▽ 要約
調達 16.5億ドル私募でSOL財務を開始。
ステーブルコイン 現金+ステーブルコイン建てで拠出。
基盤 Q2取引89億件・DEX日次約40億ドル。
市場 発表でSOL上昇、FORDは一時+128%。
巨大な私募でSOLを買い増す狙いは何か――Forward IndustriesのSolana財務戦略は、出資陣の設計と運用手順まで定義した“企業型DAT”の本格事例であるため、用途・価格影響・リスク管理を一次資料で解説する。
資金調達の骨子と体制
16.5億ドルのPIPEを現金とステーブルで確定したため、SOL取得を主用途とする財務転換と取締役会体制の強化が同時に進んだ。
2025年9月8日に私募のコミット(現金+ステーブル)を公表、9月11日にクローズ。主導はGalaxy Digital・Jump Crypto・Multicoinで、既存大株主C/M Capitalも参加。Cantor Fitzgeraldが主幹事、Galaxy投資銀行部門が共同プレースメント兼FA。取締役会はMulticoinのKyle Samani氏が会長、GalaxyのChris Ferraro氏とJumpのSaurabh Sharma氏がオブザーバーとして参画。Galaxyとは財務運用支援のサービス契約も結んだ。
なぜSolanaか:技術・需給・制度の三要因
高スループットと低手数料に加え、DeFi実需と開発者基盤が拡大したため、BTC/ETHに続く機関資金の受け皿としての妥当性が高まった。
Solanaは高性能L1として並列処理に強みがあり、22年以降の改善を経てQ2’25に取引89億件、DEX日次約40億ドルの実需が確認された。24年の新規開発者は7,500人超。運用面ではJumpのFiredancer(第2バリデータクライアント)開発、Galaxyは有力バリデータとして取引・貸付・ステーキング基盤を提供可能。こうした実需・開発・インフラの三位一体で、Forwardは「SOLを中核とする財務」を選択した。
出資陣の狙いと役割
DATモデルの成功確率を高めるため、資本と専門性を束ねて運用・リスク管理・ナラティブ形成を分担した。
Galaxy Digital
大規模バリデータ運用とトレーディング/レンディング/ステーキング支援を提供するため、実行力とリスク管理の両輪が強化される。
Jump Crypto
FiredancerやDoubleZero等の基盤開発を背景に、ネットワーク性能と耐障害性の向上を活かした運用最適化が進む。
Multicoin Capital
Samani氏が会長として戦略とガバナンスを主導するため、資本市場での“SOL per share”最大化ナラティブを一貫して打ち出せる。
資金使途とエコシステムへの寄与
純資金は主にSOL取得と財務オペに充てられるため、ネットワークの流動性供給とセキュリティ強化に資する。
用途は①SOL現物の取得・保有、②ステーキングやバリデータ委任、③レンディング・AMM等の流動性提供、④オンチェーンM/M・裁定などの能動運用。Galaxyとのサービス契約で運用とリスク管理を制度化し、個人・小規模ファンドとは異なる規模感・安定性でSolana DeFiに厚みを与える。
ステーブルコインの役割
即時決済とオンチェーン展開の迅速化が必要なため、コミットメントの一部をステーブル建てとし、SOLへの段階的転換や流動性バッファー機能を確保した。
法定通貨比で為替・送金遅延・手数料を回避しつつ、必要に応じてSolana版USDC等で即時運用に接続できる。市場局面に応じてSOL購入のペース配分が可能で、ボラティリティ管理にも有効だ。
市場反応と価格動向
9月8日の発表直後にSOLは約+2.3%、FORDはプレで最大+128%となり、9月中旬のSOLは230ドル前後へ上昇した。
9月11日のクローズ公表時もFORDは再度上伸。SOLの年初来高値圏接近に際し、過去のATHは2025年1月19日の294.33ドルであり、直近は時価総額約1,280億ドル・時価総額5位(BNBと拮抗)水準。オンチェーンではGalaxy関連の大口流出入が観測され、私募資金の実行フェーズ入りを示唆する動きも報じられた。
主要Solana財庫企業の比較
Forwardの予定規模は既存最大層を大きく上回るため、公開企業として世界最大のSOL保有主体に躍進する公算が高い。
企業名(ティッカー) | 推定保有SOL | 評価額(約) | 備考 |
---|---|---|---|
Forward Industries(FORD)計画 | 600〜700万枚 | 16.5億ドル(想定配分) | 私募資金を主にSOL取得へ充当予定 |
Upexi(UPXI) | 約200万枚 | ― | 公開情報ベースの推定 |
Sharps Technology(STSS) | 200万枚超 | 約4億ドル(調達) | 2025年8月に資金調達クローズ |
DeFi Development(DFDV) | 約203万枚 | ― | 公開情報ベースの推定 |
※枚数は開示・価格により変動。Forwardの配分・買付ペースにより市場インパクトも段階的に現れる。
▽ FAQ
Q. Forwardの私募16.5億ドルはいつ成立した?
A. 2025年9月11日にクローズを公表。9月8日にコミット発表済みで、主導はGalaxy・Jump・Multicoin。
Q. SOLの直近ATHと現在の水準は?
A. ATHは2025年1月19日の294.33ドル。9月中旬は230ドル前後で、時価総額は約1,280億ドル。
Q. 出資陣の実務的支援は?
A. Galaxyが取引・貸付・ステーキングと管理支援、JumpがFiredancer等、Multicoinが会長就任で統括。
Q. 他社のSolana財庫規模は?
A. Upexi約200万SOL、Sharps約200万SOL超、DFDV約203万SOLで、Forward参入が最大級となる見込み。
■ ニュース解説
私募がクローズしSOL取得・運用の制度面が整ったため、Solana実需と企業財務の多様化が同時進行で強化される一方で、市場ボラティリティや規制の不確実性には留意が要る。
投資家の視点:資本配分・運用手順・開示頻度(SOL per shareやステーキング方針、カストディ/リスク管理体制)を継続点検し、調達から実需化(買付・配分・運用)の速度と執行品質を評価軸に据えることが一般的に有益。なおSOLはATH未達時の戻り局面で短期変動が大きく、段階的エントリーやヘッジの併用などリスク許容度に応じた管理が前提となる。
※本稿は投資助言ではありません。
(参考:Business Wire)