▽ 要約
方針転換 BofAがビットコインETF4本をCIOカバレッジし、暗号資産1〜4%配分を正式推奨
商品選定 BITB・FBTC・Grayscale Mini・IBITの大規模かつ低コストな4本に絞り込み
業界波及 1万5,000人超のアドバイザー提案解禁で他行や運用会社にも配分ガイド拡大圧力
Bank of AmericaがビットコインETF4本を正式カバレッジし、富裕層顧客のポートフォリオにビットコインETFなどビットコインETF経由で1〜4%の暗号資産配分を推奨し始めた背景と、他行との比較や市場への影響を投資家向けに整理する。

ビットコインETFが相次いで承認されてから約2年、ついにBank of America(BofA)が富裕層向けポートフォリオに暗号資産配分を明示的に推奨し、1〜4%の範囲でビットコインETFを組み入れるガイドラインを公表しました。従来は顧客要望があった場合に限定して取り扱っていた暗号資産を、1万5,000人超のアドバイザーが能動的に提案できるようになることで、米国のウェルス・マネジメント業界にとっても一つの転換点となります。本稿では、BofAのビットコインETFカバレッジ拡大の背景、選定された4本のETFの特徴、他の大手金融機関とのスタンス比較、市場・投資家・ビットコイン価格への影響を投資家目線で解説します。
BofAのビットコインETF推奨の全体像
BofAは2026-01-05から4本のビットコインETFをCIOカバレッジに追加し、富裕層顧客に暗号資産1〜4%配分を認めるガイドラインを提示することで、暗号資産を正式な投資対象として扱い始めました。
最初のポイントは、従来慎重だったBofAが「推奨資産」まで踏み込んだことです。これまではMerrillやプライベートバンクのプラットフォーム上で一部ETFへのアクセスは可能だったものの、アドバイザー側から積極的に暗号資産エクスポージャーを提案することは事実上制限されていました。今回、CIOカバレッジ入りと1〜4%という配分レンジが明示されたことで、株式・債券・オルタナティブと並ぶ一つの資産クラスとして暗号資産を扱う方針が明文化された形です。
第二に、対象プラットフォームがMerrill、BofAプライベートバンク、Merrill Edgeの3チャネルと幅広く、全米で1万5,000人超とされるアドバイザーが同じガイダンスの下で提案できることです。これにより、保守的な富裕層も「大手銀行のお墨付きがある商品」としてビットコインETFに触れやすくなり、暗号資産投資のハードルが大きく下がります。
第三に、BofA自身のメッセージはあくまで「ボラティリティを許容し、イノベーションテーマを求める投資家向けの限定的配分」です。CIOのクリス・ハイジー氏は、暗号資産は高リスクだが、規制されたビークルを通じて慎重に組み入れることでポートフォリオ分散の一助になり得ると位置づけています。このトーンは、投機ではなくテーマ投資として暗号資産を扱う姿勢を示すものです。
背景:顧客需要・社内方針・規制環境
BofAのスタンス転換の背景には、顧客需要の高まり、社内ガバナンスの変化、規制環境の改善という三つの要因が重なっています。
まず顧客需要の面では、2024年1月の米現物ビットコインETFローンチ以降、ETF経由でのビットコイン投資が急速に普及し、2025年1月時点でスポットビットコインETFには累計390億ドル超が流入しています。富裕層を含む投資家層が「証券口座で買えるビットコイン」を求める中で、BofAだけが消極姿勢を続ければ、JPMorganやMorgan Stanleyなど競合に顧客を奪われるリスクが高まっていました。
次に社内方針の変化です。BofAはこれまで暗号資産については「規制が明確になれば参入する」という立場を取っていましたが、SECによるスポットETF承認と、その後のインカインド償還容認などの制度整備が進んだことで、銀行として関与しやすい環境が整いました。こうした流れを受け、プライベートバンクCIO部門が暗号資産をリアルアセットに近い位置づけで取り上げ、慎重な範囲内での配分を許容するガイドライン作成に踏み切った格好です。
