金融庁 暗号資産規制、子会社容認の波紋

▽ 要約

方針 銀行・保険本体の販売禁止維持、子会社で解禁。
国際 Reuters/BBGは市場アクセスと競争促進を強調。
行政 金商法移行・内部者取引規制は2026年提出方針。
危険 高変動性への説明義務・資本規制強化で保護徹底。

金融庁 暗号資産規制の転換点を各国報道で検証し、販売禁止維持と子会社容認、制度移行と投資家保護の実務影響を解説する。
投資家は「銀行で仮想通貨を買えるのか」「何が正式に決まったのか」を知りたい。結論は、銀行・保険会社本体の販売は引き続き禁止の方針が報じられる一方、銀行グループの証券子会社等を通じた取引・仲介の容認に向けた制度見直しが動き出した、という二層構えだ。さらに金融庁 暗号資産規制の枠組み自体を金商法へ移行し、インサイダー規制等を導入する工程が示されている。読者のメリットは、国内外報道を横断し、タイムライン・論点・実務影響をひと目で把握できる点にある。

何が起きたか

銀行・保険本体の販売を禁じ、グループ子会社に限り売買・仲介等を認める方向が示されたため、参入経路は広がるが“母体直販”は封じられる。

朝日新聞は「価格変動が大きく顧客保護を徹底できない」ため販売禁止を維持し、子会社での提供を容認する方針と報道。これは銀行・保険の直販を抑制しつつ、同一グループ内の証券子会社等に経路を限定するものだ。
一方、ロイターは「銀行グループの証券子会社が暗号資産サービスに参入できるよう規制見直しを検討、加えて銀行の“投資目的保有”解禁の可能性も協議」と伝えた。目的は市場アクセス拡大と競争促進で、楽天ウォレットやSBI系が優勢な現状に銀行系が追いつく構図を描く。

背景(制度・産業・技術)

高い変動性と財務健全性への懸念が強いため、2020年の監督指針で銀行の投資目的保有は事実上禁止とされ、顧客保護優先の運用が続いてきた。
金融庁は制度の所管を資金決済法から金商法に移し、内部者取引規制等を適用する方向で作業を進めている。2026年の通常国会への法案提出が視野に入る。国内口座は2025-01時点で約1,214万口座、預託金残高約5兆円と、投資家保護の重要性は増している。

市場への影響(価格・流動性・フロー)

銀行系子会社の参入は顧客基盤と信頼を梃子に流入と競争を促す一方、適合性・重要事項説明の義務付けが強化されるため、拡大は段階的となる。
ロイターは、銀行系証券にリスク説明の徹底を求める見通しを指摘。既存の証券グループ主導の市場に銀行系チャネルが加われば、手数料やカストディ品質などで競争が活発化する余地がある。

関連銀行の暗号資産投資解禁へ

論点とリスク(賛否の整理)

保有解禁は自己資本・流動性規制の上乗せを前提とするため、バランスシート負担と運用体制整備が課題となる。
WGでは「投資目的の取得・保有」解禁案に慎重論も提示された。国際的にはバーゼル準拠で無担保型暗号資産に1,250%リスクウェイト相当の厳格な資本規制が適用される方向で、EUもCRRⅢ下で実装を進める。国内で保有解禁が進んでも、資本・開示・ガバナンスの負担は小さくない。

各国報道の焦点(国内/海外)

国内は「保護・健全性」、海外は「解禁・競争」を強調するなど、同一方針でも見出しのトーンが対照的となった。

日本国内

朝日は販売禁止維持を強調し、日経系ソースを引用した海外配信は子会社参入の経済効果を前面に出したため、慎重姿勢と市場開放の二面性が併記された。

英語圏(米・国際通信)

Reutersは「銀行グループの暗号サービス提供検討」を速報、Bloombergは「銀行の投資目的保有容認を検討」と伝え、ボラティリティと投資家保護義務を併記した。

中国語圏(中国本土・台湾・香港)

本土メディアは「監管・風險・穩健」を強調、台湾系は「散戶に信頼できる参入経路」を評価し、銀行系の取引所運営容認検討にも触れた。

韓国

毎日経済は「“ビットコイン、株のように”」の見出しで解禁色を強調し、取引所運営許容の検討にも言及した。

欧州(フランス・ドイツ)

Yahoo仏語版やJournal du Coinは「許可・改革」を軸に報道、独語圏ではMarketScreener(ロイター翻訳)が競争促進とリスク周知を整理した。

今後の注目点(時系列)

10月22日のWGで論点整理が進み、2026年の金商法改正案提出が視野に入るため、販売・保有・内部者取引規制の設計と移行スケジュール開示が焦点となる。
WG開催の正式案内は金融庁が公表済み。BloombergやCoinPostも「保有解禁の検討開始」を速報しており、制度骨子の具体化とパブコメの段取りに注目したい。

▽ FAQ

Q. 銀行・保険会社本体は顧客へ販売できる?
A. 2025-10-22報道では販売禁止を維持し、グループ子会社等での提供のみ容認の方向です。

Q. 銀行の“投資目的”保有はいつ決まる?
A. 金融審議会WGで協議を進め、2026年通常国会に金商法改正案提出が目標と報じられています。

Q. 国内の利用者規模は?
A. 金融庁資料で2025-01時点の国内口座数は約1,214万、預託金残高は約5兆円と示されています。

Q. 海外の評価は?
A. 英語圏は「解禁・競争」、国内は「保護・健全性」、中国語圏は「監管・風險」、韓国は「市場開放」を強調する傾向です。

■ ニュース解説

販売は禁止を維持し子会社経由での提供を認める方向のため、チャネルは拡張するが母体直販は抑制され、金商法移行と内部者取引規制で「金融商品」としての保護枠が強化される。
投資家の視点:利用者は説明義務・適合性・分別管理・カストディの堅牢性・スプレッド/手数料・自己資本の厚みを比較し、急拡大局面ではレバレッジや集中リスクを避けるのが無難だ。

※本稿は一般的な情報提供であり、投資助言ではありません。

(参考:金融庁,朝日新聞,Reuters,Bloomberg