FRB、新型活動監督プログラム終了

▽ 要約

特別監督終了:FRBが特別監督を廃止し通常監督へ移行。
議員反応:ラミス氏は「チョークポイント終止符」と評価。
銀行動向:評判リスク廃止でビジネス判断が平準化。
市場反応:BTCは短期反落も長期は前向きとの見方。

銀行の暗号資産ビジネスは再び拡張するのか。FRB 新型活動監督プログラム 終了により特別審査は解かれ、監督は通常枠へ戻るため、銀行は一般の安全性・健全性基準の下で暗号資産サービスを検討しやすくなる。投資家にとっては資金流入経路の明確化という実務的な恩恵が期待される。

何が「終了」したのか——制度の要点

新型活動監督プログラムをサンセットし得られた知見を通常監督に統合したため、創設根拠となったSR 23‑7は撤回された。
2023年に導入された同プログラムは、銀行の暗号資産・DLT・フィンテック関連業務を横断的に重点監督する枠組みだった。FRBはこの2年間で活動の実態とリスク管理の把握が進んだため、監督は通常プロセスに回帰する。結果として、銀行は暗号資産企業への預金・決済・貸付、DLT活用、ステーブルコイン関連などを既存のリスク管理原則で評価される。

SR 23‑7撤回の意味合い

事前承認色の強い運用は後退し、既存の安全性・健全性基準での審査に一本化されたため、参入の手続きと期待値が平準化した。
2025年4月にはFRBが暗号資産・ドル連動トークンに関する先行ガイダンスを撤回、FDICやOCCも2023年の共同声明の撤回やプロセス明確化に動いた。これにより、暗号資産関連業務は「特別扱い」から「一般原則による評価」へと位置付け直された。

「オペレーション・チョークポイント2.0」との関係

標的型監督の終了を受け、銀行への暗黙圧力が緩和されたとの受け止めが広がったため、議会・業界から歓迎の声が相次いだ。
ラミス上院議員は「終止符を打つ大きな勝利」と投稿し、マイケル・セイラー氏も「ビットコインと銀行の道がクリアに」と反応した。他方、当局は政治的独立を強調しており、監督は通常フレーム内で継続する。

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銀行・市場へのインパクト

評判リスクの監督要素が除外され特別監督も終了したため、銀行のビジネス判断は市場原理と具体的リスクへ回帰し、暗号資産企業へのサービス提供は再加速しうる。
ABAは評判リスク廃止を「透明性と一貫性の向上」と評価。銀行は暗号資産カストディや決済連携、ETF有価証券との担保取引などを、従来の信用・流動性・オペリスク管理の延長で設計できる。もっとも、AML/CFTや運用・サイバー面の手当は従前どおり求められる。

短期の価格反応と長期の需給

公表直後のBTCは一時下落したが、制度明確化と銀行チャネルの拡充で長期の実需が支えられるため、評価はおおむね前向きだ。
発表日前後、BTCは日中で約1%の下落局面があり一時約11万6,900ドルまで下落後、11万7,000ドル前後で推移。ETHも数%の下落を伴ったが、銀行・機関投資家の導線整備は需給面の下支えとなる。なお米国の現物ビットコインETFは2024年1月に承認済みで、すでに重要な吸収口として機能している。

国際比較と競争力

EUのMiCAが段階的に適用され、日本や香港も枠組み整備を進めるため、米国の回帰はデジタル資産ハブ競争での不利回避に資する。
EUは2024年以降順次MiCAが適用され、ステーブルコインやサービス提供者に包括的規律が導入された。日本は改正資金決済法で「電子決済手段」としてのステーブルコイン制度を2023年に施行、香港も取引所・カストディ等のライセンス制を拡張中だ。米国の通常監督回帰は、これらと土台を揃える動きといえる。

▽ FAQ

Q. FRBは何をいつ終了した?
A. 2025年8月15日に新型活動監督プログラムを終了し、SR 23‑7を同時に撤回した(米国・FRB)。

Q. 銀行検査の「評判リスク」はどうなった?
A. 2025年6月23日にFRBが検査から除外、監督資料の文言も削除した(米国・FRB)。

Q. 市場価格への短期影響は?
A. BTCは発表前後に一時約11万6,900ドルまで下落、終値は11万7,000ドル前後で推移した(米国・ドル建)。

Q. 議会・業界の反応は?
A. ラミス上院議員が「大きな勝利」と評価、ABAも過剰な特別監督の廃止を歓迎した(2025年8月)。

Q. ETFとの関係は?
A. 現物BTC ETFは2024年1月10日にSECが11本を承認済みで、銀行経由の投資導線を既に形成している。

■ ニュース解説

FRBが特別監督を終了しSR 23‑7を撤回したため、暗号資産関連は通常監督に戻り、あわせて評判リスクの除外で銀行判断の主軸が具体的リスクへ回帰した。
FRBは2025年8月にプログラムを廃止し、6月に評判リスクを検査から外した。2023年の銀行破綻と市場混乱を受けた暫定的な強化監督を経て、リスク理解の深化と他庁の撤回・整理が進んだため、銀行の暗号資産関与が再拡大しうる一方、AML/CFTやオペリスク管理の厳格運用は不可欠である。

投資家の視点:①短期は政策・金利・需給に左右されるため分散と現金比率の管理を徹底。②中期は銀行チャネルやETFを通じた実需増をモニター(新規提携・カストディ開始・貸借取引拡張)。③規制文書と監督実務(手続要件・運用FAQ)のアップデート確認。④ボラティリティに備え、想定最大ドローダウン前提のポジション設計を。

※本稿は投資助言ではありません。

(参考:Federal Reserve Board,FDIC,OCC