▽ 要約
市場:資金は分断しビットコイン優位が継続。
テク:$70,000〜$80,000帯は支え薄く値固めが課題。
実需:Trip.comがUSDT/USDC決済、差益が見える。
政策:米法案は2026-01-30前に調整局面。
ETF主導の相場で、レバレッジ清算と実需型決済の伸長が同時進行している。

アルトが動かないのにビットコインだけ強いのはなぜか。結論は、Bitcoin ETFを中心とする合規マネーが「資金の壁」を作り、旧来の循環が起きにくいからだ。本稿では価格帯の支え、規制論点、実需・DeFiの材料を解説します。
市況総括
ETFの資金経路が制度化するほど、価格は上がっても資金が広がりにくい。
資金の壁が意識される局面では、上昇の主役と取り残される領域がはっきり分かれる。2024-01-10の米SECによる現物ETF承認以降、合規口座内での「買い持ち」が拡大し、2025-09-18にはCommodity-Based Trust Sharesの通用基準が承認され、上場手続きの標準化が進んだ。一方で、壁の外側にある多くのアルトは高値から80%超のドローダウンが続きやすい構図だ。
短期ではフローの変化がセンチメントを左右しやすい。米東時間2025-12-24の現物ETFは5日連続の純流出となり、単日では$175Mのマイナスが観測された。総AUMは約$113.8B、累計の純流入は約$56.9Bとされるが、流入が鈍る局面では「壁の内側」でもポジション調整が先に出る。
マイニング指標は落ち着いているが、価格は資金フローに左右されやすい。採掘難易度は0.04%上昇して148.26T、ハッシュレートは約1.08ZH/sとされる。
価格帯の薄い支持とサイクル観測
下値支持が薄い価格帯では、下げ止まりより値固めに時間を要しやすい。
過去の滞在日数が少ない帯は、需給の“厚み”が不足しやすい。CME先物とUTXOの実現価格分布分析では、$70,000〜$80,000帯の滞在は28日と短く、現在取引が多い$80,000〜$90,000帯も49日と限定的だった。押し目が入る場合、テクニカルだけでなく出来高の再構築が焦点になる。
時間軸を伸ばすと、一定の周期性を前提にした予測も出ている。ある分析では底→天井が約1,064日、天井→次の底が約364日と整理され、2025-10の天井が$126,200近辺なら、次の底は2026-10に$37,500前後という試算が提示された。ただし、これは過去則の外挿であり、制度・流動性の変化で乖離し得る点は押さえたい。
季節性に注目する見方もある。2014-12-25前後に$319、2018-12-25前後に$3,815、2022-12-25前後に$16,831など、弱気相場の底がクリスマス前後に来やすいという指摘があり、直近では2010-01-01頃の$0.25から2024-12-31頃の$98,200まで約40万倍という長期トレンドも引き合いに出されている。
デリバティブ:清算と集中リスク
2025-01-01〜2025-12-31は「アルト季」より清算季が目立ち、レバレッジ管理が主テーマになった。
2025-01-01〜2025-12-31の衍生品市場は、年間総出来高が約$85.7Tとされる一方、取引所集中が進んだ。最大手は約29.3%のシェアを持ち、上位5社で建玉の8割超、ユーザー資産の9割超を占めるとの推計もある。構造的に、清算カスケードが起きた時の速度が増す。
インフラ側の数字は壁が厚くなる方向を裏付ける。安定通貨の時価総額は一時$230B超、2025-01-01〜2025-12-31のオンチェーン決済は約$15Tとされ、上場企業のBTC財務は約600,000 BTCから2025-11-30に約1,050,000 BTCへ増えたという推計もある。
象徴例が2025-10-10〜2025-10-11の急変だ。爆倉のピークは$19B超で、85%〜90%がロングだったと整理され、外部ショックがトリガーになると短時間でポジションが洗われることを示した。現物と派生の連動が強い局面ほど、資金管理は「方向」より「耐久性」が重要になる。
個別では、SOLを増し玉する大口の動きも報じられた。207,316.32 SOL(約$25.498M)の買い増しに加え、$122.74〜$123.01に2,683.68 SOLの指値が置かれ、SOL建てポジションは約$63.06M、総ポジションは約$754M、含み損は約$43.32M(うちETH由来が約$37.33M)とされる。
規制・政策アップデート
制度設計の争点は、安定通貨・DeFi・管轄の3点に収れんしつつある。
米国では2026-11-03の中間選挙を前に、包括的なデジタル資産規制の成立を狙う動きが続く。上院では銀行委員会と農業委員会がそれぞれ草案を持ち寄る構図で、統合と審議のタイムラインが焦点になっている。通過確率は50%〜60%といった見立てもあるが、政治日程が最大の制約だ。
安定通貨では「利息付き(生息)ステーブルコイン」をどう扱うかが火種になっている。銀行側は預金代替になり得る点を懸念し、暗号資産側は競争条件の一部とみるため、法案文言の調整が難しい。DeFiについてはAML(マネロン対策)の適用範囲と、SECとCFTCの管轄線引きが論点で、特定当局に裁量が集中する設計への警戒が強い。
政治リスクとしては、政権周辺の暗号資産ビジネスとの利益相反が俎上に載りやすい。加えて、CFTC委員の欠員が続くと、権限移管や新ルール執行の実務面がボトルネックになり得る。政府資金の期限が2026-01-30とされる点も含め、立法と予算の両面で不確実性が残る。
