金4,000ドル・BTC高騰と州コイン:デベースメントトレード

▽ 要約

ゴールド:年初来+50%超で4,000ドル突破、史上高更新
シャットダウン:連邦政府閉鎖が2週目入り、不確実性を増幅
ビットコイン:10/6に約12.6万ドルで過去最高、強気見通し続く
ステーブルコイン:北ダコタ州が「ラフライダー」を26年試験導入

投資家の関心は「価値の逃避先」に集中し、金は初の4,000ドル台、BTCも過去高に到達したため、デベースメントトレードの実像を見極める必要がある。米政府閉鎖の長期化と巨額債務への警戒が背景で、北ダコタ州の州発行ステーブルコイン計画も制度面の変化を象徴する。本稿は最新データと一次情報から全体像と投資判断の前提を解説する。

金・銀の急騰は何を映すか

金は政策不確実性と利下げ観測のため史上初の4,000ドルを突破し、銀も49.5ドル前後の最高値圏に達した。
米金先物は10月7日に4,004.4ドルで引け、日中高値は4,014.6ドル、スポットも約3,991ドルまで上伸した。年初来上昇率は約54%に達し、1970年代以来の勢いとされる。銀は8日に49.5ドル前後で史上高を更新し、年初来+70%近い伸びを示した。背景には米政府閉鎖の長期化、各国中銀の買い増し、ETF資金流入、実質金利低下観測が重なった点がある。ドル安・財政懸念が強まる局面では貴金属の相関上昇が起きやすい。

シャットダウンの市場波及

統計公表遅延と官庁機能の縮小を受け、投資家はシナリオの不確実性をヘッジするため金・銀を積み増した。
政府閉鎖は10月8日時点で2週目に入り、IRSは職員の約半数を一時帰休とした。連邦統計の遅延は政策金利の見通し評価を難しくし、安全資産への選好を一時的に増幅しうる。

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ビットコイン強気相場の持続条件

ETF経由の資金流入が続くため、BTCは10月6日に約12.58万ドルで過去最高を付けた。
足元の上昇は、現物ETFへの純流入、ドル安観測、政策不確実性の高まりが重なった結果で、週明け以降も高値圏での推移が観測された。金と並行する「デジタル・ゴールド」認識が資金の受け皿を拡げている。

シティの見通し—133,000→181,000ドル

ETF流入75億ドル前提のため、シティは25年末13.3万ドル、12カ月先18.1万ドルと据え置いた。
同社は年末までの上振れ余地を12%程度と見込み、26年にかけた強気シナリオを提示した。ETHの見通し引き上げも示され、イールド(ステーキング)獲得可能性への資金シフトが指摘された。

下振れリスク—8.3万ドルの弱気ケース

景気後退や金利再上昇のため、流入が鈍化すれば8.3万ドルまでの調整余地が残る。
高ボラティリティ資産であるBTCは、マクロショックやドル反発に敏感で、期末の益出しにも脆弱である。現物ETFの資金循環が反転する「需給の崖」も警戒が必要だ。

北ダコタ州「ラフライダー・コイン」の狙い

連邦法整備が進んだため、州営銀行が26年に州内銀行間で試験導入を目指す。
Bank of North Dakota(全米唯一の州営銀行)が発行主体となり、Fiservのデジタル資産基盤上で米ドル完全裏付けの州発行ステーブルコイン「Roughrider Coin」を展開する計画だ。まずは州内の地場銀行・信用組合向けの送金・決済を数分に短縮する省コスト用途に限定し、将来的な商用決済拡張も視野に入れる。州知事ケリー・アームストロング氏は「安全で効率的な金融エコシステム構築」を掲げ、80超の地域金融機関との連携強化を訴えた。

制度基盤—GENIUS法(2025年7月18日)

100%準備・月次開示・保険誤認の禁止等のため、州・連邦の枠組みを整合させた。
GENIUS法は安定通貨発行者の適格性、準備資産の範囲、外国発行体の扱い、誤認表示の罰則まで包括し、州のパイロット導入に法的確実性を与えた。ワイオミング州の先行事例(FRNT)に続く2例目として、相互運用の検証が進む見通しだ。

実装—Fiserv基盤と州内エコシステム

既存の勘定・決済ネットワークがあるため、金融機関への導入コストと運用負荷を抑えやすい。
Fiservは約1万の金融機関・約600万加盟店のネットワークを持ち、FIUSD基盤との相互運用を掲げる。インフラ事業者主導の実装は、民間ステーブルコインとの相互運用・清算リスク管理の設計を容易にする。

▽ FAQ

Q. 2025年の金価格はどこまで上昇した?
A. 10/7に先物が日中高4,014.6ドル、年初来約+51~54%。銀は10/8に49.5ドル台で史上高を付けた。

Q. ビットコインの最新予測(シティ)は?
A. 2025年末13.3万ドル、12カ月先18.1万ドル、弱気は8.3万ドル。ETF流入は約75億ドル想定。

Q. 北ダコタ州の「ラフライダー・コイン」は誰がいつ導入?
A. 州営Bank of North Dakotaが発行主体で、2026年に州内銀行・信金間の試験導入を予定。

Q. GENIUS法の要点は?
A. 2025/7/18署名。100%準備・月次開示・誤認表示禁止・外国発行体の要件整備で、州導入の法的確実性を向上。

■ ニュース解説

金とBTCが同時高となったため、背景にある政府閉鎖・利下げ観測・通貨価値希薄化懸念が資産配分を動かし、一方で州レベルのステーブルコイン実装は制度整備を受けて実験段階から実務段階へ遷移した。
投資家の視点:①金・銀はETFフローと実需(中銀買い、PV需要)のバランスを注視、②BTCはETF資金循環とマクロ(ドル、金利、景気)でシナリオ分岐、③州コインは送金原価と決済遅延の改善度合いをKPIに、相互運用の進展を確認。機関投資家は複数シナリオの前提を明示し、想定外の流動性収縮に備えるべきである。

※本稿は一般的な情報提供を目的としており、投資助言ではありません。

(参考:Business Wire,The White House,Congress.gov