▽ 要約
ローンチ:2025-10-27にJPYC正式発行、円預金・国債で100%超保全。
活用拡大:ウォレットのガス代支払い、DeFi/NFT/ゲーム決済に進展。
決済連携:電算システムHDやnudge等で実店舗・カード支払いに接続。
比較整理:GYEN/CJPYと仕組み・規制・用途を対比、投資家の留意点も。
JPYCは2025-10-27に正式発行され、日本円預金と国債で100%超を保全する国内初の規制対応円ステーブルとして、決済・DeFi・送金の実装が加速した。
日本円ステーブルコインの実用はどこまで進んだのか——答えは、JPYCの正式発行で「円のデジタル化」が制度面と実装面の両輪で動き出した、である。
エコシステム総観
正式発行が2025-10-27に行われ、円預金と日本国債で100%以上を保全する運用が示されたため、国内初の規制対応円ステーブルとして商用利用が本格化した。
JPYCはEthereum・Polygon・Avalancheで展開し、発行・償還は1 JPYC=1円を原則とする。発行・償還手数料は原則無料(2025年時点)で、準備資産の利息を主要収益源とするモデルを採用する。発行・償還は「JPYC EX」を介し、ユーザー資産を預からない非カストディ設計を掲げる。
ガバナンス・透明性
準備金の内訳と保全状況を日次開示する方針のため、裏付資産の可視性が高く、資産隔離と償還可能性への信頼が高まる。
資金移動業者としての登録(関東財務局長第00099号)を背景に、社外パートナーや業界団体と連携しつつ、法令遵守・運用体制を強化している。
ウォレット対応
アカウントアブストラクションの普及により、JPYCから直接ガス代を支払える体験が広がるため、新規ユーザーの導入障壁が下がる。
Ambire WalletはJPYCでのガス支払いに対応し、HashPort Walletも統合予定とされる。2025-04のMetaMaskアップデートではUSDT/USDC/DAIなどのGas Token選択が実装され、主要ウォレットでの汎用化に弾みがついた。
DeFi・NFT・GameFiへの拡大
円建て金利・価格表示・会計実務の面で利便性が高いため、DeFi、NFT、ゲーム報酬など幅広いユースケースに波及している。
DeFi
Secured FinanceはJPYC建ての固定金利レンディングを発表し、WBTC/ETH担保でのJPYC借入も計画するため、オンチェーンで日本円金利カーブを再現する基盤が整いつつある。Yearn連携のJPYC Vault計画も示され、利回り獲得の選択肢が広がる。
NFT・クリエイター決済
価格表示と決済を円建てで統一できるため、為替差損・会計負担の軽減が見込まれ、国内クリエイターの参入障壁が下がる。漫画家支援「comilio」はJPYC決済導入を計画し、ファン支援・収益分配の自動化を目指す。
GameFi/Move-to-Earn
Web3ヘルスケア「運動サプリ®」は活動報酬をポイントではなくJPYCで付与するため、日々の運動が即時に円価値へ転換される。先着ユーザーに100 JPYCと0.5 MATICを付与する施策も行われ、メールアドレスだけで作れるウォレットでUXを平易化する。
決済・送金・Eコマース・会計
コンビニ等6.5万店超の収納代行網を持つ電算システムHDや、クレジットカードのnudge、業務連携のASTERIAなどの実装が進むため、実店舗・EC・法人会計にJPYCの接点が拡張している。
電算システムHDは実店舗・ECのJPYC決済システムを開発中で、既存決済網と円ステーブルを統合。nudgeはクレカ利用額の清算にJPYC充当を決定し、オンチェーン資産からオフチェーン支払いへのブリッジを用意。ASTERIAは「JPYCアダプター」で企業システム連携を準備し、N SuiteやCryptoLinCの対応も予告される。国際送金でも手数料・着金時間の優位性から利用意義が大きい。
| カテゴリ | サービス / プロジェクト | 用途・機能 | JPYC対応状況 | 対応チェーン | 補足(要点) | 
|---|---|---|---|---|---|
| 発行・償還 | JPYC EX(JPYC社) | 発行・償還ポータル | 正式対応(1 JPYC=1円) | Ethereum / Polygon / Avalanche | 円預金・日本国債で100%超保全、発行・償還手数料原則無料(2025時点) | 
| ウォレット | Ambire Wallet | ガス代をJPYCで支払い | 対応済み | EVM系 | AAによる代替ガス支払い。ETH等を別途用意せず送金・DApp利用が容易 | 
| ウォレット | HashPort Wallet | JPYC保有・送受信、ガスレスUX | 統合予定 | マルチチェーン | 旧・万博公式ウォレット。約70万人基盤、ガスレス接続で一般層向けUX | 
| DeFi(レンディング) | Secured Finance | JPYC建て固定金利レンディング | 対応発表 | EVM系予定 | WBTC/ETH担保→JPYC借入計画、将来RWA担保も視野。円金利カーブをオンチェーン再現 | 
| DeFi(イールド) | Yearn Finance(計画) | JPYC Vaultによる利回り最適化 | 計画発表 | Ethereum 等 | JPYC預け入れで最適化利回り獲得を想定 | 
