8月19日:ETH87万枚アンステーク待機は売り圧か

▽ 要約

アンステーク:87万枚待機、解放は約15日後から分散
金利上昇:Aave年利10.6%で循環レバ崩壊
ペッグ乖離:stETH割安0.4%とLST清算懸念
機関流入:半月で183万枚増が下支え

ETHの大量アンステーク待機は直ちに暴落を招くのか。結論は「短期衝撃は限定的だが高値波乱はあり得る」である。ETH87万枚アンステーク待機を軸に、金利ショックやLSTペッグ乖離、機関フローとPoS退出上限のバランスを整理し、当面の需給と投資家が見るべき水準を具体化する。

アンステーク待機87万枚の正体と背景

金利急騰とLSTペッグ乖離、委任先の機関シフトが重なったため、検証者の退出申請が歴史的規模に達したが、放出はPoSの上限制御で分散する。
AaveのETH借入年利は一時10%台へ急伸し、ステーキング利回り(約3%)を上回ったため、循環レバレッジの妙味が消えた。結果としてレバ解消のためのアンステーク申請が増加した。並行してstETHなどLST/LRTが一時0.4%のディスカウントとなり、裁定・清算警戒が退出需要を押し上げた。月次ではLidoからの流出が約27.9万ETH、シェアは24.4%へ低下し、Figmentなど中心化事業者への資金移動が目立つ。さらに4月安値からETHが約2.2倍超まで反発したことも一部の早期ステーカーの利確動機となった。

金利ショックで循環レバが崩れた

借入コストがステーキング利回りを大幅に上回ったため、担保にETHやLSTを置いてETHを借り増す循環取引は逆ザヤとなった。
AaveのETH借入年利が2.5%→10.6%へ上昇した局面では、レバレッジの維持が不利となり、ポジション縮小や返済のためのアンステーク申請が波状的に強まった。

LST/LRTのペッグ乖離と清算リスク

stETHがETHに対し約0.4%ディスカウントとなったため、裁定と清算警戒が同時に走り、退出申請の混雑を助長した。
wstETHの約32%が借入の担保に使われるとの推計や27.8万wstETHが高リスク帯にあるとの分析もあり、ディスカウント拡大時は評価額低下→清算圧力→現物ETH売りの連鎖を警戒する向きが増えた。

委任先は分散化から“合規・責任”へ

DAO運営の不確実性や監査可能性、責任所在の明確さを重視する機関の要求を受け、Lido等からBinance/Coinbase/Figment等へ資金が移りつつある。
Lidoの単月流出は約27.9万ETH、対照的にFigmentは単月で約26.2万ETHの流入となり、ステーキング市場のパワーバランスは「分散」から「合規・安定」重視へと揺り戻しが起きている。

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需給の現在地—放出ペースと吸収力

退出はepochあたりの上限で平準化されるため、解放は約15日後から段階的で、即時の供給ショックは抑制される。
バリデータ退出は1epoch(約6.4分)あたり許容量が定められ、待機87万枚も一括解放されない。一方で、直近半月に機関の純増が183万枚、ETF/準備金の累計保有が約1,026万枚との推計があり、解放分の相当部分を市場が吸収し得る地合いも示されている。

機関フローが作る「買い手の土台」

ETF・準備金・企業財庫(TCo)による機械的な買いが継続する限り、売り圧は相対化される。
現物ETFの資金循環や企業の財庫組入れは、裁量の度合いはあれど、需給の「底」を形成しやすい。短期の反応は別として、中期のネット吸収力は意識される。

テクニカル観点—支持・抵抗とボラ

8月18日にETHは一時4,300ドル割れ、4,100ドルの維持が強気継続の目安で、4,793ドル突破で5,000〜5,200ドルが視野となる。
足元は高値圏の持ち合いから上下ブレが起こりやすい。退出開始の近接期はヘッジ需要が高まり、短期ボラ拡大に留意したい。

8/19トピック速報—ステーブル・インフラと資金循環

ステーブル金融や高速L1/インフラの進展は、手数料・結算速度・UXを底上げするため、資金循環の裾野を広げる。
CircleはBFTエンジン「Malachite」を取得し、ステーブル金融特化のL1「Arc」テスト網を年内予定。USDT専用チェーンを標榜する「Stable」は無料P2P/亚秒結算/AAを前提に、USDTオペ最適化の“レール”構築を狙う。空投面ではBlessが$TIMEの配布計画を公表し、ロック/ベスティング選好に応じた倍数配分で初期コミュニティ形成を急ぐ。周辺ではハイパーリクイッドのエコシステム拡張、グレースケールの新規信託ラインナップ、RWA/決済の資金調達など、現物需給だけに依存しない成長ドライバが広がっている。

▽ FAQ

Q. ETHのアンステーク待機はいつ解放されますか?
A. 約15日4時間後から順次放出されますが、PoSの退出上限により分散します(2025年8月時点)。

Q. 金利急騰はなぜ退出を増やすのですか?
A. Aave年利10.6%が利回り約3%を上回り、循環レバ取引が逆ザヤ化してレバ解消が進んだためです。

Q. LSTペッグ乖離はどの程度でしたか?
A. stETHがETH比で約0.4%ディスカウントとなり、裁定・清算警戒が退出需要を押し上げました。

Q. ステーキング基盤のシェア変化は?
A. Lidoは単月−27.9万ETHで24.4%へ低下、Figmentは+26.2万ETH増で機関志向が強まりました。

Q. 機関フローはどれほどの規模ですか?
A. 直近半月で機関純増183万枚、ETF等の累計は約1,026万枚保有との推計が出ています。

■ ニュース解説

退出待機が記録更新となった事実は金利急騰・LSTペッグ乖離・委任先見直しが背景のため、PoS退出上限で放出が分散され需給衝撃は吸収余地がある。
投資家の視点:短期は4,100〜4,793ドルのレンジ攻防に備え、分割でのエクスポージャー管理・ヘッジ選択肢の確保が有効です。機関フロー継続と退出消化の進捗を並行監視し、イベント集中期はポジションサイズを抑える判断も検討しましょう。

※本稿は投資助言ではありません。

(参考:PA一線