
【要約】
・アルゼンチン大統領がツイートで紹介した「LIBRA」発行プロジェクトが、結果的にラグプル(詐欺的資金調達)の疑いを受け、大きな問題となっている
・KIP Protocolは開発主体ではないと主張し、関係者や資金の行方を明確化する調査が始まった
・ベアマーケット(熊市)下でも利益を狙う「エアドロップ・流動性農場」「高FDV新規トークンのショート」「資金費率を活用したデルタ中立戦略」が注目されている
・1月の新規トークン発行数が60万超、NFT市場でも取引額は減少する一方、買い手・売り手の参加数が増加するなど、暗号資産全体は依然として活発な動きを見せる
アルゼンチン大統領「LIBRA」騒動:何が起こったのか
2025年2月15日、アルゼンチンのハビエル・ミライ大統領(Javier Milei)が自身のSNSアカウントを通じて、KIP Protocolによる新たな加密通貨プロジェクト「LIBRA」を紹介しました。ところがその直後、LIBRAは価格急騰ののち暴落し、大口投資家が数時間で莫大な利益を上げた疑惑が浮上。**「ラグプル」**とも呼ばれる詐欺行為の可能性が指摘される事態に発展しました。
アルゼンチン大統領府の発表
アルゼンチン大統領府は、「大統領自身はLIBRAの開発に関与していない」との公式声明を公表。同時に、大統領は反腐敗局(OA)へ調査を要請し、大統領府内に暗号資産やマネーロンダリングなどに詳しい組織代表者による調査チーム(UTI)を設置したと明らかにしています。関係する企業・個人について、刑事責任を問う可能性を示唆している点が注目されています。
KIP Protocolの立場
KIP Protocolは、あくまで「アルゼンチンの民間企業支援を目的としたプロジェクトの技術インフラを提供する立場であり、LIBRAの発行・マーケットメイクは別のチームによって行われた」と主張。1月30日に大統領と面会したとされる人物についても、KIP Protocolの正式メンバーではないとしています。
さらに同プロトコルは「今回のLIBRA売買に伴うSOLやUSDCなどの資金は私たちの管理下にない」と強調。事件後にプロジェクトの認知度が急拡大し、多額の資金が動いたことで混乱が生じたものの、「ラグプルではない」という立場を繰り返しています。
巨額の利益と損失
今回の騒動では、過去にトランプ関連トークン(TRUMP)で130万ドルの利益を得たトレーダーが、LIBRAでも約672万ドルの利益をわずかな時間で上げたとの報告があります。一方で、大型投資家が短時間で200万ドル以上もの損失を被るなど、被害も深刻です。
大統領が支持姿勢を突然撤回したことで市場は混乱。LIBRAを信じて購入した投資家たちにとっては大きな痛手となりました。
ベアマーケット生存ガイド:3つの稼ぎ方
暗号資産全体が低迷している熊市(ベアマーケット)でも、**「トークン価格の上昇に依存しない」**収益機会を追求する人々が存在します。ここでは、その代表的な3つの手法を紹介します。
(1)エアドロップと流動性農場(Yield Farming)
DeFi(分散型金融)の流動性挙動においては、BTCやETHなどの主要資産を預けることで、**エアドロップ(Airdrop)**や流動性マイニングによるリワードを獲得できます。
たとえばPendle Protocolなどは、ステーブルコインに対して年利19%前後、BTCで12%前後の固定利回りを提供する事例も。さらに複数の流動性プールや戦略を組み合わせれば、ステーブルコインで50〜80%の年利を狙う上級者も存在します。
(2)高FDV(Fully Diluted Valuation)新規トークンの空売り
大手取引所に新規上場したトークンは、ローンチ直後に高騰しやすい一方、その後大きく値下がりするケースも多々あります。評価額の高さが本質的に裏付けされていないため、**「割高」**だと見なされた瞬間に急落するリスクが高いのです。
Hyperliquidなど、新規トークンの先物・永続契約を素早く上場するプラットフォームを活用し、**ショートポジション(空売り)**を取るのは熊市下でも有効な戦略の一つ。ただしボラティリティが非常に高いため、レバレッジは低めに抑えるなどリスク管理が不可欠です。
(3)資金費率(Funding Rate)を利用したデルタ中立戦略
永続先物には通常、ポジション維持コストを調整する「資金費率」が定期的に発生します。多頭(ロング)が優勢なら多頭が空頭(ショート)に支払い、その逆の場合は空頭が多頭に支払う仕組みです。
トレーダーは同額の現物買い(BTCなど)と先物ショートを同時に保有し、価格変動リスク(デルタ)をゼロに近づけた上で、資金費率を受け取る戦略を取ることができます。こうした**「市場中立戦略」**は、熊市でも安定的に利益を狙える方法として注目されています。
規制・マクロ要因と新規発行トークンの動向
規制当局のアクション
香港証券先物委員会(SFC)が、バーチャルアセット・トレーディングプラットフォーム(VATP)の新ライセンス発行を積極的に進めるなど、各国で暗号資産の規制動向が加速しています。阿根廷政府もLIBRA発行問題を巡り、大統領府が反腐敗局の介入を依頼するなど、新たな規制強化や調査が進む可能性があります。
新規トークンの急増
CoinGeckoの共同創業者Bobby Ong氏によれば、2025年1月に新たに発行されたトークンは約60万に上り、前年比・月平均比で大幅に増加。プロジェクト数が増える一方で、流動性や投資家の注目が分散する懸念も指摘されています。
NFT市場:取引額は減少も、参加者は急増
NFT市場の過去7日間取引額は約1億1,270万ドルと、前週比35%超の下落が見られました。一方で、買い手・売り手数はそれぞれ500%を超える伸びを示し、新規参入者が増えている可能性も指摘されています。
イーサリアム系NFTが大きく取引額を落とした一方で、Mythos ChainやPolygonなど別のチェーンでの取引増加も確認されており、市場の多様化が進んでいる様子がうかがえます。