最後に規制環境全体の変化があります。米国では2024年以降、SECや銀行監督当局が暗号資産関連ETFやカストディビジネスに関するルールを相次いで明確化し、大手金融機関がコンプライアンス可能な形で暗号資産サービスを提供しやすくなっています。その結果、JPMorgan、Wells Fargo、UBSなどが相次いでビットコインETFの提供に踏み切り、2025年末には暗号資産を完全に拒否する大手プレーヤーはVanguard程度にまで減少しましたが、そのVanguardもついに他社ETFの取引解禁に動きました。
推奨4本のビットコインETFの特徴と比較
BofAがカバレッジ対象とするのは、BITB・FBTC・Grayscale Bitcoin Mini BTC・IBITという4本の現物ビットコインETFであり、いずれも規模と流動性、手数料水準の面で「コア」となり得る商品に絞られています。
Bitwise Bitcoin ETF(BITB)は、暗号資産特化のBitwiseが運用するETFで、管理報酬は年0.20%と低コストであり、ローンチ当初6カ月間は手数料ゼロのキャンペーンも実施されました。暗号資産に精通した専業運用会社が低コストかつ透明性を前面に出しており、中堅規模ながら一定の存在感を持つ商品です。
Fidelity Wise Origin Bitcoin Fund(FBTC)は、伝統資産で圧倒的なブランドを持つフィデリティが提供する現物ビットコインETFで、経費率は0.25%と標準的な水準に設定されています。同社は長年ビットコインのカストディ事業を手掛けており、ETFの裏付け資産も自社カストディで管理される点が特徴です。
Grayscale Bitcoin Mini Trust ETF(BTC)は、かつて高コストで知られたGBTCからの巻き返しを狙う新商品で、0.15%と米国の現物ビットコインETFの中でも最低水準の手数料を掲げています。既存GBTCの1.5%という高い手数料に対する批判を踏まえ、低コスト・ETF構造を採用することで投資家の乗り換え需要を取り込もうとする位置づけです。
iShares Bitcoin Trust(IBIT)は、世界最大の資産運用会社ブラックロックが提供する旗艦ETFで、スポットETF市場で圧倒的なシェアを獲得しています。IBITは当初0.25%前後の手数料でしたが、競争激化を受けて初期5億ドル〜50億ドルの資産に対して0.12%まで引き下げられ、主要コモディティETFと遜色ない水準になりました。2025年11月時点でも7百億ドル超の資産残高を維持しており、短期的な資金流出局面がありつつも、依然としてビットコインETF市場の中心に位置しています。
4本に共通するのは「現物ビットコインを裏付け資産とするスポット型」「大手カストディと証券取引所を組み合わせた透明な構造」「伝統金融機関と暗号資産専業の双方が関与」という点です。違いは主に手数料、運用会社のブランド、流動性規模にありますが、BofAは「十分なAUMと日次出来高があり、コストが競争力水準にある銘柄」に絞ることで、顧客にとっての選択肢を整理した形となります。
他の米大手との対応比較と業界標準化
BofAの1〜4%推奨は、他の大手金融機関のガイドラインと比べてどの位置づけにあるのかを確認しておくことは、投資家にとって重要です。
JPMorganは、CEOのジェイミー・ダイモン氏が個人的にはビットコインに批判的な姿勢を崩していない一方で、2021年に全てのウェルス顧客に暗号資産ファンドへのアクセスを解禁し、2025年にはビットコインの直接購入も認めるなど、実務レベルでは受容を進めてきました。ただし現時点で「何%を推奨するか」という明示的な配分レンジは公表していません。
モルガン・スタンレーは、2025年10月にグローバル・インベストメント・コミッティー(GIC)が発表した文書で、暗号資産をリアルアセットに分類し、リスク許容度に応じて最大4%までの配分を検討し得るとするスタンスを示しました。実務的にも、暗号資産ファンドやETFへのアクセスを広げつつ、モデルポートフォリオ自体には明示的なウェイトを組み込まない慎重な設計を採っています。
Wells Fargoは2024年時点でビットコインETFへの投資機会提供を表明し、ブローカレッジ口座経由でのETF取引を富裕層に開放しましたが、BofAのような具体的配分ガイドラインはまだ限定的です。一方、Vanguardは長年暗号資産に否定的でしたが、2025年12月に第三者運用の暗号資産ETFの取引解禁に転じ、顧客がIBITなどのビットコインETFを自社プラットフォーム上で売買できるように方針転換しています。
