▽ 要約
INFOFi:ヴィタリックがAI×暗号の「情報金融」を提唱
参画拡大:BlackRockやVisa、国内銀行がRWA・決済で実装
企業保有:BMNRが1.5百万ETHで世界首位級のETH財務保有
資金動向:ETH ETF流入がBTCを上回る日・週が出現
金融はAIで高度化し、AIは決済・担保にオンチェーンを要するため、イーサリアム 金融 AI 融合は理念ではなく実装局面に入った。RWAの実験、ETF資金流入、企業トレジャリーがこの潮流を裏づける。本稿は最新の一次情報をもとに、ユースケースとリスク、価格連動銘柄の見方までを解説する。
なぜ「金融×AI×イーサリアム」か
AIが生成・評価する情報とインセンティブを可視化しうるため、検証可能な取引土台としてイーサリアムの有用性が高まっている。
ヴィタリック・ブテリンは2024年以降「情報金融(Info Finance)」を提示し、予測市場やデータ市場の拡張、AIと暗号の接続を論じた。スマートコントラクトは、支払い・担保・配分ルールをコード化でき、AIエージェントの自動実行と整合する。DeFi/L2で培われた決済・清算基盤は、AIが取引主体化するほど価値が増す。
Info Financeの文脈
AIが評価した知見に資金を結び、正確性に報酬を配分できるため、予測市場から広義の情報金融へと応用が広がった。
予測の当否に応じた支払い、モデルやデータのトークン化、アクセス権の自動配分など、AIの経済活動をスマコンで検証可能にする設計が志向されている。
参画する金融機関とRWA実装
大手はパブリックL1/L2で実証を前進させ、RWAと決済の両面で実装が進む。
BlackRockはBUIDL(トークン化MMF)をイーサリアム上に発行しAUMを拡大、VisaはUSDCのイーサリアム結算を開始・拡張し、CoinbaseはL2「Base」で開発基盤を供給する。日本では東京きらぼしFG・みんなの銀行・四国銀行がEthereum互換チェーンで準拠型ステーブルコインの実証を行った。
企業トレジャリーとBMNRのインパクト
大口のETH保有が価格連動型の上場銘柄を生み、市場の価格発見に新しい層を加えつつある。
米BitMine Immersion(NYSE American: BMNR)はイーサリアムを財務戦略の中核に据え、2025年8月までにETH保有を約1.5百万枚へ拡大し評価額は約66億ドルに達した。調達後短期間での積み増しと「供給の最大5%獲得」を掲げた目標は、ETHの需給とトレジャリー戦略の議論を加速させた。
保有規模・目標・調達
短期の調達・取得を繰り返したため、開示ベースで保有枚数は段階的に増加した。
7月の約2~5十億ドル相当から8月半ばの約66億ドル規模まで伸長し、世界の公開企業では最大級のETH保有を自称する。目標は供給の最大5%で、機関投資家の資本参加も伝えられている。
株価とETHの相関リスク
ETHが上昇局面ではBMNR株が大幅高となる一方、ETH急落時には連動下落する。
7月にはETHが4,000ドルを突破した局面でBMNRは日中14%高、月間では三桁上昇の報道もあったが、8月中旬のETH反落局面ではBMNRが7%下落した。保有資産の時価に収益が左右されやすい構造のため、変動性は高い。
他社比較(BTC偏重企業との違い)
ビットコイン企業は価値保全を軸にし、イーサリアム企業はユーティリティと利回り(PoS)も取り込む。
MicroStrategy(MSTR)は約62.9万BTCを保有し最大のBTCトレジャリーであり、Marathon(MARA)は4.9万~5.0万BTC規模の保有を開示している。一方BMNRはETH特化の財務戦略で差別化し、用途多様性(DeFi/RWA)へのレバレッジを狙う。
「フリッペニング」論争と見通し
資金フローと設計思想の差異が評価に影響するため、ETHがBTCを上回るには持続的な実需と制度資金の累積が鍵となる。
2025年夏以降、ETHのETF資金流入がBTCを上回る日・週が出現し、ETH価格は一時4,700~4,800ドル近辺まで接近した。とはいえBTCは固定供給と先行するETF規模で優位を保ち、ETHはスマコン基盤・PoS・手数料バーンにより実効供給を抑制しつつ、RWAやAI連携という“使われる需要”で差を詰める構図が続く。
ETFフローと機関マネー
連日のネット流入や単日10億ドル超の流入で、ETH ETFは存在感を高めた。
週次・5日累計でBTCを上回るデータも観測され、価格・出来高・先物建玉の連鎖で流動性が厚みを増した。他方、制度資金の回転は速く、リスクオフ時は流出も早い点に留意が必要だ。
設計・ユースケースの違い
BTCは上限2,100万枚のデジタルゴールドで、PoWと10分前後のブロックで希少性を担保する。
ETHはPoSとEIP‑1559のバーンで実効供給を抑え、数秒台のファイナリティとL2でスループットを拡張する。DeFi・NFT・RWA・AI連携を標準機能として抱える点が差別化だ。
市場の評価と留意点
強気派はユーティリティ拡大と制度資金の持続を重視し、慎重派は規制・手数料・競合L1/L2の台頭を懸念する。
企業トレジャリーの急拡大は需給に追い風だが、調達・会計・流動性の制約がボラティリティ源にもなる。分散・ヘッジ・流動性管理の徹底が前提となる。
▽ FAQ
Q. “情報金融(Info Finance)”とは?
A. 予測市場を拡張し、AIと暗号で検証可能な情報に資金を配分する概念(2024年11月提唱)。
Q. BMNRのETH保有と目標は?
A. 2025年8月に約1.52百万ETH(約66億ドル)を開示、供給の最大5%獲得を目指すと表明。
Q. いつETH ETFがBTC ETFを上回った?
A. 2025年7月中旬以降、日・週次でETHが上回る局面が出現、単日10億ドル超の流入も。
Q. ETHの供給は何枚で上限は?
A. 約1.207億枚で上限なし。PoSと手数料バーンで実効供給は横ばい〜減少局面も。
■ ニュース解説
ETH企業トレジャリーの拡大とETF流入が需給を締めたため、ETHの価格・流動性が厚みを増した一方で、連動銘柄(BMNR等)はボラティリティが増大した。RWAや決済実装は前進するが、規制・会計・市場流動性の制約が短期変動の主因となる。
投資家の視点:①単一資産・単一銘柄集中を避け分散、②現金同等物・先物でのヘッジ設計、③ETFフロー・現物建玉・清算動向のモニタリング、④発行体・会計方針・希薄化リスクの点検を基本に、段階的にエクスポージャーを調整。
※本稿は投資助言ではありません。
(参考:SEC,PR Newswire,MARA IR)