| NFT/クリエイター | comilio(ユーツーテック) | 支援金・コンテンツ決済 | 導入予定 | 未公表(EVM系想定) | クリエイター支援を円建てで実装、受取JPYCは円償還で会計簡素化 | 
| GameFi / M2E | 運動サプリ® | 歩数等の活動報酬をJPYCで付与 | 対応 | Polygon(想定) | 先着100名に100 JPYC+0.5 MATIC、Web3Authでメール作成ウォレット | 
| 決済(実店舗/EC) | 電算システムHD | 実店舗・ECのJPYC決済基盤 | 開発・連携中 | チェーン非依存 | 6.5万店超ネットワークと統合を推進、法人精算ユースケースも視野 | 
| クレジットカード | nudge(ナッジ) | クレカ代金のJPYC支払い | 導入決定 | チェーン非依存 | オンチェーン資産→オフチェーン請求のブリッジを提供 | 
| 企業連携(iPaaS) | ASTERIA Warp | 「JPYCアダプター」で業務連携 | 開発予定 | チェーン非依存 | 企業システムにJPYC決済データを連携、会計・ERP統合を簡素化 | 
| 財務管理SaaS | N Suite(double jump.tokyo) | 企業ウォレット運用・承認 | JPYCプリセット対応予定 | チェーン非依存 | 企業のオンチェーン資産管理にJPYCを標準トークンとして追加 | 
| 税務・損益計算 | CryptoLinC | JPYC取引履歴の自動取得・計算 | 対応予定 | チェーン非依存 | ガス代含む履歴の自動集計で確定申告を支援 | 
| 送金・決済一般 | クロスボーダー送金各種 | 24/7即時・低コスト決済 | 利用可能 | マルチチェーン | 従来送金より低コスト・短時間。土日深夜でも決済完了 | 
発行体の信頼性
VC・上場企業の出資や業界団体参加が進むため、単独トークンを越えて金融・IT横断のエコシステムとして評価されやすい。
JPYC株式会社は2019-11設立。2025-08-18に資金移動業者として登録し、三菱UFJ信託銀行のProgmat Coin構想への参加や、電算システムHD・ASTERIA等との協業を発表。ユーザー資産の非カストディ運用を前提とし、償還原資の保全と情報開示を重視する。
他の円ステーブルとの比較
発行主体・裏付け・規制・用途が異なるため、ユースケースに応じて選好が分かれる。
GYENはNYDFS認可の円ペッグで海外中心に展開。一方でCJPYはETH超過担保の分散型ステーブルで、法定通貨裏付けはない。JPYCは国内規制準拠・円預金/国債で100%超保全・1円償還を掲げ、国内決済・会計との親和性が高い。
| 通貨 | 発行主体 / 規制 | 裏付け方式 | 主な流通 | 特徴 | 
|---|---|---|---|---|
| JPYC | JPYC株式会社(資金移動業者 / 日本) | 円預金+日本国債で100%超保全 | 国内中心、EVM複数 | 初の国内規制準拠。1円発行・償還、会計/決済連携が進展 | 
| GYEN | GMO-Z.com Trust(NYDFS認可 / 米) | 円100%信託保全 | 海外中心 | 世界初の規制承認円ペッグ。日本での一般流通は限定的 | 
| CJPY | DeFiGeek Community(分散型) | ETH超過担保(CDP) | On-chain(分散型) | 非中央集権で法定裏付けなし。1円目標の設計・清算機構 | 
今後の注目点
国内外の規制整備と流動性拡大が並行するため、会計・税務・AMLとクロスチェーン運用の実務対応が重要になる。
米国のステーブルコイン法制の行方、日本のCBDC(デジタル円)との棲み分け、CEX/DEXでの流動性確保、RWA担保や企業会計連携の拡充が焦点となる。ユーザーは公式情報の確認と安全な鍵管理を徹底し、事業者はAPI・会計連携・KPIの公開で採用を促進したい。
▽ FAQ
Q. JPYCはいつ正式発行され、どのチェーンで使える?
A. 2025-10-27に正式発行。Ethereum・Polygon・Avalancheで展開し、1 JPYC=1円での発行・償還に対応する。
Q. JPYCでガス代を支払えるウォレットは?
A. Ambire Walletが対応済み、HashPort Walletも統合予定。AAによりJPYC残高から直接手数料を差引できる。
Q. どの決済や会計サービスと連携している?
A. 電算システムHDの実店舗・EC、nudgeのクレカ清算、ASTERIAのJPYCアダプター、N Suite・CryptoLinC対応が挙げられる。
Q. DeFiではどのような使い方が可能?
A. Secured Financeの固定金利レンディング、WBTC/ETH担保の借入構想、Yearn連携Vault計画などで円建て利回り獲得が見込まれる。
■ ニュース解説
正式発行と保全スキームの開示が進んだため、JPYCは国内規制準拠の円ステーブルとして決済・DeFi・送金の実用段階へ移行した。一方で海外法制や国内会計・税務運用の整合、流動性確保が中期的な課題である。
投資家の視点:流動性・償還条件・準備金の開示頻度、チェーン間ブリッジの安全性、対応ウォレットと会計連携の有無を点検し、利用範囲を段階的に拡張するのが無難。
※本稿は一般的な情報提供を目的としており、投資助言ではありません。


 
											


