▽要約
● ビットコインは11万ドル攻防、ETF4日連続純流入が下支え
● USDT流出計18億枚(6月26‑27日)、Tether金保有80億ドル判明
● 米上院可決のGENIUS法案が下院審議入り、香港《ステーブルコイン条例》は8月施行
● ステーブルコイン4社の米国債保有は計1,820億ドル、Tetherが7割
● FusakaでBlob上限はまず12→24へ、PeerDAS導入後ガス代は2‑4割低減の試算ステーブルコイン規制 が現実のルールとして動き始めた7月10日。 6月末に発覚した USDT流出18億枚 の余波が残るなか、米国では GENIUS法案 が上院を通過し下院での本格審議が開始。さらに 香港《ステーブルコイン条例》 が8月1日に施行を控え、各国の監督権限が一気に具体化しつつある。 本稿では価格・資金フロー・技術進化を横断し、「次に備えるべき論点」を先出しで整理する。
1. ビットコイン:11万ドル攻防の背景
ETF 4日連続純流入が下値を支えつつ、米関税インフレ懸念で上値は重い。
1‑1. マクロ指標とETF資金
- 7月1‑8日累計で +8,008万ドル の純流入、前年同週比 +36 %。
- UBS試算では新関税により輸入業者の税負担が GDP 比 1.5 % へ拡大、CPI への反映は8月統計が初影響。
1‑2. テクニカル節目
- 中長期チャネルの上端 108,964 ドルと下端 106,806 ドルでレンジ推移。出来高増加は見られるが、109,500 ドルを終値で抜けるまで「押し目買い優勢」との見方が優勢。
2. ステーブルコイン市場:規制トリプルパンチ
短期リスクは USDT 流動性集中、長期は USDC が「規制優位」。
2‑1. USDT 18億枚流出と Tether の金保有
- 6月26‑27日に 計約18億 USDT が12回に分割され、最終的に 3 つの新規アドレスへ送付されたことを複数トラッカーが確認。流出先は依然不明。
- Tether はスイスの金庫に 80 億ドル相当(約78‑80t) の金を保有していると 7 月 8 日付 Bloomberg が報道。担保の多様化はポジティブ要素と評価。
2‑2. 規制カレンダーと米国債エクスポージャ
日付 出来事 影響 6/17 GENIUS 法案が上院通過、下院へ送付 下院での修正協議が最大の焦点 8/01 香港《ステーブルコイン条例》施行 ライセンス制、法定準備金 100 % を義務化 2024‑Q4 見込 EU MiCAR 追加改訂案公表 EMI 等との整合性を調整 米国債保有
ステーブルコイン主要 4 社(Tether, Circle, PayPal USD, FDUSD)の米国債保有総額は 約1,820 億ドル(7月時点 Bloomberg 集計)。うち Tether が約1,250 億ドル、Circle が約287 億ドル を占める。3. イーサリアム/L2:Fusaka・PeerDASの実装ロードマップ
今年秋予定のコンセンサスアップグレード “Fusaka” は Blob 容量をまず 12→24 個へ拡張。これにより L2 ガス代は 2‑4 割低減 するとのシミュレーション結果が報告されている。
3‑1. Fusaka の主要 EIP
EIP 概要 採否状況 EIP‑7594 (Blob Carry‑over / PeerDAS) データ可用性サンプリングにピア間協調を導入し検証者負荷を軽減 現在 Draft、テストネット段階 EIP‑7939 Verkle 実装に向けた CLZ 拡張 準備作業として採択済み EIP‑7907 最大コントラクト・サイズ拡大 デプロイ上限引上げで大型 dApp 対応 3‑2. Layer2 別コストインパクト
- OP Stack 系(Base / opBNB など):与信比率の低下に伴い平均取引手数料が 約 35 % 減 の試算。
- zk Rollup 系:証明のバッチ化で大口送金コストが 40‑50 % 減。ただし証明生成時間は+5‑8 %。
- 上記数値は研究チームのシミュレーションであり、メインネット実装後に乖離 する可能性を明示。
4. 取引所・インフラ:ハイブリッド型の台頭
モバイルウォレットと取引所機能の垣根が曖昧化。Phantom×Hyperliquid のようなハイブリッド構成が「ウォレット=取引所」時代を象徴している(The Block 7/6 インタビュー)。
4‑1. Phantom の永続先物ベータ
- 最大 40 倍レバレッジ、USDC 建て決済で即時清算。
- UI はウォレットそのまま、CEX ライクな板情報を表示。
4‑2. OpenSea OS2 の戦略転換
- OpenSea は “OS2” アップグレードで NFT 以外の代替資産 を扱える API を公開。
- クリエイター向け Embedded Wallet を自社開発に切り替え、外部 M&A(Rally など)の具体的計画は現時点で公表されていない。
▽FAQ
Q. GENIUS 法案が USDT に与える影響は?
A. 連邦準拠の準備金監査が義務化されれば、Tether は米国債比率をさらに引き上げざるを得ず、短期発行制限リスクは限定的だが資金コスト増は不可避。Q. ビットコイン 11 万ドル突破後の上値目標は?
A. 減半サイクル平均伸び率を用いると 12.5‑13 万ドルが次の長期ターゲット。9 月 FOMC での利下げ織り込みが条件。Q. Fusaka 後の L2 ガス代は具体的にいくら下がる?
A. Blob 上限 24 個になれば送金は 0.01→0.006‑0.008 ドル、ミドルサイズ Swap は 0.15→0.09‑0.10 ドルが想定レンジ。■ニュース解説
7 月 10 日時点で暗号資産市場を動かすのは
①「規制確立」(米・香港・EU)、②「流動性主戦場の変化」(ETF/OTC シフト)、
③「ネットワーク・コスト再編」(Fusaka/PeerDAS)。
いずれもバラバラに見えるが、〈規制確立 → 透明性向上 → 機関マネー流入〉 という
一連の波及経路を共有している。投資家はこれを前提に「規制対応度」「資金調達コスト」「手数料構造」の 3 軸でプロジェクト評価を行うフェーズに入ったと言える。
(出典:Bloomberg,CoinDesk,FinTech Business Daily)