こうした中で、BofAの1〜4%推奨は「モルガン・スタンレーとほぼ同水準」「ブラックロックの1〜2%、フィデリティが示す2〜5%レンジの中間」という位置づけにあります。目安としては慎重寄りではあるものの、「暗号資産はゼロであるべき」という立場からは完全に離れ、伝統的ポートフォリオの中に狭いが明確な居場所を与えたと評価できます。
15,000人超のアドバイザー提案解禁がもたらす変化
BofAの方針転換のインパクトは、単にプロダクトが増えることではなく、全米のアドバイザーの行動変容と業界全体の標準化を加速させる点にあります。
まず、アドバイザーと顧客の対話が変わります。これまでは顧客から暗号資産の相談があっても、アドバイザー側が積極的に推奨しづらい空気がありましたが、CIOガイドラインとして1〜4%が示されたことで、「リスク許容度が高い場合はポートフォリオの一部にビットコインETFを組み入れる選択肢があります」と正面から提案しやすくなります。
次に、社内教育とリサーチの整備です。1万5,000人超のアドバイザーが暗号資産を扱うには、プロダクト特性やボラティリティ、規制リスクを理解したうえで説明できる体制が不可欠であり、CIOチームやリサーチ部門が定期的なレポートや研修を提供する必要があります。これにより、暗号資産が「一部マニア向けのテーマ」から「標準的な投資テーマ」の一つとして、ウェルスビジネスの中で体系的に扱われていくことが想定されます。
さらに、競合各社への圧力も無視できません。BofA級の大手が配分レンジを明示すれば、独立系RIAや他の大手証券も「当社はどうするのか」という問いに答える必要に迫られます。既にチャールズ・シュワブやUBSなどはビットコインETFの取り扱いを開始しており、今後は配分ガイドラインやモデルポートフォリオへの組み入れ方針の開示が広がる可能性があります。こうした動きは、暗号資産を完全に排除する運用方針を維持しにくくする方向に働くでしょう。
市場・投資家・ビットコイン価格への影響
短期的には、BofAのような大手金融機関が暗号資産配分を推奨するニュースは、センチメント改善とETF経由の資金流入期待を通じてビットコイン価格の押し上げ要因となりやすいと言えます。実際、スポットビットコインETFの登場以降、ETFへの流入加速が価格上昇と連動してきたことは、2024年以降の複数の局面で確認されています。
中長期的には、ETFの普及と機関投資家の組み入れ拡大が、ビットコイン市場に構造的な変化をもたらしつつあります。ETFが保有するビットコイン残高は着実に増加しており、IBITだけでも数兆円規模の資産を運用するまでに成長しました。一部のビットコインがETFという「長期保有前提の器」にロックされることで、流通市場に出回る供給が相対的に減少し、需給面で価格の下支え要因となるとの見方もあります。
一方で、伝統金融との結び付きが強まることで、ビットコインがマクロ環境に左右されやすくなる側面もあります。金利上昇やリスクオフ局面では、株式やハイイールド債と同様に暗号資産も売られやすくなり、ETFを通じた解約が価格下落圧力として働く可能性があります。この意味で、ビットコインは「完全なオルタナティブ」から「リスク資産の一種」へと位置づけを変えつつあり、分散効果の捉え方も今後変化していくでしょう。
投資家にとって重要なのは、1〜4%程度の配分であっても、ビットコインのボラティリティは高く、ポートフォリオ全体のドローダウンに与える影響が小さくない点です。Morgan Stanleyや他のフィナンシャル・プランナーも、暗号資産などの高リスク資産をポートフォリオの5%以下にとどめるべきとする慎重な見解を提示しており、BofAのレンジはこうしたコンセンサスの範囲内にあります。BofAのガイドラインは、「ゼロではないが、あくまでサテライト的な位置づけ」という暗号資産の新たな立ち位置を象徴していると言えます。
今後の注目点とリスクシナリオ
今後数年にかけては、①他の大手の配分ガイドライン、②ETFの規制枠組み、③ビットコインと他資産との相関の3点が注目ポイントになります。
