▽ 要約
事実 金融庁WGが金商法移行と銀行保有解禁を審議。
背景 口座1,213万・預かり5兆円、海外動向も追い風。
影響 1250%資本規制など慎重策でリスク抑制へ。
次点 税制20%やETF解禁見通し、実装は26–27年。
日本は暗号資産を金商法で統合管理する方向で議論が進み、銀行の暗号資産投資解禁・20%課税・ETF解禁を見据えた制度設計が2026年前後の施行を目指す。
「銀行はビットコインを保有できるのか」――答えは「条件整備を前提に近づいている」です。金融庁は2025年に暗号資産の金商法移行を軸に制度見直しを進め、銀行の暗号資産投資解禁、インサイダー規制の明確化、課税20%化、ETF上場の道筋を同時に検討しています。国内口座は1,213万、預かり資産は5兆円超と市場は拡大。米国の規制緩和、EUの資本規制整備、シンガポールの実施延期など国際動向も追い風と逆風を併せ持ちます。本稿では何が起き、いつ何が実装され、どこに注意すべきかを要点解説します。
何が起きたか
暗号資産を金商法の「金融商品」として再分類する検討が進み、インサイダー取引の明確な禁止と銀行の暗号資産投資解禁を柱に、公正な市場ルールと商品展開の土台を整える動きが加速した。
現行は資金決済法の枠で交換業を規制してきましたが、2025-07から金融庁のワーキング・グループ(WG)が制度横断の見直しを審議。報道では早ければ2026年通常国会に金商法改正案が提出され、暗号資産の「金融商品」化、未公表情報を用いた取引禁止、違反への課徴金が導入される見通しです。銀行・保険の自己勘定投資の解禁、国内での現物ETF・投信の上場可能化も論点に上り、制度面の「同一機能・同一規制」へ舵が切られています。
背景(制度・産業・技術)
過去のハッキング被害を受けて厳格だった日本の規制は、国内口座1,213万・預かり資産5兆円超という市場拡大と海外動向を受け、イノベーションと保護の両立へ転じた。
Mt.Gox(2014)やCoincheck(2018)後、日本は投資家保護と健全性を最優先に制度を構築してきました。他方でJVCEA統計では2025-01末時点で口座は1,213万、利用者預かり資産は5兆円超。2025-08には加藤勝信財務相が「暗号資産は分散投資の選択肢になり得る」と表明し、環境整備の方針を示しました。加えて、2023年施行の改正資金決済法で銀行・信託による円建てステーブルコイン発行も可能となり、メガバンクは共同規格での円建てステーブルコイン構想を前進させています。
市場への影響(価格・流動性・フロー)
銀行参入は需給安定や商品多様化を促す一方、1250%リスクウェイト等の資本規制が過度なリスクテイクを抑制するため、段階的な市場内生化が進む。
EUはEBAが1250%リスクウェイト(Group2資産)で最終草案を公表、上限管理も導入します。米国は2025-03にOCCが暗号資産カストディ等の許容活動を再確認、FDICも事前承認撤廃へ転換。日本はこれらを踏まえ、金商法移行後のプリューデンス規制(自己資本比率・上限管理)と市場ルールの整合で、価格変動リスクと流動性リスクの波及を抑える設計が不可欠です。
論点とリスク(賛否の整理)
価格変動・カストディ・AML/CFTの3点が経営上の要諦となるため、銀行は投資目的の保有量を限定し高度なリスク管理・内部統制を前提に段階導入すべきだ。
主要行向け監督指針では、現行「投資目的の暗号資産取得を行わないこと」を求めています。今後、解禁の可否・範囲・上限、評価・ヘッジ手法、ホット/コールド管理、サイバー保険やトラベルルール順守、アドバースシナリオ下の清算手順など、従来資産と同等以上の体制設計が焦点です。慎重論は根強いものの、透明なルールと段階的な適用が銀行のレピュテーション・リスクを軽減します。
今後の注目点(時系列)
期間 | 主な進捗/アクション | 具体項目・注記 |
---|---|---|
2025年(短期〜年末) | 制度骨子の整理・国際動向の反映 | 金商法移行の論点整理/銀行法の取扱い整理/20%申告分離課税の具体化 |
2026年(中期) | 法案提出〜成立・商品適格性審査 | 国会提出・成立/ETF・投信・デリバティブの適格性審査 |
2026–2027年(施行期) | 施行・細則整備・監督指針改定・税制/会計実装 | 省令・ガイドライン整備/監督指針改定/税制・会計ルールの本格運用 |
2027年以降(中長期) | 国際基準との整合・域外動向の反映 | MASがBCBS基準実装を延期する中での整合/韓国の機関パイロット拡大/EUのRTS運用定着とクロスボーダー整合性の確立 |
▽ FAQ
Q. 銀行はいつから暗号資産を保有できるの?
A. 2026年通常国会に金商法改正案提出見込みで、施行は2026年後半〜2027年が想定されます(金融庁WG日程・報道)。
Q. 国内市場の今の規模は?
A. 2025-01末で口座1,213万・利用者預かり資産5兆円超(JVCEA統計/金融庁資料)が示されています。
Q. 海外の銀行規制は厳しいの?
A. EUはビットコイン等に1250%リスクウェイト草案、米国はOCC・FDICが2025-03に事前承認を撤廃しつつ厳格なリスク管理を要求。
Q. 税制・商品はどう変わる?
A. 個人課税は20%申告分離化が方針、国内の現物ETF・投信・デリバティブ解禁が議論入り、最短で2026年前後が想定。
Q. ステーブルコインはどう関係する?
A. 改正資金決済法で銀行・信託発行が可能、メガバンクは円建て共同規格を推進し、送金・決済インフラ高度化に寄与へ。
■ ニュース解説
制度を金商法へ移す議論が進むため、取引ルールの明確化と銀行の限定的保有解禁が現実味を帯びる一方で、資本規制やAML/CFTの強化により導入は段階的となる。
投資家の視点:短期は制度不確実性が残るため過度な前提置きは禁物、中期は税制・商品・保管の整備進捗を確認し、費用構造(手数料・スプレッド)とリスク開示・内部統制を基準に業者・商品の選別を行うべきです。
※本稿は一般的な情報提供を目的としており、投資助言ではありません。