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- 【2月24日】14億ドルのETH盗難で揺れるBybit――仮想通貨業界の未来はどうなる? イーサリアム“ロールバック”論争とトランプ経済学の余波
【2月24日】14億ドルのETH盗難で揺れるBybit――仮想通貨業界の未来はどうなる? イーサリアム“ロールバック”論争とトランプ経済学の余波
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【要約】
・Bybitで約14億ドル相当のETHが盗まれ、仮想通貨市場が一時的に混乱
・ハッキングの原因はUI欺瞞を狙った多重署名ウォレットの脆弱性と推定
・トランプ経済学による流動性拡大がリスク資産に注目を集めるも、市場は依然として不安定
・“イーサリアムをロールバック”すべきか否かで議論が浮上、コア開発者は困難さを指摘
・TetherのUSDT凍結や他取引所の連携など、業界全体でハッカー対策が進む
・Bybitは盗難資産の10%を報奨金とした協力呼びかけや、他取引所からETHの借り入れを実施
・NFTの取引額は復調傾向にあるが、全体的には投資家の“慎重姿勢”が続く
Bybitを揺るがした大型ハッキング事件
2025年2月21日夜、仮想通貨取引所Bybitが大規模なハッキング被害に遭い、約14.6億ドル相当(49万9,395ETH)の仮想通貨が盗まれました。複数のセキュリティ企業やチェーン上の分析によると、UI(ユーザーインターフェイス)を悪用した攻撃が根本原因とされ、BybitのETH多重署名コールドウォレットが不正に操作されたと見られています。発覚直後、市場にはFTX事件を連想させるような不安が広がり、一時はETH価格が8%の急落を記録し、約4億ドル相当のポジションが清算されるなど混乱が生じました。
14億ドル規模のETH流出とその対応
Bybitは盗難発覚後、公式アナウンスを迅速に行い、攻撃対象がETHウォレットのみであること、他の資産には影響がないと明言。さらに、顧客の出金要求に応じられる十分な準備資金を確保していると発表しました。BitgetやBinanceなど、複数の取引所から合わせて約40億ドル相当の資金支援も行われ、ETH価格は一日で急落を回復し、2700ドル台を再び上回っています。またBybitはハッカーへの対抗策として、盗難資産が回収された場合、その10%を報奨金として提供する「バウンティプログラム」を発表。チェーン分析やセキュリティ専門家の協力を積極的に呼びかけています。
UI欺瞞攻撃とスマートコントラクトの複雑性
今回の事件を通じて改めて浮き彫りになったのは、ETHのスマートコントラクトの複雑性です。多重署名は安全性を高める仕組みである一方、Safeなどの多重署名ウォレットは複雑な代理コールを介するため、ユーザーインターフェイスを巧妙にすり替えられると、大規模な資金が動かされる恐れがあります。ビットコイン(BTC)のUTXOモデルと異なり、高度な柔軟性を備えたイーサリアムや他のスマートコントラクトチェーンでは、攻撃面が拡大しがちです。今後は、生体認証やハードウェアウォレットによる物理的な署名確認など、さらなる安全策を導入する動きが加速する可能性があります。
イーサリアムのロールバックは可能か? コミュニティでの議論
Bybitのハッキングを受け、一部では「ブロックチェーンを盗難発生前まで巻き戻せないか」という議論も出ました。しかし、イーサリアムのコア開発者であるtimbeiko.eth氏は「現在のイーサリアムとオンチェーン・オフチェーンが連動する経済活動を考慮すると、ロールバックは非常に難しい」と説明。BybitのCEOベン・ゾー氏は「コミュニティ投票で決めるのも一つの方法」という趣旨の発言をしていますが、実際の実現性は低いのが現状です。
朝鮮系ハッカー集団の存在と対策
今回の攻撃は朝鮮系ハッカーグループが関与している可能性があると複数のセキュリティ企業が指摘しています。こうした集団は、以前から他の大手取引所やプロジェクトにも重大な被害をもたらしており、今回の盗難資産についても短期間でチェーンフリップ(Chainflip)やTHORChain、LiFi、eXchなどを使ったクロスチェーン洗浄が確認されています。Tetherは関連するUSDT約18.1万枚を凍結するなどの対処を行い、Bybit側は国際的な規制当局および仲介機関への協力依頼を継続中です。
取引所保険ビジネスへの期待
FTXの破綻や今回のBybitハッキングを経て、取引所同士の連携や保険ビジネスの強化を求める声が高まっています。大規模ハッキングが起こると、複数の取引所が流動性支援する一方で、今回のように“人的支援”に頼る面が依然として大きいのが実情です。今後、スマートコントラクト保険や包括的な取引所保険の普及が期待されるものの、導入には国際的なコンセンサスや仕組みづくりが不可欠です。
トランプ経済学がもたらす流動性拡大と仮想通貨相場
2025年のアメリカでは、トランプ政権2.0下での財政出動や税制改革、貿易保護主義などにより、国内経済を活性化する“トランプ経済学”が推進されています。しかし、軍事費やインフラ支出の増大で財政赤字が拡大し、政府一般口座(TGA)を通じた流動性注入が断続的に行われる状況です。これらの施策はリスク資産に資金を流入させる可能性がある一方、量的緩和(QE)とは異なる“一時的な資金注入”であるため、いずれ回収されれば流動性の縮小も起こり得ます。投資家たちは短期的な上昇トレンドに乗りつつも、高インフレや債務上限のリスクを注視しています。
NFT市場と投資家の動向
NFTセクターでは、直近7日間の取引額が約1億5290万ドルに達し、前週比約19.6%増というデータも報告されました。イーサリアムネットワークのNFT取引高は42.7%の伸びを示すなど、一定の回復基調が見られます。しかし、今回のBybitハッキングを受けて市場心理が揺れたことも事実で、投資家は引き続き慎重に動いている状況です。
資金フローと今後の注目点
一連のハッキングを通じて、Bybitは他取引所や個人投資家などから合計12万ETH近くの借り入れを行い、プラットフォームの安定を図っています。また、Bybitはユーザーの入出金が通常通りに稼働していると発表し、一部では「ブラックアウトを最小限に抑えることで信頼度を維持した」と評価されています。ただし盗まれたETHの多くが他チェーンへ逃げており、資金回収は現状不透明です。
さらに、SNS上では著名アーティストKanyeのXアカウント投稿権を2,000万ドルで販売したとの話題も浮上し、仮想通貨分野全般への関心を裏付けるような動きが散見されます。
業界全体が成長する中、ハッキングへの警戒やリスク管理はますます重要となっています。トランプ経済学の推進で短期的な流動性が市場に供給されても、長期的な金融政策や地政学的リスクを踏まえ、投資家は慎重な姿勢を崩していません。今後の市場は、セキュリティ強化策や保険商品、さらには国際的な協調による“ハッカー防火壁”の構築が焦点となるでしょう。