11月29日 ビットコイン市況と香港大埔火災支援

▽ 要約

市況:BTCは11月26日に9万ドル台へ反発し、ETF流入で底入れ期待が再燃。
マクロ:USCIS亡命審査停止と金銀高騰で、政策リスクとインフレヘッジ需要が意識。
テーマ:香港大埔火災でOKXやMatrixportなどが多額寄付し、業界のESGが注目。

11月29日時点のビットコイン市況と香港大埔火災支援、Upbitハックやマイナー採算悪化、RWA・予測市場など中長期テーマをビットコイン市況の観点から解説します。

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11月末のビットコイン市況をどう読むべきか悩んでいる投資家は少なくありません。BTCは11月26日に9万ドル台へ戻りつつある一方で、鯨の取引所流入やマイナーの採算悪化、米移民政策の急変など不安材料も残ります。この記事では「反発の質」と「ファンダメンタルズ」を整理しつつ、香港大埔火災への寄付を通じて浮かび上がった暗号資産企業のESG姿勢も確認します。短期価格だけでなく、規制・インフラ・新興プロトコルを含めた全体像を押さえることで、過度な楽観・悲観を避けた意思決定の材料とすることが狙いです。

市況総括:ビットコイン9万ドル回復とセンチメント

ビットコインは11月26日に9万ドル台へ反発し、ETF流入とレバレッジ整理が同時に進んだことで短期的な底入れ観測が強まっています。

価格動向とETFフロー

11月26日の反発局面では、BTC現物ETFに約1.29億ドル、ETH・SOL・XRPなどアルトETF合計で数億ドル規模の純流入が観測され、価格と出来高が同方向に動く健全なリバウンドとなりました。
一方で、30日間累計ではビットコイン鯨がBinanceに約75億ドル相当を送金しており、2025年3月に10.2万ドルから7万ドルへ急落した局面と類似したパターンとの分析も出ています。鯨の入金は必ずしも即売りを意味しないものの、「利確準備」と「最大損失許容ラインの見直し」が同時に進むシグナルと捉えるのが妥当でしょう。

短期的にはETF経由の機関マネーが押し目を拾いつつ、既存ホルダーのポジション調整が続く綱引き相場です。出来高が減少しない限り、急落よりも「高値圏レンジ+ニュースドリブンな上下」の可能性が高い構造と考えられますが、3月同様にボラティリティ急拡大に転じる余地も残ります。

レバレッジ調整とデリバティブポジション

デリバティブ市場では、11月中旬のピークから先物建玉(OI)が約4,500億ドル相当から2,800億ドル近辺まで縮小し、約2.7億ドル規模の強制ロスカットが発生したと整理されています。
特にBTCとHYPEなど高β資産のショートが大きく焼かれた一方で、レバレッジロングも相応に整理されており、典型的な「レバ清算+現物優位」の局面といえます。

オプション市場では、直近の想定変動率(IV)が急落前の水準からやや低下し、権利行使価格8.5万〜9万ドル帯にガンマが集中する構造が続いています。これは、短期的にはこのレンジから大きく乖離しにくいことを示唆する一方で、マクロショックや規制ニュースなど「新しい情報」が出た場合には、オプションヘッジの巻き戻しを伴う急変動余地が残っているとも読めます。

マクロ環境と金・銀・株式の動き

マクロ側では、米国のインフレ指標鈍化を受けて12月と翌1月の連続利下げ観測が再浮上する一方、移民・治安面のショックが市場心理を揺らしています。11月29日、米市民権・移民局(USCIS)のEdlow長官はすべての亡命申請の審査を一時停止すると発表し、移民政策を巡る不確実性が一段と高まりました。

資産クラス間では、現物金が1オンス4,200ドル台を回復し、銀は55ドル近辺まで急伸して過去最高値を更新したと報じられています。
金銀の同時高は、インフレヘッジと安全資産需要の強さを示す一方で、「BTC=デジタルゴールド」というナラティブと資金を争う構図でもあります。

