【要約】
・KindlyMDの株主がビットコイン関連会社Nakamotoとの合併を承認し、2025年第3四半期に最終的な手続きが完了予定
・ビットコイン合約の未決済建玉が720億ドルに達し、市場はさらなる価格上昇に期待
・大手機関投資家の動向や規制環境がビットコインの価格に影響を与える可能性
・合併や機関投資家の参入が今後のビットコイン市場にどのようなインパクトを与えるかが注目される
ビットコイン市場の最新動向とKindlyMD・Nakamoto合併の背景
2025年5月下旬、ビットコイン市場では複数の重要ニュースが同時に注目を集めています。まず、医療ケアサービス企業であるKindlyMDの株主が、トランプ陣営の暗号資産アドバイザーを務めるDavid Bailey氏が設立したビットコイン関連企業Nakamoto Holdingsとの合併案を正式に承認しました。これにより、両社は合衆国証券取引委員会(SEC)への必要書類提出から約20日後に手続きを進め、2025年第3四半期に最終的な合併が完了する見通しです。
合併の概要とKindlyMDの株価反応
KindlyMD(ティッカー:KDLY)の株主総会において、同社の株主が合併案を可決した結果、5月20日の通常取引で株価は9%上昇し、15.22ドルを記録、さらに時間外取引でも4.8%の追加上昇が見られました。今年に入ってKindlyMDの株価は大幅に上昇しており、累計で979%もの伸びを示しています。
合併の目指すところは、新企業体における株式や債務の活用によるビットコイン生態系の拡大です。具体的には、ビットコイン原生の事業を育成しつつ、ビットコインを資産負債表に組み込むことで、持続的な価値を高める狙いがあります。また、Nakamotoは同時期に7.1億ドルを調達しており、その資金を活用して「ビットコイン金庫」の構築を進める計画が明らかになりました。こうした積極的な動きが、KindlyMDの株価急騰を支える要因のひとつとなっています。
ビットコイン合約の未決済建玉が史上最高の720億ドルに到達
同時期のビットコイン合約市場では、未決済建玉が720億ドル(約9.9兆円)という過去最高水準に達しました。わずか1週間前の666億ドルから8%増加しており、加熱する機関投資家の参入意欲を示唆しています。なかでも、CME(シカゴ商品取引所)の169億ドルが全体で最大のポジションとなっており、続くBinance(バイナンス)の120億ドルと合わせ、伝統的金融機関と暗号資産取引所が共に積極的な立場をとっていることがわかります。
価格急騰のシナリオと空売りの清算リスク
ビットコイン価格が11万ドル(約1,500万円)へ向けてさらに上昇する可能性を議論する声が高まる背景には、大量のショートポジション(空売り)が清算されるリスクが存在します。特に107,000~108,000ドル帯には約12億ドル規模の空売りが集中しており、その水準を突破すると強制清算が連鎖的に発生して大きく価格を押し上げる可能性があると指摘されています。
2021年にビットコインが6.9万ドル近辺まで急伸した際も、空売りの清算が市場流動性を急激に吸い上げ、短期間で35%上昇する局面を生み出しました。今回は機関投資家による取引規模が一段と拡大していることや、MicroStrategyが57.6万枚超のビットコインを保有するなど、企業による積極的な買い支えがある点が類似しています。
マクロ環境と「デジタル黄金」への資金シフト
金(ゴールド)の世界市場規模は22兆ドルに達すると推計されていますが、近年その地位がビットコインに浸食されつつあるとの見方もあります。実際、ビットコインの時価総額は2.1兆ドル規模まで拡大し、白銀(シルバー)と同等クラスに達しました。さらに一部のアメリカ議員が、金準備の5%をビットコインに転換する案を議論していると報じられたことも、今後の大きな資金流入シナリオとして注目されています。仮にこの案が実行されれば、1,050億ドル規模の需要増が見込まれ、ビットコイン価格が12万ドルを突破する材料となる可能性があるのです。
一方、米国政府の長期債券利回りが5%前後で推移しており、財政赤字や国債の発行残高に対する懸念が高まっています。美連邦準備制度(FRB)が国債市場を支えるために積極的な介入を行えば、結果としてドルの信用が揺らぎ、インフレヘッジとしてのビットコイン需要がますます強まるとの見方もあります。
イーサリアム(ETH)の動向と市場の視線
ビットコインと合わせて注目されているのがイーサリアム(ETH)です。2025年5月時点で2,400~2,750ドルのレンジ内で推移しており、テクニカルには上昇フラッグ(旗形)と呼ばれる強気パターンが形成されつつあると分析されています。もし2,800ドル上限を明確に突破すれば、3,000~3,100ドル近辺までの上昇が見込まれ、その先では3,600ドルがターゲットになるという見方もあります。
ただし、トレーダーの間では懐疑的な声もあり、フラッグ上抜けに失敗すると2,150~2,750ドルのボックス圏に閉じ込められる可能性が指摘されています。ビットコイン主導で強気相場がさらに加速するのか、あるいはイーサリアムがその流れを後押しするのかが、今後数週間の焦点となっています。
規制と政治要因の影響
米国内では2024年の大統領選が近づくにつれ、主要候補者の暗号資産に対するスタンスが価格変動要因になり得るとの見方も強まっています。トランプサイドはビットコイン決済を容認するような動きを示唆しており、他方でバイデン政権は規制強化を主張する傾向があります。しかし、いずれの政権であれ、米国債務の持続性への疑問という根本的な課題が残るため、多くの機関投資家がポートフォリオの一部をビットコインへ移しつつある点は変わりません。
ニュースの解説
KindlyMDとNakamotoの合併承認は、医療セクターとビットコインの組み合わせという新たな事業モデルを推し進める動きと言えます。さらに、ビットコイン未決済建玉が過去最高を更新したことは、機関投資家の活発な参加と市場の高い成長期待を示しています。株式・債券市場でのボラティリティや米国の財政政策を背景に、ビットコインが「デジタル黄金」として一段と存在感を増すシナリオも現実味を帯びています。合併の完了が予定される2025年第3四半期まで、ビットコインがどこまで上昇エネルギーを維持するか、引き続き注目されるでしょう。