2月22日【51万ETH流出と19億ドルのSOL解放】Bybitハッキング×FTX破産清算で揺れる暗号資産市場

【要約】
・2025年2月21日前後、BybitのETHコールドウォレットがハッキング被害に遭い、約51万枚ETH相当(総額14億ドル超)が不正送金された
・FTXでは破産清算が進み、3月1日に解禁予定の約1120万枚SOL(推定19億ドル相当)の流通が、市場に与える影響が注目されている
・両事件ともに暗号資産界隈へのリスク拡大が懸念されているが、実際には限定的との見方もあり、市場参加者の間では冷静な分析が進んでいる

Bybit大規模ハッキング:ETHコールドウォレットの被害概要

暗号資産取引所Bybitが運用していたETHのコールドウォレットにおいて、未承認の不正取引が2025年2月21日に発生しました。チェーン上の分析によると、攻撃者は以下のトークンをまとめて送金しており、被害額は総計14億ドル(約51.4万枚ETH)を超えると推定されています。

  • 401,347枚ETH
  • 90,376枚stETH
  • 15,000枚cmETH
  • 8,000枚mETH

特筆すべきは、これら資金がハッキング時に分散されはじめ、その後さらに細かくアドレスが複数に振り分けられている点です。

Bybit公式の発表とセキュリティチームの対応

Bybitは、X(旧Twitter)上で「該当ETHコールドウォレットが多重署名(マルチシグ)から熱(ホット)ウォレットへ送金中、複雑な攻撃を受けた」と説明しています。具体的には、署名画面が偽装され、正規の送金先と見せかけつつ、実際にはコントラクトのロジックを改変する手口が用いられたとのことです。

  • 他のコールドウォレットは安全であること
  • 顧客資金には影響がなく、通常の入出金業務は継続していること

これらを強調し、Bybitの共同創業者Ben Zhou氏も「今回の攻撃は特定のETHコールドウォレットに限定され、他のウォレットには一切問題はない」と述べています。

ZachXBTとオンチェーン分析:ハッカー資金の行方

暗号資産の著名リサーチャーZachXBTは、攻撃者が盗んだETHを複数のEVM対応アドレスへ分散させたことを報告しました。当初の情報では、10,000枚ETHが39アドレスに送金されたとのことですが、さらにアップデートとして、49万枚におよぶETHが49のアドレスへ転送されたとも指摘されています。ZachXBTや他の分析者は、取引所や関連サービスに対し該当アドレスのブロックリスト対応を呼びかけています。

以下は一部の対象アドレス(例示)です。

コピーする0x40e98fEeebAd7DdB0f0534cCaa617427Ea10187E
0x30A822cDd2782D2b2A12A08526452E885978Fa1D
...(略)...
0xbCA02B395747d62626a65016f2E64A20Bd254A39

さらには15,000枚のcmETHが解質押し(アンステーキング)されている動きも確認されており、Bybitおよびブロックチェーン分析チームが対応を続けています。

FTX破産清算とSOL解放:市場への影響は限定的か

一方、破産手続き中のFTXは、2025年2月18日から初回の債権者への返済を開始しました。今回は小口債権者(5万ドル以下)の債権を年9%の利息で全額返済するとのことで、約8億ドルがすでに支払われたと報じられています。大口債権者への支払いは5月30日以降に予定されており、まだ50億ドル超の未払いが残っている状況です。

3月1日のSOL解放が呼ぶ懸念

FTX事件で特に注目を集めているのが、**3月1日に解放予定の1120万枚のSOLトークン(約19億ドル相当)**です。

  • 2022年末以降のSOLの大幅反発(最大28倍上昇)が背景にあり、FTXが大量に保有していたSOLが市場に出回ることへの警戒感が高まっています。
  • 実際にはこれらSOLの多くがOTC(店頭取引)などで売却済みとされ、解放後に即刻市場で放出されるわけではない可能性も指摘されています。

そのため「SOLの市場価格に大きな打撃を与えるかどうか」は意見が分かれており、一部では“過度な懸念”とする向きもあります。

FTXが保有していたその他のアセット

FTXはSolanaのほかにもSui、Aptos、AVAX、BTC、ETHなどのトークンを大量に保有していました。過去の開示情報によれば、**Aptos(APT)**の持分は一時500万枚に上ったという報道もありましたが、現時点ではFTXのチェーン上アドレスからAPTを確認できていないとの指摘があります。また、Sui関連企業Mysten Labsへの出資分は2024年に一部買い戻しが報じられ、市場圧力が軽減されたと考えられています。

一方で、FTTに関しては2.57億枚以上がFTXに残っているともされており、理論上は大幅な価格変動リスクをはらむ可能性があります。ただ、今回の第一回返済分は法定通貨ベースでの支払いであり、FTT保有者がどのような扱いを受けるのか未確定な部分もあるようです。

市場の捉え方:懸念はあるがパニックには至らず

Bybitハッキング事件は非常に大きな規模ではあるものの、同社は迅速に対策を講じており、顧客資金への影響がないことを強調しています。また、FTX破産によるSOLなどの解放リスクについても、すでにOTC販売や買い手が確定している分が多く、市場への直接的な売り圧力は限定的とみる向きが強いようです。

ハッキングの手口や破産清算のプロセスが複雑化するなか、取引所や利用者は引き続きウォレットの安全性や上場資産の動向に注意を払う必要があります。暗号資産業界は過去の事件を教訓に、セキュリティ面と透明性の向上に力を注いでおり、今後も迅速かつ正確な情報開示と調査の進展が期待されています。

関連記事

ページ上部へ戻る