【4月8日】トランプ政権の「関税大棒」が世界を揺るがす:暗号資産市場で再び“ブラックマンデー”、主要プレイヤーが語る生存戦略

【要約】
・トランプ大統領による大規模関税政策が世界市場を再び混乱に陥れる
・ビットコインやイーサリアムを中心に仮想通貨価格が急落、“ブラックマンデーが再来
・ホワイトハウスは「90日関税停止」報道を一蹴し「フェイクニュース」と主張
・BNB Chainの開発動向に関しCZが語る:短期のMEMEコインブームより長期建設が重要
・スタンダード・チャータード銀行など一部専門家はビットコインを関税リスクの対抗手段として評価し、8.4万ドル回復を予想

トランプ政権の「関税大棒」がもたらした市場混乱

4月7日(現地時間)、アメリカ国家経済会議のハセット氏が「トランプ大統領が一部の国に対し90日間の関税を停止する可能性を検討している」と伝えられた一方、ホワイトハウスは同日深夜になって「この90日間関税停止説はフェイクニュースだ」と強く否定しました。実際、当日アメリカ株式市場は乱高下を繰り返し、最終的には大幅続落。原因はトランプ政権が掲げる大規模関税強化方針に対する警戒感が急速に高まったためです。

さらに、トランプ大統領本人はSNS上で「油価も金利も下がっている。(動きの遅い)FRBは利下げをするべきだ。インフレはないし、関税収入を得てアメリカは利益を上げている」と強気の姿勢を示しました。こうした言動が市場の混乱を深め、従来の金融市場のみならず、仮想通貨領域にも波紋を広げています。

仮想通貨市場の急落と“ブラックマンデー”

トランプ政権の関税発動を受け、世界の株式市場が大幅に下落するなか、ビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)をはじめとする暗号資産も激しい売り圧力にさらされました。ある取引日には、ビットコイン価格が7.7万ドルの水準を一時割り込み、ETHは1600ドルを下回る展開が生じています。

この影響から、主にロングポジション(買い持ち)を積み上げていた投資家が相次いで爆倉(清算)され、大手取引所のデリバティブ市場で約9.86億ドル相当のポジションが強制精算されたとの報道もありました。Coinglassによるデータでは、そのうち多単(買い)による爆倉が8.5億ドルと大半を占めています。

一部の巨大ホルダー(通称“巨鯨”)の担保資産も深刻な影響を受けました。WBTCやWETHを担保にしてステーブルコインを借り入れる手法を取っていた鯨たちが、相次いで清算ラインを割り込んだからです。大規模なレバレッジをかけていた投資家は、価格下落にともない追加担保を投入して耐えようと試みましたが、強制的にポジションを手放す例が後を絶ちません。

さらに、焦った鯨が大量のETHやBTCを市場に投げ売りする事態も報じられました。Lookonchainによれば、あるアドレスは数時間で1万4000枚を超えるETHを売却。大口売りが雪崩を打って増加し、結果的に下落を加速させた格好です。トレーダーの中には損失を最小化するため早期にポジションを整理した例もあり、「恐怖が恐怖を呼ぶ」負の連鎖が起こったと分析されています。

CZ炉辺対話:HODL戦略への疑問とBNB Chainの展望

こうした市場の急変動が続く中、BNB Chainコミュニティのイベントで行われたCZ(Binance創業者)との炉辺対話が注目を集めました。CZは「HODL(長期保有)」という従来の鉄則がこの局面でも通用するのかという問いに対し、「プロジェクトの基本面と持続的なコミュニティを伴う銘柄への長期投資は依然として有力な手段」と説明しています。もっとも、巷で流行中のMEMEコイン(いわゆる“土狗”系トークンなど)については、「短期的に高リスクの投機になりがちで、業界全体の健全性を損なう面もある」と述べ、短期狙いと長期建設のバランスを強調しました。

一方で、BNB Chain自体の現状にはやや課題感を表明。「本来はより多くのプロジェクトやブロックチェーン開発を呼び込みたいが、ここ1年ほどは対米対応などに時間を割かれ、支援が後手に回った」と正直に語っています。また、市場が激しく動くなかでも、BNBの価値を長期的に高めるには「ユースケースの拡大」が鍵だと再確認し、「DeFi、NFT、GameFiなど多様なプロジェクトへの支援を通じて、本物の利用者を増やしていきたい」と語りました。

スタンダード・チャータード銀行など専門家の見解:ビットコインは関税リスクのヘッジになるのか

市場全体が下落トレンドにあるにもかかわらず、一部アナリストからは「ビットコインが再評価される可能性がある」という見方も出ています。スタンダード・チャータード銀行デジタル資産研究部門の責任者であるGeoff Kendrick氏は、「関税戦争が激化すれば、法定通貨への信頼が揺らぐ可能性がある。長期的にはビットコインが対抗手段として見直されるだろう」とし、最近の急落にもかかわらず、BTC価格が再び8.4万ドルの水準へ回復するシナリオを指摘しました。

もっとも、現時点で市場を覆うマクロ経済リスクは大きく、トランプ政権の強気な関税政策がさらなる混乱を招くリスクは否定できません。高盛をはじめとする投資銀行も、米国経済が後退局面に入る場合のFRB利下げタイミングを織り込み始めており、先行きの不透明感を強めています。この「不安定性」こそが暗号資産に有利に働くともいわれますが、短期的なボラティリティが続くのはほぼ確実です。

ニュースの解説

今回の「関税大棒」による世界市場の混乱は、金融市場のみならず、仮想通貨というリスクアセットにも大きな影響を及ぼしました。特にロングポジションを積極的に展開していた投資家にとっては厳しい洗礼となり、強制清算が相次いだ点は、市場全体の過剰レバレッジ依存を浮き彫りにしています。一方、MEMEコインブームに沸くコミュニティは熱狂と同時に回転が速く、投資家の心理が振り回される構造が顕著です。

今後、関税政策や利下げ議論などマクロ要因がどのように推移するかによって、市場は急激に悲観へも楽観へも揺れ動く可能性があります。トランプ政権の姿勢は明確に保護主義色が強く、一方では「90日関税停止」をめぐる報道が混乱を生み、ホワイトハウスがフェイクニュースと否定するなど情報戦の様相すら呈しています。

それでも、短期トレンドに埋没せず、CZが強調するように「長期的な建設と基本面への着目」が引き続き重要であることは間違いありません。スタンダード・チャータード銀行が指摘するように、世界経済が混乱に陥るなか、ビットコインや主要暗号資産が改めて「リスクヘッジ」として認識される余地も否定できず、相場全体は引き続き大きなボラティリティを伴うとみられます。こうした不確実性こそが、暗号資産市場におけるリスクとリターンの源泉となっており、今後も投資家の慎重なリスク管理と冷静な情報収集が求められるでしょう。

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