米政府閉鎖で広がるデベースメント・トレード:ビットコイン最高値

▽ 要約

ビットコイン最高値 政府閉鎖下で「デベースメント」進行
金は3,900ドル台、株も最高値圏 資金は安全・成長双方へ
FRB・KC連銀の新研究 量子脅威と高齢化が長期需要を左右

米政府の一部閉鎖でマクロ不確実性が高まる中、ビットコインは過去最高値に達し、「デベースメント・トレード」が鮮明になった。すなわち、ドルや米国債から価値保存・成長資産(BTC・金・株)へ資金が移る構図である。本稿は一次情報に基づき価格動向、企業、政策、学術研究を整理し、投資判断に資する視座を解説する。

ビットコイン最高値とデベースメントの進行

政府閉鎖でデータ空白が生じ不確実性が増したため、BTCは安全資産・価値保存先として再評価され最高値を更新した。
週末にBTCは125,000ドル超の史上最高値圏に到達し、年初来でも30%超の上昇を示した。金は1オンス3,900ドル近辺に乗せ、同時にS&P500やナスダックも最高値圏へと推移した。市場ではドル・米債からBTC・金・株へと分散する「デベースメント・トレード」が広がり、短期の価格弾性が高まっている。

BTC建て米国住宅価格の急低下(購買力の上昇)

BTCの上昇により米住宅をBTCで表す価格は2020年比で大幅低下したため、BTCの購買力は顕著に増した。
統計では2020年の米中古住宅中央値を購入するのに必要なBTCは30前後だったが、2025年は4~5BTC程度まで減少したとの推計が多く、BTC建てでは約85~90%下落のイメージとなる。これは「ドル建て価格上昇×BTCの価値上昇」の相対効果を示すに過ぎず、ボラティリティと流動性の観点での留意は不可欠だ。

金と株式の同時高—安全と成長の両にらみ

米政治・財政不安が続いたため、投資家は金で安全性を、株で成長性を、BTCで希少性・オルタナ性を同時に取りにいった。
金現物は3,900ドル近辺まで上昇し、主要株価指数も最高値圏を更新した。リスク・パリティの観点では、ドル安・実質金利低下が同時に進む局面で金・BTC・成長株の同時高が起きやすい。

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企業動向—Strategy(旧MicroStrategy)の台頭

BTC集中戦略の再評価が進んだため、Strategy(旧MicroStrategy)の時価総額は暗号資産関連大手を上回る局面が出てきた。
同社は2025年に法的社名を「Strategy Inc.」へ変更し、10月時点の報道ベースで約64万BTCを保有する最大の企業投資家である。BTC高騰とエクイティ/転換社債等の資本調達を組み合わせ、時価総額は一時1,000億ドル前後に到達、取引所大手Coinbaseを上回ったとの観測も出た。もっとも、同社はBTC価格への感応度が極めて高く、株価ボラティリティと調達負債の管理が重要な経営課題である。

政策・マクロ—政府閉鎖とFRBのスタンス

政府閉鎖で公的統計の公表が滞ったため、市場は予測市場やオルタナ指標に依存し、シャットダウンの長期化期待がBTC上昇圧力となった。
今回の閉鎖は10月1日に始まり、10〜29日継続の確率が高いとの予測が示された。FRBは9月会合で25bp利下げを実施し、年内さらに複数回の小幅利下げの余地を示唆した。点描(ドットプロット)では2025年末の政策金利中央値が3.5〜3.75%帯に収れんする見込みで、実質金利の低下が価値保存資産の相対魅力度を押し上げやすい。

スタンチャートの見立て—「今回の閉鎖は重要」

米国リスクとの連動が強まったため、リサーチ筋はBTCの上値余地を引き上げている。
スタンダードチャータードのジェフ・ケンドリック氏は「今回の閉鎖はこれまで以上に重要」と述べ、ETF資金流入と合わせてBTCの13万5千ドル方向の加速を想定する。いわゆる「デベースメント・トレード」の文脈で、ドル・米債からBTC・金・株への配分シフトが続く限り、押し目は限定的との見立てが増えている。

FRB研究①—量子計算機とブロックチェーンのHNDLリスク

量子計算機の進展で公開鍵暗号が破られる将来に備える必要があるため、分散台帳の過去データに潜在するプライバシーリスクが指摘された。
FRB論文は「Harvest Now, Decrypt Later(今収集・後で復号)」を最大の脅威に挙げ、将来の量子計算機により過去の取引秘匿情報が暴露され得る点を強調する。今後の取引はPQC移行で守り得る一方、過去データの完全防御は困難で、運用者は早期の量子耐性導入計画を策定すべきだと提案する。

FRB研究②—高齢化が資産需要を押し上げる長期力学

世界的な高齢化で貯蓄超過が拡大するため、2100年までに資産需要が追加でGDPの200%分増えるとの推計が示された。
カンザスシティ連銀の研究は、長期的な実質金利低下圧力を通じてオルタナ資産への資金配分が高まり得ると分析する。規制明確化やETF普及が進めば、富裕・高齢層が「デジタル金」としてBTCをポートフォリオに組み入れる余地は拡大する。

▽ FAQ

Q. ビットコイン最高値はいつ・いくら?
A. 2025年10月5日頃に125,600ドル前後を記録し、8月の高値を更新した。

Q. 政府閉鎖はどの程度続く見込み?
A. 予測市場では10〜29日継続の確率が6割超とされ、不確実性が高い。

Q. Strategy(旧MicroStrategy)の現状は?
A. 2025年8月に社名変更、10月時点の報道で約64万BTC保有とされる。

Q. FRBは9月に何を決定?
A. 25bp利下げを実施し、年内の追加利下げを示唆。年末金利は3.5〜3.75%見通し。

Q. 量子計算機時代のBTCリスクは?
A. HNDLにより過去取引の秘匿性が侵食され得るため、PQC移行の設計が急務。

■ ニュース解説

政府閉鎖で公的統計が止まり不確実性が増したため、BTC・金・株に資金が分散し、BTCは最高値を更新した一方でドル・米債は重くなった。背景にはETF資金流入、利下げ再開、政治リスクの高まりがある。影響としては、オルタナ資産の相対優位と同時にボラティリティ上振れの可能性が高まる点が挙げられる。
投資家の視点:リスク資産の上振れと政策イベントの下振れを併走管理する。①現金・短期債・金・BTCのバランス配分、②イベント前後のヘッジ(ボラティリティ売買や先物カレンダー)、③単一テーマ(BTC集中・レバレッジ)の過度な比重回避、④量子耐性やカストディの技術リスク点検が有効だろう。

※本稿は一般的な情報提供を目的としており、投資助言ではありません。

(参考:Federal Reserve,BLS,Board of Governors,Kansas City Fed