【要約】
米国大統領ドナルド・トランプ氏によるカナダ、メキシコ、中国への長期的な関税強化が加密(暗号資産)市場に波及し、ビットコインをはじめとする主要仮想通貨が急落しました。過去24時間で700,000人以上がポジションを清算し、その規模は2020年3月12日に起きた“312”暴落を超えるとも報じられています。さらに、トランプ氏とメキシコ政府の間では一時的に関税を延期する合意がなされるなど、状況はなお流動的です。一方、David Sacks氏の「AI・暗号資産ツァーリ」就任や、「Hyperliquid」が実施した史上屈指の成功を収めたエアドロップ(エアドロップ)に関する話題、そしてトランプ陣営が発行した「TRUMPコイン」から得られたとされる多額の利益が注目を集めています。以下では、これらの動きを詳しく解説します。
米国メディアのCNBCなど複数の報道によると、トランプ氏はカナダ、メキシコ、中国からの輸入品に対してそれぞれ25%、10%などの高関税を課す大統領令に署名し、即日発効を宣言しました。これを受け、投資家はリスク回避に動き、ビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)など主力暗号資産の相場が急落。
こうした激しい価格変動の背景には、関税政策による米国株式市場の下落も影響しています。トランプ政権発足以来、仮想通貨と株式市場は比較的連動性を見せる場面が増えており、株式先物が急落するタイミングで暗号資産も値崩れしやすいという指摘があります。
暗号資産の証拠金取引では、大きな値動きが生じるとロスカット(強制清算)が多発します。今回の急落では、Coinglassの統計によると24時間の全体清算総額が21.19億ドル(約2.12億ドルの表記ゆれもあり)を超え、多数の投資家が「清算」に遭いました。
なお、“312”の際は24時間で10万人超が清算されたとの記録が残り、最大単一清算額はHuobi上の5832万ドル相当(BTC)のポジションでした。今回の清算はその人数・金額を上回っており、短時間に大規模清算が発生した点が際立ちます。
Bitwiseのアルファ戦略責任者Jeff Park氏は、今回の関税強化が長期的にはビットコインにとって「驚くほど有利」に働く可能性があると述べています。その論拠として、以下の2点が挙げられます。
結果として、米ドル安・低金利への動きが加速すれば、リスクヘッジの手段としてビットコインへの資金流入が期待できる、というのがPark氏の主張です。
トランプ政権下では、人工知能(AI)と暗号資産分野を統括する「AIと暗号資産の“ツァーリ”」としてDavid Sacks氏が任命されました。現地時間2月4日午後2時30分(米東部時間)から記者会見を行い、米国政府がデジタル資産分野で主導的地位を目指すための具体的計画を発表すると報じられています。
去中心化されたデリバティブ取引プラットフォーム「Hyperliquid」は、資金調達を受けず独自に成長を遂げ、さらに“史上最も成功したエアドロップ”と評価されるポイントシステムを展開しました。
このモデルが高く評価される理由は、ユーザーの忠誠度を高めながら実需に基づく流動性を確保したことです。エアドロップに参加したユーザーがプロダクトに深く関与することで、短期的な投機目的ではなく、長期的なプロジェクト成長につながる効果を示しています。
CoinbaseのディレクターであるConor Grogan氏によれば、1月18日に始動した「TRUMPコイン」を通じて、トランプ陣営がすでに8億ドル以上を得た可能性があるとされています。
高額な収益が事実であれば、政治的にも大きな波紋を呼ぶ可能性があり、今後の動向に注目が集まっています。
トランプ大統領は、メキシコのシンバウム大統領との間で関税を一時的に1か月間停止することで合意したと発表しました。一方で、メキシコ側は「恒久的な停止」を提案しているものの、現時点ではあくまでも「1か月の延期」のみ。今後は米国務長官のルビオ氏、財務長官のベセンテ氏、商務長官のルトニック氏などがメキシコ政府と協議を進めるとされ、引き続き注意が必要です。
現在の加密市場は、米国発の貿易政策や政治リスクに左右されやすい局面です。トランプ関税が本格化するのか、それとも一時停止や多国間合意を通じて軟着陸を図るのかで、暗号資産のボラティリティは大きく変動する可能性があります。また、AIおよび暗号資産戦略を統括するDavid Sacks氏の記者会見は、業界における規制や政府主導のイノベーション推進を左右する重要な機会とみられています。
企業や個人投資家は、リスク管理を徹底しながら、中長期的にはドル安・金利低下を背景としたビットコインなどの優位性も考慮する必要があるでしょう。特に、Hyperliquidのように実需に基づくプラットフォームが着実にユーザーを増やしている事例は、技術とコミュニティが成長する本来の暗号資産市場の姿を示しているとも言えます。各国の政策や大口投資家の動向を注視しながら、市場の変化に備えることが求められるでしょう。