Ethereum NFTの出来高低迷とは?2023年7月の週末統計を検証

2023年7月29〜30日のEthereum上のNFT取引高は、約11,900ETHと報じられました。「約2年ぶりの低水準」という見出しは、週末2日分を比べた観測です。NFTの全歴史で最低だった、全チェーンで同じことが起きた、という意味ではありません。

旧記事には、対象チェーンの誤訳や、月間累計を1日の取引高とする誤りがありました。当時の報道を読み直し、比較の単位と2026年9月27日時点で確認できる統計の説明を整理します。

約11,900ETHは7月末の土日を合計した数字

Blockworksの2023年7月31日付記事は、PROOFの調査担当者NFTstats.ethの投稿をもとに、前の週末のEthereum NFT取引高が約11,900ETH、当時の換算で約2,210万ドルだったと報じています。同じ記事は、2021年7月以来の低い週末合計と説明しています。

対象は7月29日と30日の合計です。平日を含む7日間、7月全体、あるいは1件当たりの平均売買価格ではありません。また、旧記事にある「Tafang」という表記は対象ネットワークの名称として不適切で、ここではEthereumと訂正しました。

元のSNS投稿は今回の調査環境では取得できませんでした。したがって、約11,900ETHは報道が引用した観測値として扱い、元の計算処理や全取引を独自に再集計した結果とはしていません。集計対象のマーケットや除外条件まで検証済みと広げないことが重要です。

当時の担当者は、週末は他の日より活動が鈍りやすいとも述べています。土日の値を平日のピークと直接比べれば、曜日による差と市場の変化が混ざります。週末の低迷を確認する際は、同じ長さの週末どうしを比較するのが筋の通った読み方です。

「29%高い」と「29%減った」は同じではない

記事は、それまでの2023年の低い週末合計を約15,400ETHとし、新たな約11,900ETHより29%高かったと説明しています。この29%を、そのまま今回の下落率として使うことはできません。比率を求めるときに分母が違うからです。

概数で計算すると、差は3,500ETHです。11,900を基準にすると3,500÷11,900で約29.4%、以前の15,400を基準にすると3,500÷15,400で約22.7%になります。前者は以前の数字がどれだけ大きいか、後者は以前からどれだけ減ったかを示します。

この計算は報道された概数に基づく確認で、元データの精密な減少率ではありません。それでも、「29%上回っていた」という文を「29%下落した」と言い換えられない理由は分かります。上昇と下落を同じ割合で逆算すると元の値に戻らないのも、同じ分母の問題です。

また、比較対象はその年の従来の低い週末です。前週の取引高と明示された数字ではないため、「前週比22.7%減」と書くことも避けます。期間、金額、比較先をセットで残すと、数字だけが独り歩きしにくくなります。

OpenSeaの約66,000ETHは月間累計

同じBlockworks記事は、Duneを参照し、7月最終日の時点でOpenSeaのEthereum NFT月間取引高が約66,000ETHだったと紹介しています。6月の88,520ETHと比べた月次の話で、7月31日の1日だけで66,000ETHが取引されたという説明ではありません。

旧記事は「7月最終日に取引」と書いたため、集計時点と集計期間が入れ替わっていました。例えば「月末時点の売上」と「月末日の売上」は違います。前者は月初からの積み上げを指す場合があり、後者は当日だけの成績を指します。ニュースの翻訳でも、この区別を省くと桁の大きな誤解につながります。

参照先のDuneページは月間量を題名にしていますが、今回の取得ではグラフの数値やSQLの全文まで表示されませんでした。本記事は当時の報道を訂正する範囲にとどめ、後から取得した完全な7月確定値であるとはしていません。

さらに、OpenSeaという1つのマーケットのEthereum分と、Ethereum上の複数マーケットを対象とする週末集計は、範囲が違います。両者を足したり、単純に割ってOpenSeaの週末シェアを求めたりすると、期間も対象もそろわない計算になります。

四半期35%減は前年比ではなく前期比

CoinGeckoの2023年第2四半期報告が示したNFT取引高の35.0%減は、第1四半期から第2四半期への変化です。旧記事にあった「前年同期比」や「第1〜3四半期から第2四半期へ」という表記は誤りでした。対象は2023年の1〜3月と4〜6月です。

