に変えた」というユーザー報告を載せています。数字が250万〜331万と幅があるのは、売った時刻とDEXのプールが違うからです。
大事なのは、この報告の多くはUpbitで売ったのではなく、Ethereum上のDEXでUSDCに売っている点です。Upbitの口座は韓国の本人確認が前提で、日本在住者は原則作れません。「3倍で売るためのUpbit口座は日本人には作れないですよね。絵に描いた餅では」という質問がXでも出ていましたが、DEXに波及した歪みなら日本からでも取れました。取れた人は、Upbitに送った人ではなく、DEXで売る側に回った人です。
取れなかった人の壁
- JPYCを持っていなかった。乖離を見てからJPYC EX(公式の発行・償還窓口)で発行しようとしても、20:34にEthereumの発行予約が止まりました。発行を待っている間に乖離が縮みます
- Upbit口座が無い。上記の通り、日本在住者は原則不可。Upbitの高値は「見えるが取れない」価格でした
- ガス代と時間。Ethereumの混雑時にDEXで売る場合、承認とスワップで数千円〜のガス代がかかり、待っている間に価格が動きます
- 戻りのリスク。高値で買った側は、乖離が縮むと損失です。JPYCはあくまで1円に償還される設計なので、2円や3円で買った分は償還では1円にしかなりません
JPYC株式会社の対応
同日夜、EthereumとPolygonの両方で発行予約を一時停止し、いずれも18日未明までに復旧させています。発行の停止は「1円で発行されたJPYCが、そのまま3円のDEXに流れる」動きを止める意味があり、供給側から乖離を抑えに行った形です。18日0時台の時点でEthereumは1.72倍、Polygonは1.65倍まで縮んでいて、上場直後の3倍超からは収束に向かっています。
コミュニティの反応
Xでは、「スワップするだけで3倍超」「もう、ステーブルじゃないですね」「いつでも1円近くで売買できるという安心感が崩れた」という声が並びました。一方で、今回の教訓を「JPYCを入手できる体制を作っておく」「上場のタイミングを把握する」「乖離が出たら即送金してUSDT等で売る」「別経路でJPYCに戻す」と箇条書きにする人もいました。祭りの熱と、ステーブルコインの信頼への疑問が同時に出ています。
この件から持ち帰ること
- ステーブルコインの1円は「償還価格」であって「市場価格」ではない。板が薄い市場に大きな買いが入れば、いくらでも離れます
- 取れたのは「事前に持っていて、DEXで売る側に回れた人」。上場を見てから動いた人には、発行停止とガス代と収束が同時に来ました
- Upbitの価格は日本からは絵に描いた餅。次に似た上場があっても、口座の壁は変わりません
- 高値で追いかけた側は損をする。償還は1円です
次の上場で同じことが起きるかは分かりません。今回はEthereum版の供給が7%しか無かったという、この銘柄・この取引所に固有の条件が効いています。
出典
- JinaCoin: JPYC、アップビット上場直後に1円から乖離──一時3倍超、発行予約は復旧
- NADA NEWS: JPYC、Upbit上場の影響で価格乖離
- NADA NEWS: JPYCが韓国大手Upbitに上場
- 朝から昼寝: JPYCの流通価格が急騰(Upbit上場)
動画版は投資ラボのYouTubeに、要点は@LaboNftに流します。
投資助言ではありません。投資は自己責任で。