第一に、他の大手金融機関がどの程度まで暗号資産配分を明示するかです。すでにMorgan Stanleyは最大4%、BlackRockは1〜2%、Fidelityは2〜5%程度の目安を提示していると報じられており、BofAの参入によって「暗号資産は数%のサテライト資産」という見方が業界標準として固まりつつあります。
第二に、ETF規制のさらなる改善・変更です。SECがインカインドの創造・償還を容認したことで、暗号資産ETFはコモディティETFに近い運用効率を手にしつつありますが、今後も税制や開示義務などの細部でルール変更があり得ます。税制や規制変更は、長期的な資金流入ペースや商品設計に直接影響し得るため、投資家はフォローが必要です。
第三に、ビットコインと株式・債券との相関です。機関投資家の比率が上がるほど、リスクオン・リスクオフの局面でビットコインの価格が他のリスク資産と同じ方向に動きやすくなると考えられます。この場合、従来期待されてきた「デジタルゴールド」としての分散効果は相対的に薄れる一方で、「高成長テーマへの小口エクスポージャー」としての役割が強くなる可能性があります。
リスクシナリオとしては、
①規制当局による再度の締め付け、
②ETFに対する大規模解約、
③重大なセキュリティインシデントなどが挙げられます。
特に、ETFがビットコイン供給の一部を握る構造になっているため、大口解約が出た場合の売り圧力は従来よりも大きくなり得ます。一方、BofAを含む大手が慎重な配分レンジを保つ限り、ETF経由の資金は比較的「粘着性の高い」長期資金になりやすく、極端なオーバーシュートリスクを抑える効果も期待できます。
▽ FAQ
Q. Bank of AmericaはいつからビットコインETFを正式カバレッジしますか?
A. 2026-01-05からBITB・FBTC・Grayscale Mini BTC・IBITの4本をCIOカバレッジに加え、1万5,000人超のアドバイザーが提案可能になります。
Q. BofAが推奨する暗号資産の配分比率はどの程度ですか?
A. メリルやプライベートバンクなどの顧客向けに、総資産の1〜4%を暗号資産に配分するガイドラインを2025-12-02時点で示しており、リスク許容度に応じて調整されます。
Q. 推奨4本のビットコインETFの手数料と特徴は?
A. BITBは0.20%、FBTCは0.25%、Grayscale Mini BTCは0.15%、IBITは実質0.12%前後と低コストで、いずれも現物ビットコインを保有しつつ大手カストディを採用しています。
Q. 他の大手機関の暗号資産配分ガイドラインと比較すると?
A. モルガン・スタンレーの最大4%、ブラックロックの1〜2%、フィデリティの2〜5%と比べ、BofAは1〜4%とレンジの中間でやや慎重寄りの水準に位置づけられます。
Q. この動きはビットコイン価格にどのような影響がありますか?
A. ETF経由の長期資金流入が強まれば需給面での下支え要因となる一方、伝統金融との結び付きが進むことで金利やマクロ環境の変化に連動しやすくなる可能性があります。
■ ニュース解説
BofAによるビットコインETF4本のCIOカバレッジ入りと1〜4%配分推奨は、暗号資産を「投機的な周辺資産」から「ポートフォリオの一部として検討される資産」へ格上げする動きとして位置づけられますので、ETF市場の成熟と規制整備の進展があったからこそ実現した一方で、ビットコインがマクロ環境やリスクオン・オフの波により連動しやすくなる側面も強まるため、長期資金の流入による下支えと、伝統金融への組み込みによる相関上昇という両面を冷静に捉える必要があります。
投資家の視点:個々の投資家にとっては、ビットコインETFを通じた1〜4%程度の配分が広く議論される時代に入りつつありますが、他のリスク資産とのバランスや投資目的、時間軸を踏まえ、暗号資産をどのような役割のサテライト資産とみなすかを自ら定義したうえで、ボラティリティや規制変更リスクも織り込んだリスク管理と情報アップデートを継続することが求められます。
※本稿は一般的な情報提供を目的としており、特定銘柄・金融商品の売買を推奨するものではなく、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。
(参考:AInvest,BusinessWire)