米国以外でも、制度化のニュースが増えている。ロシアでは主要取引所が2026-01-01〜2026-12-31の合規暗号資産取引を検討し、ビットコインや安定通貨を「貨幣資産」と位置付ける案が報じられた。中国では多国間のCBDCブリッジ参加支援が示される一方、USDTで決済する海外発行カードの国内利用には法的リスクが指摘され、同じ「クロスボーダー」でもルール差が大きい。
企業・資金調達・プロジェクト動向
決済と金融インフラは前進する一方、DeFiは収益とガバナンスの両面で再評価が進む。
実需側で目立つのはステーブルコイン決済の拡大だ。Trip.comはUSDTとUSDCによる支払いに対応し、Ethereum/Tron/Polygon/Solanaなど複数チェーンで決済できる。ベトナムでUSDT決済を使うと航空券で約18%、ホテルで約2.35%の費用差が出たという整理は、「手数料と為替の摩擦」が数字で見える事例と言える。
テーマ別では、2025-01-01〜2025-12-31の平均でRWAが+185.76%とされ、実需・合規に近い領域が優位だった。
一方、DeFiでは「借り手の規模」が価値捕捉の源泉になりやすい。例として、ある流動性ステーキング系金庫が借貸プロトコルに年間約$4.5Mの利息を支払うのに対し、金庫の管理手数料収入は約$1.07Mにとどまるという比較が示された。DeFi借貸市場の年換算収益が$100M超とされる中、プロトコル(借貸層)に収益が集まりやすい構造が再確認されている。
成熟の裏側では、ユーザー行動がインセンティブ中心に均質化し、借貸が長期信用ではなく短期資金調達として拡大してきたという自己点検も出ている。探索フェーズの終わりを前提に、長期資本が滞留できる設計(期限の選択肢や退出容易性)を整える必要がある、という問題提起は投資家のDDにも接続する。
ガバナンス面ではCurve DAOの資金拠出提案が象徴的だ。開発チームへの17M CRV相当の助成提案が否決され、ConvexやYearnなど大票田の意向が結果を左右したと整理された。透明なトレジャリー運営や過去拠出の説明責任が求められる局面では、veモデルが「資本による委任統治」を強める可能性もある。
L1/L2の開発計画では、Ethereumが2026-01-01〜2026-12-31に複数の大型アップグレードを見込む。2026-06-30頃のGlamsterdamではアクセスリストとePBSが俎上に上がり、Gas上限は現状の60Mから100M、場合によっては200Mへの引き上げが議論されている。ブロブ(データ枠)も1ブロック72個以上を目標にし、ZK検証へ移行するバリデータが10%程度に達すれば、L1で10,000 TPSへの道筋をつけるという見立てもある。
企業・機関の動きとしては、DeFi借貸での単発$500Mローンや、60,000,000 WLD(約$29.06M)のOTC取引、上場企業によるBTC財務(2027-12-31までに210,000 BTC保有を目標)などが並ぶ。運用側でも、2,292 BTC(約$199.8M)と9,976 ETH(約$29.23M)を大口カストディに移す動きが示され、インフラの“壁の内側”が厚くなるほど、オンチェーン側は収益と実需で勝負する局面に入っている。
周辺トレンド(代替資産・カルチャー)
代替資産ブームは暗号資産と同じく、需給より物語が先行しやすい。
コレクティブル市場では、著名インフルエンサーが保有する希少カードを2026-01-12にオークションへ出す予定で、2021年に約$5.3Mで購入したカードが$7.0M〜$12.0Mを狙えるという見積もりが示された。事前に$2.5Mの前払金が渡され、番組配信(2025-12-23)と連動して露出が増える点は、流動性より「注目」が価格形成に与える影響を示す。
暗号資産と違い現物資産はカストディや真贋、取引コストが制約になるが、富裕層の代替資産需要が強まる局面では同じ方向に値が飛びやすい。投資家としては、どの市場でも「出口の流動性」と「価格決定の透明性」を分けて点検したい。
▽ FAQ
Q. 現物ETFの資金フローは何を示す?
A. 米東時間2025-12-24は純流出$175Mとなり、AUM約$113.8Bでもフロー減速局面は調整が先行しやすいです。
Q. BTCの$70,000〜$80,000帯が弱いと言われる理由は?
A. 過去5年データでは$70,000〜$80,000帯の滞在は28日、$80,000〜$90,000帯も49日と薄く値固めが要ります。
Q. Trip.comのステーブルコイン決済は投資家に何を示す?
A. Trip.comはUSDT/USDCをEthereumやTron等で受け入れ、ベトナムでは航空券約18%、ホテル約2.35%の差が示されました。
Q. 米国の暗号資産法案はいつが山場?
A. 2026-01-30の政府資金期限と2026-11-03の中間選挙が重なり、通過見立て50%〜60%でも審議不足で遅れやすいです。
■ ニュース解説
ETF資金が合規の器に留まりやすいので、上昇局面でもアルトの循環が弱くなるため、価格と実需の乖離が広がりやすい一方で、決済や借貸など収益を伴う領域は評価が戻りやすい。
投資家の視点:短期はフローと清算耐性(建玉・担保・カストディ)を、長期はステーブルコイン決済・借貸収益・主要L1の実装計画(2026-01-01〜2026-12-31)を軸に、複数シナリオで点検したい。
※本稿は一般的な情報提供を目的としており、特定銘柄・金融商品の売買を推奨するものではなく、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。
(参考:PANews)





