高値掴みからの大損失:Cocoroで何が起きたのか

【要約】
・ある投資家がCocoroを高値付近で購入し、短期間で大きな損失を出した事例が報告された
・CocoroはBASEチェーン上に展開される新しいトークンで、急速な価格上昇から時価総額が一時100M(米ドル相当)を突破した
・EVM系チェーン上では、トランザクション内容をブロックチェーンエクスプローラー等を用いて詳細に追跡できる
・本記事ではCocoroを例に、dev(デベロッパー)がどのようにトークン分配や流動性プール(LP)の操作を行っているかを詳しく解説する

最近、チェーン上の解析で著名なアナリスト「余烬(Yu Jin)」氏が、あるアドレス(@CookerFlips)がCocoroを高値付近(約0.0836ドル)で購入し、その後わずか数時間で売却して約31.7万ドルもの損失を被ったというデータを共有しました。わずか数時間で59%を超える下落幅となり、現時点でCocoro関連の取引で最大の損失額を計上したアドレスとなっています。

Cocoroは「Own The Doge」コミュニティが公式に発行したトークンとして注目を集め、BASEチェーン上で運用されています。ブログ上でも“dog mom”という人物が新たに犬を迎え入れ、その記念としてトークンをローンチしたことが話題になりました。短時間で大きく価格が跳ね上がった一方、流動性が急増した初期段階での投機的な売買による大損失例が顕在化した形です。

EVM系チェーン上操作を理解する:Cocoroを例に解説

1. トークン分配(トークノミクス)の検証方法

1-1. 公表されたトークノミクスと実態を突き合わせる

Own The Dogeコミュニティの公式アナウンスによると、Cocoroのトークン分配は下記のようになっています。

  • 75%:流動性プール(LP)への割り当て
  • 20%:コミュニティへのエアドロップ
  • 5%:DAOリザーブ

実際にこれが公表通りかどうかは、BASEチェーン対応のツールやエクスプローラーで調べることが重要です。例えばOkxが提供するウェブツールでは「資金池の変化」を比較的わかりやすく確認できます。Cocoroのコントラクトアドレス(CA)を入力して検索すると、初期のLP追加トランザクションやトークンの移動が時系列で表示されます。

1-2. 実際のLP追加量をチェック

Okxの「資金池変化」欄で、ローンチ当初に合計で“375M枚のCocoro”を2回に分けてLPに追加した履歴が確認できます。合計750M枚が最初の流動性提供として使われたことになり、これは発行総量(1B枚)の75%に相当します。また、エクスプローラーで主要アドレスの保有状況を見ると、上位アドレスに20%と5%を合算した25%に近いトークンを保有するものが存在し、計算上も概ね合致することがわかります。

devアドレスの操作を追跡するには

2-1. devアドレスを特定する

最初にCocoroが作成されたときのトランザクション(トークンのmint情報など)を確認すると、dev(デベロッパー)がどのアドレスを使っていたかが判明します。BASEチェーンのブロックチェーンエクスプローラーでCocoroのCAを入力し、詳細情報を表示すると、トークン生成時の送信元となるdevアドレスや、作成時のトランザクションハッシュを確認できます。

2-2. devの具体的な動き

devアドレスからは、以下のような操作が順番に確認されます。

  • トークンを1B枚mint
  • 機能テスト用に別アドレスへ1枚送付して戻す
  • 375Mずつ合計2回に分けてLPに単独追加
  • 残りの250M枚を別アドレスへ送付

こうした細かいトランザクションはすべてブロックチェーン上に記録されています。

LP(流動性プール)のNFT化と所有権の推移

Uniswap V3では、プールを追加すると自動的に「LP-NFT」がmintされます。これはプールの詳細情報を記録するNFTで、これを所持しているアドレスがプールの実質的な所有者です。devアドレスのNFTトランスファーを確認すると、二つの単独プール追加時に発行されたNFTが、後から別のアドレスに転送されていることがわかります。つまり、devアドレスではなく、新たなアドレスがLP-NFTを所持している状況です。

LPロックは実行されているのか

コミュニティの公式アナウンスでは、「75%のLPを永久ロックする」という趣旨の情報もありましたが、ブロックチェーンエクスプローラーで該当アドレスのトランザクションを調べる限り、現時点でロック関連の処理は見当たりません。確認できるのは、既に一部の手数料(約170万ドル相当)を引き出した形跡のみです。
“ロック”をうたうプロジェクトは多い一方で、実際にロック専用のスマートコントラクトなどを利用していなければ、本質的にロックされていない可能性もあり得ます。投資家はこうした点を自ら調査することが重要です。

LPに関する詳細情報の確認方法

5-1. Uniswap公式アプリで確認

PCやスマートフォンからUniswap公式のdAppに接続し、ウォレットの「監視モード」や「読み取り専用モード」を使ってプールのNFTを所持しているアドレスを閲覧すると、流動性プールの価格帯設定や未収回の手数料、現在のプール内のトークン数量など、かなり詳細な情報が見られます。

5-2. URL直接アクセス

Uniswap V3のプールページには、NFTのトークンIDをURL末尾につける形で直接アクセスできます。CocoroのLPを例に挙げると、NFTのトークンIDが分かれば“https://app.uniswap.org/positions/v3/base/[TokenID]”の形式で接続可能です。

5-3. impersonatorを使ったシミュレート

impersonatorというオープンソースのツールを使い、任意のアドレスとしてdAppに「なりすまし接続」することも可能です。WalletConnectで連携して、閲覧のみを目的とした読み取り操作を行うことで、保有者と同じ視点でプール情報をチェックできます。
なお、実際にトランザクションを送信するには当該ウォレットの秘密鍵が必要ですが、readonlyの接続であればブロックチェーン上のデータを改変なく参照できるだけですので、監視目的には役立つ手法です。

上記のように、CocoroはBASEチェーンのEVM環境で実行されるトークンであり、その取引やデベロッパーの動きを透明性の高いブロックチェーン上で確認できるのが特徴です。トークンロックの実在可否から、devの送金状況、LP-NFTの所有権移転まで、すべてオンチェーンデータを駆使して検証できます。
しかし急激な価格変動期に飛び乗るリスクは高く、今回のように短時間で31.7万ドルもの損失が生じるケースもあります。EVM系チェーン上の操作内容を理解し、正確にトークノミクスを検証した上で投資判断を下すことが、暗号資産の世界では不可欠と言えるでしょう。

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