ビットコイン100万ドル予測の現在地と展望

▽ 要約

アダム・バック:5年以内に100万ドル到達を明言
セイラー:ゼロでないなら100万ドルへ収斂
エリック・トランプ:数年で“間違いなく到達”
少額保有:0.1BTC/0.01BTCの希少性が浮上

強気派は「ビットコイン100万ドル予測」を既定路線と語る一方、慎重派は急騰の副作用を警戒する。結論として、希少性と制度整備が支える長期上昇余地は大きいが、到達時期は需給・政策・マクロの条件次第で大きく変わる。本稿は3人の主要発言と足元のデータを突き合わせ、ビットコイン100万ドル予測の現在地を解説する。

主要3氏の見解と根拠(バック/セイラー/E.トランプ)

希少性と制度整備が進むため、3氏はいずれも100万ドル到達を“時間の問題”と捉えるが、タイムラインと前提は異なる。
ビットコイン草創期からの開発者でBlockstream CEOのアダム・バック氏は、2025年5月の「Bitcoin 2025(ラスベガス)」で「100万ドルは容易(A million, easy)」とし、5年以内の達成を示唆した。根拠は2100万枚の供給上限、機関投資家・国家の参入、そしてETFの資金吸収である。
一方、ストラテジー(旧マイクロストラテジー)共同創業者マイケル・セイラー氏は「ゼロにならないなら100万ドルへ」という二極シナリオを強調。新規供給が枯渇するなか(半減後のマイニング報酬低下)、ETF・企業・政府系の恒常的な買いが価格を押し上げると主張する。
ドナルド・トランプ氏の次男エリック・トランプ氏は、国家備蓄や企業の蓄財を前提に「数年で100万ドル」を断言。兄弟と進めるビットコイン関連事業(American Bitcoin)を背景に超強気の見通しを示した。

アダム・バック(Blockstream)

ETF流入と国家レベルの取得が拡大するため、5年以内の100万ドル到達を「容易」と表現した。
バック氏は、希少性(固定供給)×採用拡大(機関・国家)を軸に、評価の過小を指摘。現物ETF解禁後も機関比率はなお限定的で伸びしろが大きく、国債や金の一部代替としての需要が価格を押し上げると整理する。

マイケル・セイラー(Strategy/旧MicroStrategy)

需給逼迫と規制の追い風のため、「ゼロではない限り100万ドルへ収斂」と強調した。
同社は2025年8月時点で約62.9万BTCを保有する巨大トレジャリーとなり、下押し局面でも買い増しを継続。米国の政策転換・会計基準整備・大手金融のカストディ進展など制度面の安定化が、企業のバランスシート採用を後押ししている。

エリック・トランプ(American Bitcoin)

国家備蓄と企業のBTC蓄財が同時進行するため、「数年で100万ドルに間違いなく到達」と断言した。
同氏は2025年に米ワイオミング州のイベントで強気発言。American Bitcoinは大手マイナーHut 8の資産承継で発足し、上場計画と合わせて“ビットコイン蓄積企業”モデルの拡大を狙う。

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足元の価格と市場の温度感

ATH更新後の調整が続くため、過熱と慎重が併存する局面となっている。
2025年8月14日にビットコインは約12.4万ドルの史上高値を付け、その後は11万ドル台まで反落しつつも高値圏で推移する。イベントドリブン(米金融政策・政策発表・ETFフロー)の価格変動が続き、短期はボラティリティ管理が重要だ。

0.1BTC/0.01BTCが“侮れない”理由

総供給上限と富の集中のため、少額でも実質希少で将来価値が膨らみ得る。
1BTC=100万ドル想定では、0.1BTC=10万ドル、0.01BTC=1万ドル。世界の百万長者(資産100万ドル超)は約5,200万〜5,500万人規模に達し、仮にこの層が均等にBTCを保有すれば一人当たりの取り分は0.3BTC台に過ぎない。さらに紛失コイン(推定数百万BTC)を考慮すると、実効供給は一段とタイトになる。
オンチェーン分布でも、0.01〜0.1BTCを持つアドレスは全体の一部に限られ、アドレス≠人ではあるが「0.01BTCを安定保有すること」自体が相対的希少になりつつある。長期の価値保存手段として分割購入(サトシ積立)を選ぶ投資家が増える背景には、この“少額でも上位に食い込む”構造がある。

リスクと前提条件(タイムラインを左右するもの)

政策・金利・流動性の変化で需給均衡が崩れるため、到達時期は前後し得る。
米国の規制・課税の方向性、中央銀行の金利・流動性、ETFフローの持続性、そしてマクロショックがタイムラインを規定する。急騰で100万ドルに早期到達するシナリオは、逆に経済・通貨へのストレスを示す可能性があるとの警鐘も無視できない。一方で、国家備蓄や企業トレジャリーが段階的に拡大するベースシナリオでは、持続的上昇の蓋然性が相対的に高まる。

▽ FAQ

Q. 100万ドル到達はいつ?
A. バックは5年以内(2025年5月発言)、セイラーは二極論で長期収斂、E.トランプは数年内と語った(2025年8月)。

Q. 直近の史上最高値は?
A. 2025年8月14日に約124,128ドル。現在は11万ドル台に調整している。

Q. 0.1BTC・0.01BTCの価値は?
A. 1BTC=100万ドル前提で0.1BTC=10万ドル、0.01BTC=1万ドル(為替150円で約1,500万円と150万円)。

Q. 米国の「戦略的ビットコイン備蓄」とは?
A. 2025年3月にホワイトハウスが創設を公表、同年Q2開始の取得計画を示した政策パッケージ。

Q. ETFのインパクトは?
A. IBITなどの現物ETFは資金の受け皿となり、2025年8月時点でAUM約870億〜900億ドル規模に拡大している。

■ ニュース解説

米国の国家備蓄とETFの定着で需給の“恒常化”が進んだため、100万ドル論は荒唐無稽ではなくなったが、一方で早期の急騰は経済不安のシグナルとなり得る。
2025年に米国は戦略的ビットコイン備蓄を打ち出し、ETFは資金流入を継続、企業や国家の蓄財も拡大した。発行上限による希少性と制度整備の進展により長期の上昇余地は拡大するが、マクロや政策次第で到達時期と質(健全上昇か危機ドリブンか)は分かれる。
投資家の視点:短期はボラティリティとイベント(政策・金利・フロー)管理を優先し、中期はアセット配分の中で現物・ETF・トレジャリー株など器を使い分ける。長期は積立・分散・流動性確保とカストディの冗長化を徹底。

※本稿は投資助言ではありません。

(参考:The White House,U.S. SEC,Strategy