この四半期資料は7月末の週末観測より前の期間を扱います。両方が低迷を示しているとしても、同じ取引を同じ単位で測った一つの統計ではありません。広い期間の傾向を背景として示し、その後の短い期間の観測を別に置くことで、時系列が読みやすくなります。

Blurの融資サービスBlendについても注意が必要です。当時の報道が直接結び付けていたのは、NFT融資の伸びとサービスの開始です。「NFT売買の減少はBlendのせいだった」とする因果関係を、そこから取り出すことはできません。

融資では、担保を預けて資金を借りる取引と、作品を売って所有者が変わる取引が異なります。融資の取扱額が増えたことを、そのままNFT売上が増えたこととして数えると、別の活動を混ぜてしまいます。市場の動きを読む際は、取引という言葉の中身まで確認する必要があります。

ETH建ての量、ドル換算、取引件数を分ける

約11,900ETHと約2,210万ドルは、同じ週末の取引高を異なる通貨単位で表した数字です。NFTが11,900点売れたという意味ではありません。ETH自体の相場が動けば、同じETH建て金額でもドル換算は変わります。

例えば、ある月に100ETH分、別の月にも100ETH分のNFTが取引されても、その時点のETH価格が違えばドル建ての金額は一致しません。実際の長期間集計では、各取引時点の換算を使うのか、別の基準価格を使うのかによっても結果が変わります。異なるサイトのドル換算値を比べる前には、計算条件を合わせたいところです。

件数や人数も別に必要です。少数の高額作品の売買が止まった場合と、小額の売買が広く減った場合では、合計金額が似た減り方でも利用者の動きは異なります。購入者数、売り手数、取引件数、作品別の分布を見ずに、全ユーザーが同じ割合で離れたとは言えません。

「2年ぶりの低水準」はこうした特定の金額集計についての説明です。チェーン全体の停止、すべての作品の価値の消失、今後の回復不能を意味する表現ではありません。どの指標について低いと述べているかを残すことで、見出しが結論を広げすぎるのを防げます。

2026年のランキングも集計対象から読み直す

OpenSeaの2026年2月更新の統計ヘルプは、Topを指定期間の取引高や販売数などの累計指標、Trendingを最近の活動増加や継続的な活動による順位と説明しています。同じ画面に見えるランキングでも、順位の根拠が異なります。

同ヘルプは、OpenSeaの取引高にSeaDropによるミントと二次売買を含めると記しています。これは現在公開されている表示の説明で、2023年のDune集計が必ず同じ条件だったと証明するものではありません。古いグラフを現行画面とつなぐ際には、集計方法の変更も確認する必要があります。

CoinGeckoの2026年Q2報告でも、実物カードに結び付くコレクティブルのランダム販売と、通常の二次売買を分けて考える必要性が示されています。市場に含まれる商品や売り方が変わる中で、2023年の週末合計を現在の市場全体の代表値にはできません。

当時の記事を今読む価値は、低迷という結論だけにありません。週末と月間、前期比と前年比、ETH建てとドル建てを区別することで、別の時期のニュースも正確に読めます。本記事は過去の観測を整理したもので、2026年の底値判定や売買のタイミングを示すものではありません。

よくある質問

Q. 2023年7月末はNFT史上最低の出来高でしたか?

A. 報道はEthereum NFTの週末合計が2021年7月以来の低水準だったとしています。全期間・全チェーンの最低値という説明ではありません。

Q. OpenSeaは7月31日だけで66,000ETHを取引したのですか?

A. 当時の報道の数字は7月最終日時点の月間取引高です。単日の額ではありません。

Q. NFT取引高35%減は前年との比較ですか?

A. ここで取り上げたCoinGeckoの35.0%減は、2023年第1四半期と第2四半期を比べた前期比です。

この記事の出典

※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供であり、投資の勧誘や助言ではありません。暗号資産・NFTの価格は大きく変動します。最新の情報は各公式発表をご確認ください。