政治面では、トランプ大統領が50年住宅ローン構想を掲げ、株式市場を「常に史上最高値圏に保つ」と発言したことが話題となりましたが、超長期ローンの導入は家計・金融機関双方のリスクを高めるとの専門家の警告も出ています。
マクロ全体としては「金利低下期待でリスク資産に追い風、同時に治安・移民・財政の不安がリスクプレミアムを押し上げる」という相反する力が拮抗しており、BTCもこの板挟みの中でボラティリティを維持している状況です。

規制・政策アップデート:税制・AML・情報共有

各国の税制・AML・情報共有ルールが静かにアップデートされており、DeFiユーザーやクロスボーダー投資家にとって実務インパクトのある変更が相次いでいます。

英国DeFi税制の「無盈無亏」ルール

英国では、税務当局HMRCがDeFiレンディングや流動性供給に対して「No Gain No Loss(無盈無亏)」原則を導入する提案を公表しました。
Aave創業者Stani Kulechov氏が指摘するように、ユーザーがAave等のプロトコルに資産を預けるだけでは資本利得課税が発生せず、実際に売却・交換して経済的な損益が確定した時点で課税する方向性です。

これにより、頻繁に担保の出し入れを行うDeFiユーザーにとっては申告負担が大きく軽減され、税務上の「意図しない課税イベント」を避けやすくなります。他方で、複雑なマルチトークン構成やレバレッジ戦略に対する具体的なガイダンスは今後の立法過程に委ねられており、最終的な制度設計を確認する必要があります。

スイスCARF延期と暗号資産の情報共有

スイス連邦政府は、OECDの「暗号資産報告フレームワーク(CARF)」の実施時期を少なくとも1年延期し、国際的な暗号資産口座情報の自動交換開始を2027年以降とする方針を示しました。
2026年1月1日付でCARFを国内法に書き込む計画は維持しつつ、どの国と情報を共有するかの検討・調整に時間をかける姿勢です。

日本居住者でスイスを経由した暗号資産運用を行う投資家にとって、短期的には情報共有開始の先送りとなりますが、CARFの導入自体は既定路線であり、中長期的には匿名性に依存した節税余地は縮小していくと見込まれます。

AML・犯罪対策の国際協調

ミクロレベルでは、韓国で最大手取引所Upbitの親会社DunamuがKYC違反で約2,500万ドルの制裁金を科されるなど、取引所コンプライアンスへの締め付けが強まっています。
国際的には、Interpolが暗号資産を利用した詐欺ネットワークを「越境的な犯罪脅威」として正式認定し、人身売買やオンライン詐欺と結びついた犯罪資金のフローを重点的に監視する方針を確認しました。

これらは、規制環境が「暗号資産そのもの」から「暗号資産を利用した犯罪スキーム」へと焦点を移しつつある流れを示しています。投資家から見れば、きちんとKYC・AML体制を整えた事業者ほど相対的に評価されやすくなる一方、オフショアや匿名性に依存したビジネスモデルは持続しにくくなると考えられます。

企業・資金調達・プロジェクト動向

取引所・マイナー・DeFi・RWA・新インフラまで、企業サイドの動きは「事業継続性」と「新たな収益源」の模索が同時進行しています。

Upbitハックとナスダック上場構想

韓国最大手取引所Upbitは、Solanaネットワーク上の資産約3,043万ドル相当が流出するハック被害を公表し、被害額全額を自己資本で補填すると発表しました。
事件後、同社は残余資産を冷蔵ウォレットに移管し、システム監査を実施するとともに、韓国金融監督当局が即座に現地検査に着手しています。

タイミングが厄介なのは、このハックが親会社DunamuとNaver Financialによる約103億ドル規模の統合発表直後に起きた点です。
統合後はウォン建てステーブルコインや米ナスダック上場構想が語られていたものの、11月のKYC違反による巨額制裁金と今回の流出事故が重なり、規制当局と投資家の目線は一気に「成長」から「リスク管理」へと移りました。

さらに、11月28日にはUpbitウォレットから未知のアドレスへ2万ETH(約6,120万ドル)が移動したことがオンチェーンデータから確認されており、追加的なセキュリティ再編や資産分散の一環とみられます。
短期的には取引所集中リスクが意識されやすく、韓国ローカルアルトのボラティリティ拡大要因としても注意が必要です。

