
【要約】
・アメリカ政府における反暗号資産(仮想通貨)勢力の後退に伴い、主要金融当局は加密(暗号資産)規制の方針を大幅に見直し始めている。
・BinanceによるTest(TST)やCheems(1000CHEEMS)の上場発表、Arweave計算プラットフォーム「AO」のメインネット運用開始など、相次ぐプロジェクトの新展開が注目を集める。
・トランプ大統領がMemeコインを発行後、同ウォレットに700種類以上のトークンが送り込まれる事態が発生。
・香港の投資移民制度では、ビットコインやイーサリアムなどの暗号資産が資産証明として認められた事例が登場し話題となっている。
・大手規制機関やホワイトハウスの新布陣により、Operation Choke Point 2.0(いわゆる「仮想通貨業界の銀行口座封鎖」)は事実上の終息に向かうとの観測が強まっている。
政策・規制の大変動
1-1. 米国政府で進む「反暗号資産勢力」の一掃
トランプ政権下では、米国証券取引委員会(SEC)、連邦預金保険公社(FDIC)、商品先物取引委員会(CFTC)など主要金融規制当局の幹部が刷新され、反暗号資産的とみられる要人が相次ぎ退任している。
過去には「Operation Choke Point 2.0」と呼ばれる動きによって、暗号資産企業が銀行サービスを受けづらくなるケースが続発したが、最近ではこうした一連の「カバンごと締め出す」流れが大幅に見直されつつある。
SECでは、前委員長の辞任に伴い、暫定トップとしてマーク・ウイエダ(Mark Uyeda)氏が就任。さらに「暗号資産を一律で排除するのではなく、有用性や透明性を評価する」という姿勢を示し、規制手法としての『エンフォースメント(執行)頼み』を見直す意向が表明された。CFTCでも執行部門を再編し、複雑詐欺や不当行為に注力しつつ、暗号資産プロジェクトに対して必要以上に過度な措置を行わない方向へ転換している。
1-2. FDICの路線変更と銀行口座利用の回復
FDIC(連邦預金保険公社)は、米国内の銀行業務や顧客保護を司る要機関だが、これまで暗号資産に関連する金融サービスに対して消極的だった。近年は暗号資産企業が米国で銀行口座を開設できない状況が問題視されていたものの、FDIC代理トップらが「暗号資産企業の銀行口座開設や関連活動を必ずしも抑制しない」方針に転換し始めている。
議会の公聴会などでも「Operation Choke Point 2.0」の実在が認められ、FDICが暗号資産企業を一律に排除していた可能性について検証が進行中だ。連邦判事が公的書類の開示をFDICに求めるなど、今後は透明性確保に向けた取り組みが進み、米国内での暗号資産企業の銀行利用が回復するという期待が広がっている。
相次ぐ仮想通貨プロジェクトの最新動向
2-1. BinanceがTest(TST)とCheems(1000CHEEMS)を上場
Binanceは2月9日に、Test(TST)とCheems(1000CHEEMS)を新たに上場し、両トークンに対して「シードタグ」を付与した。Test(TST)は当初「テスト用トークン」として始まったものの、コミュニティの盛り上がりにより急速に注目度が拡大。Binance創業者のCZ氏は「TSTとの公式関係はなく、購入したことも保有してもいない」と度々SNSで強調しており、ロゴの無断使用や承認なき告知には懸念を表明している。
2-2. Arweaveの計算プラットフォーム「AO」メインネット始動
永久保存を標榜する分散型ストレージプロジェクトArweaveが、計算環境である「AO」のメインネットを正式に立ち上げた。テストネットでの約1年の検証を経てのリリースとなり、対応するネイティブトークン「AO」も流通が開始される。
AOは高並列処理が可能な分散型コンピューティングを提供し、AI関連アプリなど新たなDApps分野を取り込むとされる。総供給量2100万枚のトークン配布モデルや既存ARホルダーへの比率配分なども実施され、ユーザーや開発者コミュニティの注目が集まっている。
2-3. Berachainのエアドロップ第二弾
Berachain財団は、2月10日にエアドロップ第2弾を実施すると発表した。対象となるのはアプリ利用者やNFT保有者など特定条件を満たしたアドレスで、2月9日までにウォレット登録を完了しておく必要がある。受領者は割り当てられたトークンを主に今後の主網リリースに向けたコミュニティ活動や流動性提供に活用できる見込みだ。
