double jump.tokyo、ブロックチェーンゲーム撤退

▽ 要約

決算|2025年6月期の最終損失18.9億円に拡大
撤退|double jump.tokyoがBCG開発から撤退
終了|『魁』『ブレヒロ』は10/31で終了予定

投資家やユーザーの最大の関心は「なぜ撤退か」に尽きるため、double jump.tokyo ブロックチェーンゲーム撤退の背景を決算と市場環境から読み解く。本稿の結論は、赤字拡大に加えBCG市場の資金・需要縮小が重なり、主力2作の終了と事業転換に踏み切ったというものだ。

決算と撤退の全体像

官報掲載と公式発表が示す通り、DJTは2025年10月1日に主力2作の終了を告知し、同年10月3日に第8期の最終損失18.9億円が判明したため、BCG事業からの撤退を決めた。
同社は10月1日、『魁 三国志大戦』と『ブレイブ フロンティア ヒーローズ』の2025年10月31日15:00終了を同時発表した。翌10月2日、上野広伸CEOはXで「創業来のBCGから離れる」旨を明言。10月3日には官報の決算公告が報じられ、2025年6月期の純損失18億8736万円(前期11億2000万円)と赤字幅拡大が確認された。これらの一連の動きが撤退の文脈を補強する。

第8期(2025年6月期)決算の要点

最終損失は18億8736万円で前期比拡大となったため、先行投資の回収遅延と収益伸び悩みが収益性を圧迫した。
期末の純損失は前期の約1.7倍。非上場ゆえ詳細な売上内訳は未開示だが、大型IP開発や運営コストの固定化が響いたとみられる。株主資本の目減りも確認され、継続投資の選択肢が狭まる中で、収益性の高い領域へ資源を再配分する圧力が強まった。

サービス終了の理由と顧客対応

『魁 三国志大戦』は内部目標未達と体制維持の困難化を理由に、『ブレヒロ』も同日に終了告知となったため、返金・AMA実施など透明性を意識したクローズ計画が始動した。
『魁』は未使用の有償「魁玉」を返金、受付は10/31までで、12月末までの返金完了を予定。L2「SG Verse」の停止やNFTの他チェーン再発行検討にも言及している。『ブレヒロ』は2019–2020年に立ち上がったBCGの代表作で、今回チームがクラウドファンディングを通じた独立運営の可能性も表明した。

背景—市場構造と国内事例

Q2 2025は投資額が前年同期比93%減、非アクティブ化したゲーム系DAppsが300超となったため、P2E中心のモデルの脆弱性が顕在化した。
P2Eは先行者の利確売り圧と新規流入の鈍化が同時に進みやすく、NFT・トークン価格の下落局面ではゲーム内経済が縮退しやすい。Web3参入のUX・法規制・サーバー運用など非開発コストも高く、マネタイズが不安定になりやすい。

P2Eモデルの限界と設計課題

既存ゲームと違いプレイヤーの投機的行動が経済圏を左右しやすいため、需給設計・放出スケジュール・報酬の持続可能性を両立させる難度が高い。
ユーザー獲得コストが上昇する一方でLTVは相場に揺らぐ。オンボーディング、KYC/課金、二次流通の規制対応まで含めた「総合設計」が欠けると、短期で市場淘汰が進む。

国内の終了例とシグナル

2025年は『魁 三国志大戦』のほか、『CAPTAIN TSUBASA -RIVALS-』が11/28終了予定、『TOKYO BEAST』は8/24終了と、短期撤退の事例が続いたため、事業の持続性に市場が厳しく反応している。
一方で、セガは2023年時点で「P2Eは退屈」と慎重姿勢を示しつつ、Web3活用の可能性自体は否定していないなど、大手の姿勢は模索が続く。

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今後の方針—OasysトレジャリーとN Suite集中

DJTはOasysのOASを軸にしたトレジャリー支援と、法人向けWeb3ウォレット「N Suite」に集中するため、開発者からインフラ・エコシステム支援者へと軸足を移す。
同社はOasysの黎明から関与してきた経緯があり、バリデータ/開発支援・Verse構築等の知見を活かし、裏方の財務・運用・ガバナンス支援に注力する方針だ。

トレジャリー事業の狙い

OAS保有・流動性管理・プロジェクト投資・トークン設計支援を通じ、ネットワークの活動量とエコシステム価値の最大化を図る。
ゲーム単体の収支に依存せず、複数案件のポートフォリオでリスク分散しつつ、コミュニティ・デベロッパー両面の支援で循環を作る構えだ。

N Suite—法人需要の取り込み

複数承認や権限管理、監査ログ、ステーブルコイン対応などエンタープライズ機能を備え、2023年時点で導入60社超の実績がある。
大手通信・広告・ゲーム企業の採用例も公表されており、ウォレットの内製負担をSaaSで代替する提案は、市況悪化下でも相対的に安定的な収益源となり得る。

▽ FAQ

Q. 最終損失はいくらで前年からどう変化?
A. 2025年6月期は18億8736万円、2024年6月期の11億2000万円から赤字拡大と報じられた(官報公告ベース)。

Q. サービス終了の日時と対象は?
A. 『魁 三国志大戦』『ブレヒロ』はいずれも2025年10月31日15:00(JST)にサービスを終了予定である。

Q. 撤退後の注力領域は何か?
A. OasysのOASを軸にしたトレジャリー事業と、法人向けWeb3ウォレット「N Suite」の2本柱に集中する。

Q. 返金やチェーンの扱いはどうなる?
A. 『魁』は未使用の有償「魁玉」を返金、申請は10/31まで。L2「SG Verse」は停止予定でNFT再発行も検討中である。

■ ニュース解説

決算公告で純損失18.9億円と赤字拡大が明らかになり、同時期の公式発表で『魁』『ブレヒロ』の10/31終了とBCG撤退が示されたため、DJTは収益構造の再構築に動いた。市場ではQ2 2025に資金調達が93%減、非アクティブ化が300超となるなど、P2E中心のモデルの脆弱性が顕在化した一方で、大手は慎重にWeb3活用を模索している。
投資家の視点:短期ではBCG関連のフロー縮小が続く前提で、①運営コストと獲得コストの見直し、②トークノミクスの需給バランス再設計、③ウォレット・トレジャリー等のインフラ領域の安定収益化に注目したい。案件別の資金計画・KPI(継続率/ARPPU/二次流通)が改善傾向にあるかを確認するのが無難である。

※本稿は一般的な情報提供を目的としており、投資助言ではありません。

(参考:double jump.tokyo