マイナー採算悪化とTetherのウルグアイ撤退

ビットコインマイニング業界は、ハッシュレートが1ゼタハッシュ超と史上最高水準に達する一方で、「ハッシュレート価格」が50%下落し、ペタハッシュ毎秒あたり34.2ドルと過去最低水準に沈んでいます。
11月27日時点でマイニング難易度は149.3Tまで2度連続で低下しましたが、ブロック間隔は10分前後を維持しており、小規模高コストマイナーの退出と大手事業者への集約が進んだ結果と解釈できます。

この「高セキュリティ・低収益性」のパラドックスは、Tetherがウルグアイのマイニング事業をエネルギー価格交渉の決裂を理由に閉鎖し、38人中30人を削減した決定にも象徴されています。
同社は当初5億ドル規模の投資計画を掲げていましたが、実際には1億ドル超の投資にとどめて撤退を選択しました。

上場マイナーの時価総額は11月に約300億ドル縮小し、一部はAI・HPC受託など別事業への転換を模索しています。
投資家にとって、マイナー株は「ビットコイン価格のレバレッジ版」ではなく、「電力契約と設備投資にレバレッジをかけたデータセンター株」として評価し直す必要が高まっています。

DEX・RWA・新インフラ:HIP-3、x402、予測市場

パーペチュアルDEXのHyperliquidでは、提案HIP-3に基づく「Builder-Deployed Perpetuals」モデルが急拡大し、11月25日時点で単月取引高が36億ドル超と10倍以上に増加しました。
500,000 HYPE(約1,750万ドル)をステークして第三者が市場を開設できる仕組みは、質の高いデプロイヤーの選別とトークン供給のロックアップを同時に実現する一方、流動性がTrade.xyzなど一部アプリに偏在している点が課題です。

一方、インターネット決済標準の文脈では、AIエージェント間のマイクロペイメントに特化したx402プロトコルが提案されています。x402はソフトウェア同士がタスク完了の瞬間に小額決済を自動実行できるよう設計されており、サブスクリプション前提のWeb2ビジネスモデルを補完する「マシン・ツー・マシン課金レイヤー」と位置付けられます。

さらに、Polymarketを例にした「予測市場のスーパーサイクル」論では、オプション・保険・CDS・スポーツベッティングなど既存の数兆ドル規模市場を、「可観測なイベントに対する二値ベット」という共通プロトコルに再構成し得ると指摘されています。
Hyperliquid上でも予測市場向けのHIP-4構想が議論されており、デリバティブと予測市場の境界が徐々に曖昧になりつつあります。

RWA(現実資産)領域では、米国債や短期債に続き、未上場株式・不動産・プライベートクレジットのトークン化事例が増えていますが、PANewsのレビューでは「二次市場の価格は実体価値よりも流動性プレミアムとナラティブに大きく左右される」と警鐘も鳴らされています。

関連:暗号資産市況:Upbit流出とアルトETF

香港大埔火災と暗号資産企業の支援(今日のテーマ)

2025年11月26日に香港・大埔の工業ビルで発生した大規模火災は、少なくとも100名超の死者・行方不明者を出し、現地社会に大きな衝撃を与えました。

PANewsによる寄付企業リストでは、HashKey Group、Avenir Group、KuCoinなどの暗号資産企業が名を連ねており、伝統金融機関とともに義援金・物資支援に参加しています。
OKXとBinanceはそれぞれ1,000万HKDの寄付を表明し、Matrixportは従業員と共同で300万HKDを拠出、Crypto.comも香港赤十字に1,000万HKDを寄付したと報じられています。

これらの寄付は、単なるPRではなく「香港をアジアの暗号資産ハブと位置付ける企業が、地域社会のリスクも共有する」というメッセージとして受け止められています。同時に、火災の原因究明や都市インフラの安全性向上は政府・企業・市民社会が共有すべき課題であり、業界としてもESG(環境・社会・ガバナンス)へのコミットメントの透明性がより問われる局面です。