2-4. DeepSeek急成長:7日で1億ユーザー増
AI領域における新興アプリ「DeepSeek」が記録的なスピードでユーザー数を伸ばしている。1月後半に公開されたR1モデルの影響で、1月後半だけで1.25億ユーザーを獲得。約80%が1月最終週に集中しているというデータも示されており、SNSやコミュニティの話題を席巻している。
トランプMemeコイン騒動と市場インパクト
3-1. トランプウォレットに700種類超のトークンが集まる
トランプ前大統領が公式にMemeコインをローンチしてから3週間あまりで、なんと700種類以上の山寨系トークンやスパムコインが同ウォレットへ送り込まれたことが報道された。名称に「OFFICIAL TRUMP」や「ELON」などを冠したものが相次いで作成されているが、その多くは非公認の模造コインだとみられる。
専門家からは「トランプがMeme分野に参入したことで、大量の投機や詐欺を呼び込みかねない」との指摘が出ており、一般投資家への注意喚起が強まっている。
3-2. Memeコイン人気と規制のはざま
一方で、BinanceやBitgetなど複数の取引所がMemeコイン上場を加速させ、市場的には根強い人気を誇る。米国の金融規制が転換期を迎えるなか、こうしたMemeコインへの投機熱が今後さらに加速する可能性も指摘されている。
香港の投資移民で暗号資産が資産証明に認定
4-1. ビットコイン・イーサリアムを含む申請が続々
香港投資移民制度の申請において、ビットコインやイーサリアムなどの暗号資産を「資産として証明」する事例が相次いで認められている。2024年10月にはビットコインを活用したケースが報道され、2025年2月にはイーサリアムで約3,000万香港ドル相当の保有を証明した申請者が認可を得た。
香港当局はこれまで暗号資産に対する明確な運用指針を示していなかったが、投資移民手続きで暗号資産を組み込む動きが本格化している。今後、申請者は半年以内に香港へ資金を移し、指定株式や債券といった原則的な投資対象に振り向ける流れとなる。
4-2. 資金源や証明の課題
一方で、申請過程では資金源の正当性を示す書類(SOF: Source of Funds)といった監査が厳格に行われる。暗号資産の取得履歴が不透明だったり、取引所の破綻によって過去データが消失しているなどのケースもあり、会計士や当局が入念に確認する必要性が高まっている。
マクロ経済と今後の注視ポイント
5-1. トランプの通商方針と米国金融政策
トランプは関税政策をめぐり強硬策を打ち出しており、市場のリスクオン/オフを左右する要因となっている。また、近づく米国のインフレ率や消費者物価指数(CPI)発表、FOMC関係者の発言なども金融政策の見通しに影響を与える。
2月下旬に予定されるインフレ指標やFOMC関連証言が予想を上回る結果となれば、利下げのタイミングが後ろ倒しになる可能性もある。暗号資産市場も世界株式市場同様、こうしたマクロ指標の動向に敏感に反応するとみられる。
5-2. 米国議会での暗号資産立法進展
ホワイトハウスの新しい「暗号資産・AI担当」責任者であるデイビッド・サックス(David Sacks)氏が、議会と連携して暗号資産の法整備を急ぐと明言。特に米国版MiCAとも呼べる包括的な規制フレームワークや、ステーブルコインの扱いを明確化する法案が100日以内にまとめられる見通しだという。
こうした方針が具体化すれば、安定したルールに基づく暗号資産ビジネスの展開が可能となり、アメリカにおける新たな市場拡大につながる期待感が高まっている。
取引データと市場トレンド
6-1. NFT取引額がやや減速
CryptoSlamの集計によれば、NFT市場全体の直近7日間の取引額は約1.195億ドルで、前週比33%減少。イーサリアムチェーンが依然として最大シェアだが、トランザクション数や買い手数は伸び悩んでいる。
6-2. イーサリアム基金の動向
イーサリアム基金は約5万ETHをDeFi運用用のマルチシグウォレットへ移動。1.3億ドル相当となり、今後の活用方法が市場で話題となっている。
6-3. Whaleの大量売却とTST投機
一部のイーサリアム大口保有者が以前に購入したETHを大規模に売却する動きも見られる。さらにTST(Test)トークンに対し、大口トレーダーが短期売買で高額の利益を上げたとのチェーン分析も報じられ、ハイリスク投機への注目が継続している。