▽ 要約
タイムライン:7/10告知→8/13混乱→即日「対象外」明確化
ポリシー:10/29発効、対象地域にライセンス要件
対象外:非カストディアル ウォレットは適用除外
影響:カストディアル中心の順守強化、開発萎縮は回避
Google 非カストディアル ウォレットを巡る混乱は、8月13日に「対象外」明確化で収束した。7月10日の告知文が拡大解釈され反発が高まったが、10月29日発効の新ルールは主に取引所等へのライセンス要件で、Androidでの自己管理型ウォレット継続利用は確保された。
何が起きたのか—告知、混乱、そして明確化
7/10の告知と8/13の混乱を経て、10/29発効の要件は地域限定のライセンス規定であり、非カストディアルは対象外と公式ヘルプで整理が進んだ。
7月10日にPlayの「仮想通貨取引所・ソフトウェアウォレット」ポリシーに国別要件リンクを追加する告知が行われ、対象地域ではライセンス提出が求められることが示された。一方、初報では「非カストディアルまで一律適用」と受け止められ、開発者・コミュニティから強い反発が噴出。Googleは同13日、X上で「非カストディアルは対象外」と説明し、ヘルプを更新して明記する方針を示した。
対象地域は米国・EUなど15超で、施行は2025年10月29日。ヘルプの国別表では、交換業(取引所等)とソフトウェアウォレットの区分ごとに要件が整理され、前者に厳格な認可・登録(米国はMSB+州送金業、EUはMiCA CASP等)が求められる。
対象地域と要求されるライセンス
要求は米国・EU等の規制強化地域に集中し、交換業はMSB/CASP等の届出・監督の対象で、ソフトウェアウォレットは地域により「不要」整理が併記される。
米国ではMSB登録と州送金業ライセンス、または銀行免許が標準。EUではMiCAに基づくCASP認可が順次必須となり、独・仏などには移行措置の期日も示される。これらは法令準拠の枠組みとして従前から議論されてきた要件で、GoogleはPlay掲載に際し適用地域での遵守確認を強化する位置付けだ。
「非カストディアルも禁止」報道はなぜ広がったか
表現の曖昧さと早報が絡み、ウォレット種別の差異が伝播段階で失われたため、非カストディアルまで一律適用と誤解された。
当初、一部メディアは「非カストディアルもライセンス必須」と解釈して報じ、著名人のX投稿などを契機に批判が可視化された。しかしGoogleは同日中に「対象外」を明確化し、ヘルプの更新で整合を取ると表明。以後、報道も訂正・追記が進んだ。
今回の明確化がもたらす影響—短期と長期
非カストディアルの配信継続は担保されたため、Androidでの自己管理型選択肢は維持され、開発萎縮の懸念は後退した。
短期的には、開発者は従来どおり自己管理型ウォレットを配信可能で、対象地域では交換業・カストディアル型中心のライセンス整備が焦点となる。一方で、鍵管理を一部代行する等のグレー設計は規制適用の可能性が高まり、機能境界の設計・説明責任が重要になる。プラットフォーム側の自主規制は再燃し得るため、複線配信やWeb版の確保などレジリエンス設計が推奨される。
開発者が直ちに取るべき実務
対象地域では配信ターゲットの切替と金融機能の自己申告が必要なため、証憑の準備と審査応答の体制化が要る。
Play Consoleで「金融機能の宣言」を行い、対象地域(米国・EU等)に配信する場合は登録・認可情報の入力が求められる。満たせない地域は一時的に配信対象から外す判断もあり得る。国別要件の更新に備え、内部統制やKYC/AML方針の整備、リスク説明の明文化を進めたい。
ユーザー・投資家への示唆
集中審査は安全性向上に寄与する一方、商業的執行による事実上の規制は残存するため、多様な入手経路の確保が重要だ。
アプリ配信は事業者判断で左右され得るため、公式サイト配布や複数ストアの活用、バックアップ手段(シード管理・ハードウェア併用)の徹底が推奨される。規制側・プラットフォーム・開発者の三者協議が継続課題となる。
▽ FAQ
Q. 今回の撤回で非カストディアルは本当に対象外?
A. 2025-08-13の説明で対象外と明確化。10-29施行のヘルプ更新に反映予定。
Q. 10月29日以降、米国で必要な登録は?
A. MSB(FinCEN)+州送金業、または銀行免許。非カストディアルは原則対象外。
Q. EUのMiCAはいつ本格適用される?
A. 2025年末〜26年に段階適用。独・仏は移行措置が告知されている。
Q. どのアプリが主に影響を受ける?
A. 取引所やカストディアル型等。鍵を預かる機能を持つ事業者が中心。
Q. 開発者は何を準備すべき?
A. 国別配信の切替、機能宣言、証憑整備、グレー機能の設計見直し。
■ ニュース解説
8/13に非カストディアル除外が明確化されたため、10/29発効の国別ライセンス要件は交換業・カストディアル中心に適用される一方で、鍵管理の代行など実質カストディアルに近い設計は監督強化が進む。
投資家の視点:上場企業やウォレット事業者は地域別の順守コストと配信範囲の最適化を見直す局面。利用者はアプリ入手経路の多様化と自己保全(バックアップ/復元手順)を徹底したい。
※本稿は投資助言ではありません。