日本の投資家にとっては、こうした動きは「規制リスクだけでなく社会的評価リスクも株価・トークン価格に反映される」ことを意識させる事例と言えます。寄付そのものがバリュエーションに直結するわけではありませんが、事故・災害時の対応や地域社会への貢献姿勢は、中長期で事業継続性やライセンス取得の成否に影響し得る重要な非財務情報です。

▽ FAQ

Q. ビットコインは11月末に底打ちしたと見てよいですか?
A. 11月26日にBTCは9万ドル台へ反発しETFに約2億ドルが流入しましたが、30日間で75億ドル相当の鯨入金が続いており、底打ちはまだ確定ではありません。

Q. 香港大埔火災で暗号資産企業はどの程度の寄付を行いましたか?
A. 11月26日の火災後、OKXやBinance、Crypto.com、Matrixportなどが合計数千万香港ドル規模を寄付し、一部企業は単体で1,000万HKD超の支援を発表しています。

Q. ビットコインマイナーの採算悪化はどの程度深刻ですか?
A. ハッシュレートは1ゼタハッシュ超と過去最高ですが、ハッシュレート価格は34.2ドルまで半減し、11月に上場マイナー時価総額が約300億ドル縮小するなど、淘汰と再編が進行中です。

Q. x402や予測市場のような新インフラは投資テーマになりますか?
A. x402はAIエージェント間マイクロペイメント標準、Polymarket等の予測市場はイベントベース流動性基盤とされ、10年単位の構造テーマですが、流動性や規制の不確実性が大きく短期売買向きとは言えません。

■ ニュース解説

ビットコインは11月26日に9万ドル台へ回復し、ETFへの資金流入やレバレッジ整理から「調整一巡」を示唆する指標が増えつつある一方で、鯨の取引所入金やマイナー採算悪化など下押しリスク要因も残っています。香港大埔火災を受けた大手暗号資産企業の寄付は、業界が単なる投機市場ではなく地域社会の一員として振る舞おうとする姿勢を可視化した事例と位置付けられますが、同時にUpbitハックやTetherのマイニング撤退が示すように、事業リスクとガバナンスの重要性も改めて浮き彫りになりました。

中長期テーマとしては、英国のDeFi税制「無盈無亏」ルールやスイスCARF延期などの制度整備が、流動性の「表のトラック」への移行を促す一方、Hyperliquid HIP-3やx402、予測市場のような新インフラが、伝統金融と暗号資産の境界を溶かしつつあります。
ただし、これらの変化は数週間でトレンドが変わる価格サイクルに比べればはるかに長い時間軸で進行しており、短期売買のシグナルというよりは「どのセグメントが次のサイクルで残るか」を見極める材料と捉えるのが妥当です。

投資家の視点:
11月末時点の環境は、「マクロは緩和方向に傾きつつも政治・治安リスクが高まり、金銀・BTC・株式が同時に物色される」という複雑な局面です。短期的には、
・BTCが9万ドル前後のレンジをどの程度維持できるか(ETFフローとデリバティブポジションのバランス)
・マイナー株や取引所関連銘柄におけるガバナンス・規制リスクの織り込み度合い
・RWA・予測市場・AI関連インフラなど、次サイクルの「土台」となり得るテーマの実利用・収益化の進捗
といった点を、価格だけでなく出来高・オンチェーンデータ・規制動向を組み合わせてモニターすることが重要になります。

一方で、香港大埔火災をめぐる寄付や、Interpolによる暗号資産犯罪ネットワークへの警告は、ESG・コンプライアンス・社会的受容性といった非財務要素が評価軸として一段と重みを増していることを示しています。個別銘柄やプロジェクトを見る際には、トークン設計や収益モデルだけでなく、「規制環境下で持続的に事業を継続できるか」「社会的に許容されるガバナンスを備えているか」といった観点も加えることで、リスク・リターンのバランスをより立体的に把握できるでしょう。

※本稿は一般的な情報提供を目的としており、特定銘柄・金融商品の売買を推奨するものではなく、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。

(参考:PANews