8月9日 401(k)と暗号資産:市場の地殻変動

▽ 要約

トランプ令:401(k)で暗号資産解禁、長期流入観測。
イーサETF:8/7に純流入2.22億ドル、3日連続。
香港制:ステーブルコイン条例施行でRWA加速。
ビットコイン:11.7万ドル前後で攻防継続。

制度と資金の軸が交差しやすい局面だと意識され、401(k)と暗号資産の政策転換、ETH主導の資金循環、香港のステーブルコイン制度化、BTCのテクニカル要所が8月9日の主要論点となる。

401(k)解禁が示す制度転換と資金動向

米大統領の行政令で401(k)における暗号資産等オルタ投資の見直しが指示されたため、180日内の省庁調整と商品設計次第で長期マネーの受け皿が広がる見通しとなった。

同令は労働省(DOL)に対しERISA下の指針再評価を命じ、SECや財務省との協調も明記された。401(k)資産は約8.7兆ドル規模とされ、1〜10%の配分でも800億〜8000億ドル相当の流入余地という試算が示された。供給制約が強いBTCに限定せず、ETHやRWA連動商品など配分手段の多様化も想定される。

政策の中身とタイムライン

行政令は「180日内の再評価」と「関連機関ガイダンス整備」を求めたため、実務導入はプラットフォームと受託者の準備が鍵となる。一方で指針撤回や上限設定など制度設計の最終形は流動的だ。

期待と警戒—コスト・流動性・訴訟リスク

メリットは長期資金の安定流入だが、オルタ投資は手数料負担や情報の非対称性が課題となるため、受託者責任・訴訟リスク・流動性管理のコスト増を見込む必要がある。

市場インパクトの試算

仮に401(k)の1%がBTC・ETH等へ配分されれば数百億ドル級の需要計が立つため、ETFルートに続く制度資金の第二波として価格弾力性を高めやすいが、導入速度と商品ラインナップ次第で段階的な浸透が現実的だ。

関連:米401(k)仮想通貨解禁:トランプ大統領令の全貌

ETH主導の資金循環—ETF・企業財庫・アルト連鎖

ETFの安定した資金入り、企業財庫の積み上げ、ETH/BTC比の持ち直しが重なったため、ETHからアルトへの循環期待が強まった。

現物ETFのフロー

8月7日のETH現物ETFは計+2.22億ドルの純流入で3日連続のプラス、うちBlackRock ETHAは+1.04億ドル、GrayscaleのETHは+3460.9万ドルだった。ETH ETFの時価総額は約218.0億ドル、累計純流入は約93.6億ドルに達した。

企業財庫・機関買いの動き

Sharplinkは累計56.8万ETHを保有し、Fundamental Global(FGF)は最大50億ドルの証券発行計画を通じたETH取得を表明するなど、企業・機関の保有拡大が続く。こうした「財庫×ETF」二層の需要がETHの基礎需給を支える。

ETH/BTCとアルト市場

ETH/BTCは5月安値から約75%反発したとの指摘があり、ETHが4,000ドル接近の局面ではアルト循環が加速しやすいとの見方が増えた。強含みが続けば、セクターローテーションでL2やステーキング関連のテーマ性も高まりやすい。

香港のステーブルコイン制度始動—RWAハブへの期待

8月1日に「ステーブルコイン条例」が施行されたため、発行者ライセンス制が正式稼働し、香港はRWAと決済の受け皿を整えた。

規制フレームと狙い

同制度は準備資産や開示、ガバナンス等を包括管理し、ライセンス発給は当面3〜4社の絞り込みが観測される。目的は金融安定とイノベーション両立で、域内の法域間連携も視野に入る。

実務の影響—誰が先行者に?

発鈔行など大手金融の申請が有力視され、証券会社や大企業の参入も加速する見込みだ。制度・銀行・市場インフラの三位一体で、安定通貨の企業決済や貿易金融での利用拡大が期待される。

代替資産(RWA)とトークン化株式の伸長

代替資産のトークン化は7月に時価総額が約3.7億ドル規模とされ、月間アドレス数も急増。スピード決済、部分保有、24/5売買といった利便性が利用拡大の下支えだが、裏付資産の透明性・清算性・監督体制の整備が継続課題となる。

価格・デリバティブ:BTCは11.2万〜11.9万ドルの攻防

短期は冷却・持ち合いの色が濃く、重要なレベルとフローに注目が集まる。

重要水準と手掛かり

BTCは11.7万ドル台の攻防が続き、115,600ドル(月初)を維持できるか、117,200ドルの抵抗突破可否が焦点となる。一方で11.2万ドルを明確に割り込むと10.6万ドルが意識されやすい。

ETFフローと需給

8月7日のBTC現物ETFは+2.81億ドルの純流入で、IBITが+1.57億ドル、FBTCが+4345万ドル。オンチェーンでは短期保有者コスト付近での利確圧力と、取引所流出・鯨のネット流入がぶつかる格好だ。

ネットワーク・イベント

平均手数料はBTC約1 sat/vB、ETH約0.23 Gwei。主要トークンのアンロック予定は、8月8日IMX約2452万枚、同日SXT約2464万枚、同日ENS約145万枚、8月9日MOVE約5000万枚、8月10日RENDER約49.2万枚など。

AI・基盤技術の周辺動向

モデル面ではGPT‑5が発表され、マルチモーダル推論・幻覚率低減が強調された。インフラではSolanaがAlpenglow/ICMの大型アップグレード計画を掲げ、約150ms級の最終性を目指すロードマップを提示。こうした高速・低コスト化はRWA・トークン化株式やDeAIの実装余地を広げる。

▽ FAQ

Q. 米401(k)の暗号資産解禁はいつ施行される?
A. 8月7日の行政令に基づき180日内にDOLが再評価、SEC等と整合の後、各401(k)で順次導入判断となる(時期は商品次第)。

Q. 8月7日のETH現物ETFの純流入は?
A. 計2.22億ドル。BlackRock ETHAが1.04億ドル、Grayscale ETHが3460.9万ドルで、3日連続の純流入だった。

Q. 香港のステーブルコイン制度の特徴は?
A. 発行者ライセンス制と準備資産管理が軸。8月1日施行で、当面は3〜4社の厳選発給が見込まれる見通し。

Q. BTCの当面レンジは?
A. 11.2万〜11.9万ドルの攻防。115,600ドル維持と117,200ドル突破が上昇継続の技術的な要所とされる。

Q. 企業のETH保有で注目点は?
A. Sharplinkの56.8万ETH積み上げ、FGFの最大50億ドル調達計画など、財庫・ETFの二層需要が支えとなる。

■ ニュース解説

米国で401(k)のオルタ投資見直しが始動し、ETH現物ETFに資金が流入、香港はステーブルコインの発行者ライセンス制を施行、BTCは11.2万〜11.9万ドルのレンジで推移した。
ETFルートの整備で制度資金が入りやすくなった一方、受託者責任や手数料・清算性に関する制度的摩擦は残る。香港は規制の明確化でRWA・決済のハブ化を狙う。
長期資金の流入期待はボラティリティの低下と価格弾力性の向上に効くが、導入スピードと商品質、マクロ金融(利下げ時期)に左右される。

投資家の視点:配分シナリオ(0〜2%・2〜5%)で段階的に需要感度を試算し、(1) ETF・財庫・政策の三本柱、(2) 技術的節目(115,600/117,200)、(3) アンロックやイベント集中日を併観するのが実務的。ボラ局面ではポジションサイズ・清算価格・手数料の三点管理を徹底。

※本稿は投資助言ではありません。

(参考:PANews,Foresight News,Biteye